姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉

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「信じていたいし、信じてもらいたいと思う!」

 イーサンがカツカツと靴音を鳴らし、勢いよくソフィアに近付いてきた。彼はソフィアの両肩に手を置いて力強く言い切る。その迫力に圧倒されて、ソフィアは目を丸くしてしまう。

「信じられる自分でありたいし、信じてもらえる自分でいたいのだ」

 そこまで話すと、イーサンは途端に不安そうな顔になる。目を泳がせてそわそわしはじめた。彼はどうやら、ソフィアの反応を待っているらしい。

「………………わ、私の言いたいことは、うまく伝わっているだろうか?」

「――っもう! こういうところですぐに自信をなくされる方だから、いまいち信頼に値しないのですけれど」

 ソフィアはイーサンのおでこを指ではじいた。
 こんなに情けなくても、自分の考えを伝えてくるようになっただけまだマシだ。意見を伝える前に勝手に諦めて落ち込まれるよりもいい。
 ソフィアは文句を言いたくなる気持ちをぐっとこらえて、イーサンの頬を両手で優しく包み込んだ。

「言わんとしていることはちゃんと伝わってきましたわ。ですから、しゃんとなさってくださいませ。最近のイーサン様はとてもよくやっておられると私は思いますわよ」

 ソフィアがそう言うと、イーサンは安堵した顔をして手を離した。おでこをさすりながら、照れ臭そうに笑っている。その態度にイラッとしたソフィアは意地悪く笑った。

「とはいえ、信頼を得たいとおっしゃるなら精進してくださいませね。私のあなたに対する信用はマイナスなのですから」

 ソフィアの言葉にイーサンの顔色が再び曇る。

「そ、そうか。裏切られたと思われないよう努力しよう」

「そうなさるのがよろしいかと思いますわ。私も信頼に値する働きができるよう頑張りますから」

「…………いや、君はもう少し力を抜いた方が良いと思う。今日の振る舞いを見ているだけでも疲れたぞ」

「まあ、私に何か問題がございましたか?」

 ソフィアは優しく包み込んでいた手に力を入れて、イーサンの頬をぎゅっと挟み込んだ。

「……あ、あんな風に一人一人に時間をかけて対応せずともいいじゃないか。いや、別に話すことがいけないとは思わないのだが、あれじゃ君の身体の方が心配になる」

 もっと他にやりようがあるのではないか、とイーサンはぶつぶつと独り言のように話を続ける。

「まあまあ、ご心配いただきありがとうございます。ですが、仏頂面で立っているだけの方よりはマシだと思いますけれどね」

 ダラダラと話が続きそうなので、ソフィアはイーサンの頬を摘みあげて話を打ち切らせた。すると、彼は痛みに顔を歪ませながらも、なぜか声を上げて笑いだした。

「あははは! うん、君は力が入りすぎているから、私に対する態度くらいリラックスしても良いと思うぞ」

「………………………………はあ? あんまりふざけたことを言っているとぶっ飛ばしますわよ」

 ソフィアがイーサンの言葉に青筋を立てて睨みつけると、彼は笑顔をしまって言い訳を始めた。

「……いや、あのな。ほら、頑張ってくれているのはわかるのだが、やはりどうしても心配になるというか……。もっと気楽にしてほしくて言った冗談というか……」

「もう結構ですわ! 休憩は必要ございませんわね。次は私が診察の手伝いをしているところをお見せいたします」

 さあ行きましょう、とソフィアはイーサンから手を離して応接室の扉を開けた。彼は前のめりになりながら慌てて部屋を飛びだして行く。
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