女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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苦しんで死ね

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 スキルを乗せた超高速のビンタは如何に素早い猫系獣人であっても反応する事も能わず、棒立ちの状態で空中を回転して床に落ちた。

「お、お客さん、困ります!」

「すまんね兎さん。仲間に対して飼ってるような言い方をされては我慢ならなかったよ」

手の骨が砕けた右腕を慎重に回復しながらンナージャを《威圧》する。目を剥き、涎やら小便やらを垂れ流して藻掻き苦しむ猫ちゃん。あがあが言ってるが聞き取れんな。

「謝罪の言葉は要らない。苦しんで死ね」

「お前さん、オレは怒って無いから!そんな奴殺すこたぁ無いよ?ね?」

「お客さん!後生です!止めて下さい!ンナージャが死んじゃう!!」

キュルケスとワーリンに抱き着かれ、仕方無く《威圧》を解いてやった。

「カケルさんの魔力、とんでも無いわね…。見える人なら駆け付けるより逃げ出すわよ…」

「ふぅ…。酷い宿を薦められたもんだ。とにかく温かいってのに釣られた俺達も馬鹿だったがな」

  「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
倒れたままの姿でうわ言を呟く猫ちゃんに念を押す。

「人種お断りなら宿の前にデカデカと書いておくんだな」

  「ごめんなさいもうしませんからたすけてくださいおねがいします…」
「私からもお願いします。お許し下さい、お願いします。好きなだけお泊まりになっても良いですから」

「こんな宿泊まるかよ!」

吐き捨てて外に出ると、ワーリンとキュルケスが着いて来たのを確認して、《伸縮》と《集結》を使い宿を圧着させた。もう窓もドアも開かない。出たければ壊せ。

「お前さん…」

「不快な思いをさせたな、ごめん」

「差別なんて何処にでもあるもの、気にしちゃだめよ。もっと良い宿を探しましょ?」

「そうだな。今日は諦めて俺の泊まってた宿に行こう」

「初めからそこに行けば良かったんじゃないか?」

「安くは無いし、貴族の息が掛かってるから出来れば他の宿に泊めてやりたかったんだ」

「もしかして、ハーク様の事?子供だから話が出て来ないだけかも知れないけど、悪い話は聞かないわよ?アルア様も良い子だったし」

「凄く良い子だよ。けど、良い子の近くに居るのが良い大人ばかりでは無いからな」

「それ凄くわかる」

話をしながら大通りを進み、最初に泊まった宿に着いた。前と同じ部屋だがベッドが広いので三人でも問題無かろう。

「キレイ!広い!臭くない!」

「外から見て高そうなのは予想してたけど、納得の部屋ね」

「王都の冒険者なら一度は泊まりたい宿だからな!」

明日は定宿探しをして、生活道具を買い揃える事になり、夕飯までキュルケスの荷物を纏める作業に費やした。
八十×八十×五十高さドンの持てるサイズの箱にしたら四つも作る羽目になってしまった。細く切った雑木紙を紐代わりにして縛り、天秤棒を作って端々に二つずつ縦にして付けてやったが、キュルケスでは高過ぎて担げない。

「纏まって良かったけど、多いね。オレが担いでも底を擦っちまうよ」

「お手数お掛けします…」

結果、定宿が決まる迄の間、俺の《収納》に保管される事となった。

 片付けに集中したおかげで少し遅れての夕飯となり、部屋に戻ると橇風呂に湯を張って軽く汗を流した。お湯が溢れても平気なように下に皿状にした煉瓦を敷くのも忘れない。煉瓦を敷いた時床がギシッとしたので用心の為に浮かせてある。お湯だけで二トンはあるからな。

「ねえカケルさん。王都と言ったらダンジョンだけど、皆もダンジョンには行くの?」

「あ~、オレもこの人も、行きたいけどランク足りないんだ」

「行きたいんだがなー」

「んー?そんなに高ランク推奨だったかしら」

「オレEランク」

「俺もEランク」

「Eって…。その力で何でまだEなのよ…」

「オレ、冒険者なりたてだし」

「俺、持込みだけで食えてたし」

Cランクのキュルケスを先輩と呼んだら怒られた。
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