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あれ千年も持つのか
しおりを挟む俺を餌にしてくるこの巨大魚は、窓ガラス代わりに使える程厚く丈夫な鱗をしていて、丸焼きにすると包み焼きのようになるようだ。焼けた鱗はボロボロで使い物にならなくなるが、調理器具を使わない料理としては充分な出来と言える。
「美味い…」
「焼き過ぎたと思ったが、中は無事だったようだな」
「はぐっはぐっ…んまっ」
普段、食卓に上がらない丸焼きの魚をバリバリと頭から食ってるカラクレナイは、この野趣たっぷりの料理を随分とお気に召したようだ。
「リュネ、調子はどうだ?」
「地下深くに処分場になる部屋を作りました。付与は私がしますので、魔石を作ってください」
「魔石か…。トカゲので良いかな?」
「充分です。きっと千年は持ちますね」
ダンジョンで拾って来たトカゲの魔石を取り出して、ミズゲルの核同様に《集結》で圧してやる。そこに魔力を注ぎ込むと光り輝く魔石となった。セカンドハウスの風呂にも使われている大型属性魔石だが、あれ千年も持つのか…。
「それでは付与しますね」
俺の手から魔石を掴み取り、少し離れて魔法を掛けるリュネ。浄化と思しき光を放ち、魔石が光を失った。浄化の魔石、正しくは浄化の光の属性魔石と言うそうで、光を浴びた汚物や臭気を消し去るんだって。早速設置するそうで、食休みもしないでぽてぽてと走って行ってしまった。
残る俺達はしっかり食休みして、再び消波ブロックを投げに行く。ミーネも見様見真似でテトラポッドを作って手伝ってくれた。大きさはまちまちだが気にしない気にしない。
「今更だが、これは何なのだ?」
「打ち寄せる波を弱めるブロックだよ。隙間に小魚とかが住み込んで良い漁場になったりするんだ」
「壁を硬くするだけではダメなのか」
「小魚の住処を掘っちゃったからね。居なくなられると困るのさ」
「おさかな、食べるの?」
「その内な」
島全体にテトラを沈め、辺りはだいぶ日が落ちた。気が付くと、島の端に建物が建っていた。リュネが作るにしては小さいな。
「おーい、リュネ~」
「はぁ~~い」
近付いてって声を掛けると返事がある。建物は所謂ツーバイフォー、石版を貼り合わせたシンプル設計にしか見えない。しかも基礎も無く、地面から直接ドアが付いている。
「この建物は何の建物なんだ?」
「穴に落っこちない為の壁に屋根を付けただけの物ですよ。直ぐに壊してしまう物ですが、虫や鳥が迷い込んだら死んでしまいますからね。それに…」
「それに?」
リュネは辺りを見渡し眉を垂らす。
「上に乗ってるの、全部取り替えた方が良さそうです」
一緒になって見渡すが、確かにその通りだと思った。表土が薄く、低木が殆どでしかも細い。となると、観葉植物にしか使えない。それなら木の実のなる低木を植えた方が余程役に立つし、脆い岩の上に建物なんて作りたくないわな。更に言えば、島を二回り大きくしたので諸々足りないのだ。
「リュネの好きなようにやって良いぞ。俺はリュネのセンスが好きだし二~三オコンは建物を褒められる自信がある」
「カケルさぁ~ん」
「ぎゃ~おぉ~~ん」
「カケルーカララも!ギャ~オォ~ン!」
やめて死んでしまう。抱き合う俺とリュネに伸し掛るカラクレナイを浮かせて冷や汗がたらり。
「しかしそれでは我等の寝床が無いな。愚妹は我が子を寒空の下で雑魚寝させたいようだ」
「あらあら、私の可愛いカララちゃんを屋根も無い場所に寝かす訳には行きませんね。ちゃちゃっと作りますので、島から離れて待っててくださいね」
「お、おう」
紫色の澱みを垂れ流し空に上がるリュネが、眩い光と共に龍の姿に戻る。ヤバい逃げろ!カラクレナイを抱えて、海上まで逃げた。きっと街でも大騒ぎになっている事だろう。
島の上部が光を放ち、消えて行く。そして島の土台が光り、ニョキニョキと姿を変えて行った。島の端には落下防止の段差だろうか、白い凸凹が並び立つ。
此処からじゃ中の方どうなってるか分からないな…。
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