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貴族は派手な魔法を好む
しおりを挟む馭者とメイドが起き出して、交代と食事の支度が始まる。馭者はゾーイの世話もあるようだ。少し仮眠した後、交代で朝食を摂って移動の支度を整える。建物の解体を惜しまれたが、放ったらかしにすると野盗の巣になってしまうのでご納得頂いた。
早朝から昼まで移動したが、襲撃に来るような野盗も野獣も無し。鳥と小動物が居る程度で実に平和な物である。
昼飯も危険無く食べて夕方迄移動して今夜の宿営地に到着した。期待されてるので雪を《収納》して煉瓦の家を作ったよ。一度やると慣れるもので、直径二十ハーンの円形の土地に二ハーン程の壁を建て、半球形のドームを屋根として付けた。おかげで凄~く天井が高い。
半分を壁にして、入口側はゾーイ達と見張りの部屋。奥の半分は床を敷いた後、奥行五ハーンで六つに部屋割りし、各々の部屋と風呂トイレとした。解体した時サルベージして来た引き戸を付けて、浴槽とトイレの穴を掘ったら完成だ。
「魔法って、基本的に破壊の力しか認められないんだよね。だからカケルの使う土魔法は凄いんだよ」
ハーク坊っちゃまにお褒めの言葉を賜った。
「魔法建築ってそんなに使われないって事か?」
「一般的な煉瓦は作られておりますが、貴族では魔法のなり手が少なく、平民は学ぶ機会がありませぬ」
ブルランさん曰く、貴族は派手な魔法を好むのだそうな。一夜城とか凄く派手だと思うのだがな。
「火とか風、水、光を扱う人が学園でも多いよ。土魔法を使うのは僕が知る限り一人だけだね」
「厚遇してやれ?その内良い事あるかも知れん」
不遇職が努力して無双、とかよくある話だろ?
「カケルが先生になってくれたらその子も成長出来るかも」
「あまり家を開けたくないから遠慮させてもらうよ」
色んな素材を目で見て触って作ってみるのが良いとアドバイスした所で食事の支度が整ったみたいでメイドが呼びに来た。ハークと俺達、護衛、メイドと馭者の順で交代制で食べ、警護対象なのに俺達と一緒になって警備する坊っちゃまであった。
「異常は無いようですな」
警備しながら風呂待ちをしてる俺達に、湯上りのブルランさんが話し掛けて来た。湯上りなのに執事服だ。
「周囲一万ハーンにケブが十二、野盗も人も無し。野獣もポツポツですね」
「良い事です。万事滞り無くなされる事を願っております」
「普段より少ない、なんて事はありませんか?」
「道中確かに少なくなっておりますが、夜の襲撃が少ない、と言うより全く無い事に驚きです。明かりや煙、匂いを出さないのがその要因なのでしょうな」
実は煙も匂いも出ているが、煉瓦の壁は通気性があって拡散されているのだ。
順繰りに入浴し、仮眠して夜警。そして夜が開けた。朝食を摂って準備を整えたら昨日同様更地に変えて出発だ。今日は前方に野獣、多分鹿っぽいのの群が居るが、何とかライガーも居なそうだし、気にする程でも無いだろう。一応護衛に伝えとく。
「冒険者は我先に殴り掛かると言うのに貴殿はそうしないのだな」
「護衛するに無駄な殺生をするのは、血の匂いで肉食を連れて来てしまう可能性があるので止めた方が良い。食うならば、食われる覚悟が必要と言う事だ」
「成程な」
ゾーイの足音を聞いて移動を始める鹿っぽいのを見送って再び移動を開始する。
この辺りの街道は雪の壁が無いので歩いてる鹿っぽいのやラデュと思われる真っ白な毛玉がひょこひょこしてて、ハークが被り付きで見てる。
大きくて冬毛が密な毛皮はそれなりの値段で買い取ってくれると以前調べたが、可愛いのでそっとしとく。
昼飯を終えて宿営地に向かう道も何も無く、ジョンくんじゃ無いが、ケブは何処じゃーウオルス出て来ーいって気分になった。
居ない事は無いけどこっちに来ないのだ。
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