女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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知らない女

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 この日の夜も特に問題は起きなかったようで、明けて翌日。家に戻りたいと言うサミイと、一緒に居たいカラクレナイ、そして依頼料を受け取りに行く俺が出勤のカロと護衛と馭者を務めるアルネスと共に家を出た。ホルスト車を使うのは今日迄だろう。何か可愛く思えて来ただけに少し寂しい。
ホルスト車の後ろを付いて行く。街は居残りの荒くれ者が居るもののとても静かだ。

「店閉まってて露店も無いのに、彼奴等何食ってんだろうな」

「携帯食料じゃない?」

「外で狩りでもしてるのでは?」

狩りをさせてるのは《感知》で見てたけど、殆ど元戦闘奴隷に配ってたみたいなんだよな。荒くれ者とは謎に包まれた生態をしている生き物である。
ギルドに入ると久しぶりにすげー見られる。以前トカゲの皮を持って来た時くらいだろうか。俺の後ろではカラクレナイを装備したサミイがしがみついて怯えてる。
安心しろ、お前がこの場で一番強いから。

見て来るのは居座り組の荒くれ冒険者達だ。カラクレナイを見たら先日のあれを連想しない訳が無いよな。親戚だもの当たり前だが似てるからなぁ、赤いけど。

カロの指示を受けた受付嬢に依頼料を受け取り、俺とリュネのギルド証を更新してもらった。予定通りEランクに上がっちゃったぜ。
因みに、リュネが来なかったのは寝惚けてグズってたからだ。きっと慣れない仕事で疲れたのだろう。カラクレナイがグアグア言っても起きなかったので本物だ。多分。

ギルドでの用が済んだらシトンとアズは慣れた手付きで依頼を剥がしてささっと受付を済ませたらギルドを出て行った。俺とサミイとカラクレナイは寝具店に移動する。

「パパ達が襲われたりしてないか、ちょっと心配だったんです」

「良い時に来られて良かったよ」

裏口に入ってただいまーっとサミイが声を掛けるとママ上殿が出迎えてくれた。

「おかえりなさいカケル様、カララちゃん。サミイも」

「ママー」「クァアー」

俺も飛び付いてママみを味わいたい!が、俺は我慢の出来る子、飛び付かない。体を動けなくされて飛び付けないからでは決して無い。

「カラクレナイー、リュネが動きを封じる助けてー」

「ギュェーギャーイ」

リュネの霊圧が、消えた。よしよし。でも飛び付いたりはしないぞ?

「奥様、此方の方々は?」

ママ上殿の後ろから、知らない女が現れた。聞くと、昨日から住み込みで働く事になった元戦闘奴隷だそうで、名前はエージャだそうだ。くすんだ金髪に慎ましいお胸で男の子に見えなくも無いが、線の柔らかさは女のそれだ。結構細いのに戦闘奴隷だったのは驚きだが、身のこなしに隙は無い。結構やるようだな。
ママ上殿を介して紹介されて、客間でお茶を頂きます。サミイ達は自室で着替えをしてる筈。《洗浄》してるとは言え同じ服を着続けるのは嫌みたい。俺を含めて島の住民は着たきり雀だな。洗い替えを用意したらきっと喜ぶな。

「あの」

物思いに耽っていると、お茶を持ってエージャが入って来た。ノックはした方が良いぞ?
置かれたお茶を一啜り。

「ありがとう。それで?」

「貴方は冒険者ですか?」

「冒険者に見えないか?」

「店で働かないのですか?」

「それは今直ぐ店を手伝えと言う意味か?それとも冒険者を辞めて此処でサミイと住んで働けと言う意味か?」

「両方です」

「今直ぐ手伝うのは構わんが、外貨を稼ぐ方が金になるし、外に家を作ってしまったからな。それに、家に帰らないと皆が寂しがる」

「領地持ちの貴族様でしたか」

「唯の冒険者だよ」

「唯の冒険者が騎龍の雛を従えているのは無理があると思いますが?」

「冒険者やってりゃそう言う事の一つや二つあるさ」

「はぁ。無いとは言い切れませんね。言い切れはしませんが…」

「羨ましいだろー」

「私の人生よりは、ずっと」

お茶のお供に愚痴くらい聞いてやろう。
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