女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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帰れ

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「カケルよ、そろそろ体が鈍って来た頃だろう?」

朝食を食べ終わり、ミーネが死の宣告をして来た。食堂の端に居る少年隊も身を凍り付かせる。

「昨日やっと一息付いた所だよ」

「人は呆気なく死ぬからなぁ、可愛い子供達が大人になってそんな目に遭ったら…」

嫌な煽りだ。大人になった子供達が龍に追い掛け回される事なんて無いだろうが、出来ればベッドの上で安らかに逝って欲しい。

「分かったよ!死なない為に死に掛ければ良いんだろ!?」

「良い心掛けだ。聞いたな?人の子」

「カケル様、俺…やるよ!」「生き残る!」「俺も!」

今日は一日、島を走り回る事が決まってしまった。島の地形は前回迄の訓練で殆ど頭に入っているが、だからと言って逃げ回るのが楽になる訳では決して無い。俺が不在の間の訓練で子供等に体力が付いて早くなったのは良いが、そのせいで併走するのがやっとなのだ。成長を喜ぶ暇も無い。
兎と言っても流石は獣人、人より体力の上昇は早いと見えて、野生の勘で背後から飛んで来る石ころを避けながら出来るだけ楽なルートを突き進む。俺?被弾三十を超えてから数えて無いよ。ルート考えるので必死だもん。
島の端から端まで二往復と半分程パルクールした所で天使が飛んで来た。

「旦那さま~、皆様~、昼食の用意が出来ましたよ~」

カラクレナイに乗ったサミイが昼飯を告げるのを全力疾走で確認する。

「ミーネ!昼飯食わせてくれなきゃ口聞いてやらん!」

もうナメクジっぽいのを生食いするのは嫌だ。噛んでも千切れないから飲むしかない上に胃の中で蠢いて腹を壊す。回復されなければ死んでしまうかも知れない。

「食べなくても問題無さそうな口振りだな、旦那様」

「ミーネさま、旦那さまは本当に口聞いてくれなくなるのでお昼にしましょ?」

「ゴアン、クー」

「サミイよ、人の身で意見するか」

「旦那さまは意外と頑固者ですよ?」

「キャイーゴアーン」

「そうですね、行きましょう。では早目に戻って来て下さいね」

「…チッ!だそうだ、食事にするぞ!」

翼を翻す娘達に不機嫌そうな舌打ちを打つのを聞くと俺も不機嫌になる。

「気に入らんな。お前等は先に行けー」

我先に帰る子供達を見送り、ミーネを睨め付ける。

「嫁に敵意を向けたな?」

「お前以外が背に乗るのを見たくない」

「俺が乗るにはまだ小さいだろ。それに、呼びに来ただけの者に対する対応じゃないのは解ってる筈だ。サミイに詫びて来い」

「……」

そっぽを向いて否定の意。言い争っても殴り合っても、これは相容れないだろう。

「帰れ」

これ以上無駄な時間を使いたく無い。腹減ったので飛んで帰った。
《洗浄》して体を清めたら、溢れる魔力と怒りを鎮め、無言のまま飯を食う。

「カケル、どした?」

「…ミーネと喧嘩した」

「旦那さま、わたしのために喧嘩しないで下さい」

「サミイは大人だな。俺には耐えられないよ」

「カケーアキャァギョエーエー」

「カラクレナイ、皆、ごめんな。これ食ったらちょっと出掛けて来る。リュネよ、皆の事宜しくしてもらって良いか?」

「ふぅ、仕方ありませんね。これが惚れた弱み、と言うヤツでしょうか。帰って来たら孕ませて下さいね?」

「カケル、未亡人は嫌。ごぶじで」

「リュネさまの次はわたしですからね?ごぶじで」

「カケル様、待つのは女の務めと言います。ですが、待ち過ぎると泣いてしまいますからね?ご無事のお帰りをお待ち申して居ります」

その後は再び無言で飯を食い、素早く身支度を整えて、要らない物は倉庫に仕舞い、見送りも無いまま空に上がる。ふぅーっと一息、何処に向かう宛も無く、適当に真っ直ぐ加速した。



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