姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉

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 隔週の無料診療の日がやってきた。
 以前からの約束通りに、ソフィアはイーサンと共に教会に足を運んだ。

「あ、奥さまこんにちは!」
「ねえねえ、今日は一緒に遊べるかな?」

 教会にやってきたソフィアとイーサンの元に、子供たちが駆け寄ってくる。
  
「はいはい。まずは先生に健康診断をしてもらってきてね」

 この教会には孤児院が併設されている。この子供らはそこで暮らす者たちだ。
 子供たちは、ソフィアと一緒にやってきたイーサンを物珍しそうにじろじろと見ている。イーサンは子供の迫力に驚いているのか、ぎこちなく微笑みながら立ち竦んでいる。

「おいこら検体ども! まずは先に診察を受けてから騒ぎやがれ」

 子供たちがうるさくしていたので、エイナルが診察室から顔を出した。
 ソフィアはエイナルの物言いにぎょっとして慌てて注意をする。

「ちょっとエイナルってば! 子供たちのことをそんな風に言わないの」

「臨床試験に必要な血液やらなにやら提供してくれる大切なお子さまですよね。わかってますって」

「言い方! 間違っていないけど言い方をもう少し考えてよ。変な人体実験をしているみたいじゃないの」

 エイナルは大真面目に言っているので、ソフィアは頭を抱える。変な噂が流れてはたまらないと、ソフィアは子供たちに臨床試験が何であるかを語って聞かせた。

「エイナル殿はすばらしい方だが、少し目標に対して積極的すぎるところがある方だな」

「そんなに言葉を飾らなくていいわ。たまに倫理的にまずいことをしそうになるから怖いのよ、この人は」

「酷いっすねえ。俺は知識の探求に貪欲なだけですよ」

「へえ、じゃあ今後ここであなたが何か問題を起こしたとしても、私は火消しをしなくてもいいわけね?」

「それはそれでお願いしますよ。だって、俺が問題を起こしたってなったら困るのは奥さまでしょう?」

 けらけら笑っているエイナルを、イーサンが顔を引きつらせながら見ていた。

「ところで、今日はご夫婦お揃いでどうなさったのです?」

「診療の様子をイーサン様にお見せしたいの。構わないかしら?」

「ああ、それならお好きにどうぞ。もしカウンセリングなら、今後は料金を取りますからねえ」

 そう言ってエイナルはひらひらと手を振りながら、診察室の中に子供たちを連れて戻っていった。

「………………エイナル殿は自由な方だな」

「そういうところが良いところではあると思うけれどね。お兄さまはちょっと素直すぎるのよ」

 それから、ソフィアは診察の様子や教会に新設された施設をイーサンに説明して回った。




「ソフィア、君はいつの間に領民たちからあんなに親しまれるようになったのだ?」

 一通り説明を終えたソフィアは、休憩のために教会にある応接室にイーサンを案内した。
 彼は応接室に入るなり窓際に近付くと、そこから外を眺めながら質問をしてきた。
 
「親しみですか? まあそんな、領民の皆さんには声をかけられたらお話するぐらいで、特別なことは何も……」

「私は子供たちに遊ぼうと声をかけられたことなんてないぞ」

 イーサンは、診察を終えて教会の中庭で遊んでいる子供たちを窓越しに眺めている。

「以前にここへやってきたときにも思ったが、君はすぐ人に囲まれるな。私はここで暮らして長いが、とても君のようにはいかないな」

 そう言われて、ソフィアは施設を案内している間に出会う者に、声をかけられては話し込んでいたなと思った。ソフィアにとっては特別なことでないが、イーサンにすると難しいことのようだ。

「領主さまなのですから威厳も必要です。あまり気安く声をかけられるということが良いとは限りませんわ」

「君は、私には自分を信じなくてもいいと言った。だが、民は君のことを随分と信頼しているように見える」

 イーサンがソフィアを振り返り、真剣な目で見つめてきた。

「やはり私はそういう関係が良いなと思う。ソフィア、私は君のことを信じたい」
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