女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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猟師宿

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 かなりゆっくり目の朝食を摂り、街を見ながらギルドへ向かう。キュルケスは初めて来たそうで、すっかりお上りさんになっていた。

「俺も装備品や道具屋くらいしか知らないけどな」

「オレも似たようなもんだぜ?」

「カケルさん、もう少し街を見て回らない?私、今更お使いや清掃の依頼は出来無いし、掘り出し物とかあるかも?」

「そうやって荷物が増えてったんだな。けどまあオレも賛成だ。明暗知ってて損は無いよ」

そんな訳で、昼飯の時間迄見て回ろうと言う事になった。大通りを練り歩き、ギルドが目と鼻の先と言う所で北に一本入って裏通りに至る。この街の道は基本、碁盤状では無く煉瓦状に区分けされている。なので街の中心で交差する二本の大通り以外は殆ど丁字路だらけだ。

「北通りの西は偉い人用だから入っちゃダメなんだぜ?」

ワーリンは経験者か?南北を貫く大通りの北側、北通りの西側には通り毎に衛視が立って居て、俺達のような不埒者が不審な行動をするのを今か今かと待ち構えて居る。ハーク坊っちゃまの家もあの中で、あの区域だけは碁盤状の街作りが成されているのだが、ハーク邸で道案内をすると言って来たのは衛視からの職質を回避する為でもあったのだ。俺は《阻害》を掛けてスルーしたよ。

北東方面を何度か行ったり来たりして、ちょっとお高そうな住宅街に来てしまった。家の周りに木が植わってるのが見える。冒険者が彷徨く所じゃなさそうだし、こっちはここ迄だな。

「今日はもう飯食ってギルド行こうぜ?宿探すんだろ?」

ワーリンの一声で方向転換、向かうは飯屋だ。街を彷徨ったおかげで良い匂いのする飯屋を探し出せたのは僥倖だった。座って食う店なのでソーサーも出たし焼肉もある。香草を刻んだソースが謎肉の脂っこさを緩和して食べ易くされていた。

 で、いざギルド。昼過ぎともなるとギルドには疎らにしか冒険者は居らず、快適快適。暇を持て余し気味の受付嬢に良さ気な宿を聞いていると、買取の猫ちゃんが寄って来た。

「あにょ、お客さん、きにょうはごめんにゃ…」

「そうか」

「それでにぇ、お客さんにお願いがあるにょ。宿を戻して欲しいにょ。ドアが開かにゃくて、人にょ居た部屋はドアを壊して出入りしにゃきゃいけにゃかったし、新しいお客さんを迎えられにゃいにゃ…」

「お前さん、許してやんなよ。今夜は一杯甘えて良いから、ね?」

背後から抱かれて後頭部がぱふぱふ。メット取りたい。

「分かったよ。……元に戻したぞ」

「ほっ、ほんとかにゃ!見てくるにぇ!」

血相変えて出て行ってしまった。まだ仕事中だろうに…。
受付嬢に飯と治安が良い宿を紹介してもらい、ギルドを後にした。

 壁を東に見て、北に三本入った角の宿『猟師宿樵』は看板に鹿っぽい奴の髑髏が掲げられた何とも荒々しい宿であったが、中に入ると白壁に黒光りする柱が良く手入れされている事を表し、それだけで部屋の良さを連想させた。
恰幅の良い女将が優しく対応してくれるのも好印象。だが、一部屋三名様で無く、一名様三部屋です。
並びの部屋が空いていたのは運が良い。四階なのは運が悪い。人生山あり谷ありである。

「上からガチャガチャ降りて来るのを聞いて起きるのに比べたらこのくらい!」

自分を鼓舞して階段を登るキュルケスは途中からワーリンに捕まってた。飛ぶ魔法覚えないと寝る事もままならんな。階段側からキュルケス、俺、オレの順で部屋が決まり、期待通りの室内にほうっと息を吐いた。

「カケルさん、荷物頂いて良いかしら?」

「お前さん、本当に家好きだね…」

「壁を白く保つのも、柱を黒光りさせるのも大変なんだぞ?」

キュルケスの部屋に行李を並べ、その上に鞄を置いて自室に籠る。ワーリンよ、ちゅぱちゅぱ始めてないでお前もお部屋にお帰り?荷物は無い?そうですか。ゆっくりお楽しみ下さい。

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