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鷹の目
しおりを挟む兵士達は方々へ散ってった。自分達では作れないので、多分女を呼んで来るのだろう。
「マシュエルも婆ちゃん連れて来いよ」
「そ…、そうじゃな…」
マシュエルが家に戻り待つ事暫し。女の群れがやって来た。獲物を狩る鷹の目をしている。皆夫々に籠や鍋を用意して、どの食材に喰らい付こうか、隣の女と火花を散らす。
「煮種と黒糖以外は沢山あるから心に余裕を持ってくれ」
「煮種?黒糖?なんだいそれは」
「タダなんだろ!?早くおくれよ!」
「まあまあ。これから飯を作るんだろ?献立でも考える序に煮種とかの説明を聞いてくれ。美味いし腹に溜まるんだ。子供も喜ぶぞ」
女達から声が上がるので説明をする事にした。種は既に煮てあるが、煮る事で食えるようになる事。料理の仕方に食べ方。黒糖は甘い事を説明した。そうしてる内にマシュエルに連れられて婆ちゃんが到着したので配給を開始した。
大陸が変わろうが、ギルドが無かろうが、家政婦組合はある。組合自体が無くても女達のコミュニティはあるのだ。そしてこの婆ちゃんはその中の上位に居る事は俺の目から見ても明らかで、事実、婆ちゃんが来てから鷹の目が母の目に変わっていた。居なかったらバーゲンセール状態になっていたかも知れん。おお怖い。
「婆ちゃん、助かったよ」
「助かったのは此方の方ですよ。先日頂いた物も、やっと口が付けられます」
「何となくそんな気はしてたけど、食べなかったのか」
「抜け駆けする程飢えてないだけですよ」
そう言う事にしておこう。持って来た食料を充分に確保した女達はホクホク顔で家へと戻って行った。
「あ、あの…」
女達が居なくなると、男達が現れる。兵士に平民、それにエプロン着けてるのは酒場の親父かな?酒場の親父っぽいオッサンが代表して話し掛けて来た。
「俺んトコは宿屋をやってるんだ。今は独りモン共の飯を作ってるだけだがな」
「好きなだけ持ってけ。その代わりしっかり働かせろよ?」
「すまねぇ、恩に着る」
大八車に食料を載せて、男達は宿屋に向かって行った。広場から外に向かおうとする俺に、ずっと静かにしてたリームが口を開いた。
「島から持って来た分まで出して良かったのか?」
「ああ。これで奴等は一日か二日生きられる。次は長く生きられるようにするぞ?」
「なにする?」
背中に抱き着くネーヴェは歩きたくないだけだなこりゃ。肩車にして、歩きながら答える。
「土木工事だ。土と木、そして水。どれも無いだろ?」
「ん」
「壁も無いから敵に攻められちゃうな?」
「ん。そーゆーの、作るの?」
「そう言う事だ。手伝ってくれるか?」
「わかった」「我も手伝おう」「我にもやらせてくれ」
「「え?」」「居たのか」
しれっと混ざったボーデンフェルトが何故かやる気になっている。
「居たぞ。我は金さえあればと傭兵として稼いでおった。だがそれでは街は潤わなんだ」
「肉でも狩って来たら良かったのに」
「陸の獣は数が減り過ぎて、このままでは滅んでしまうのだ。魚は毎日食えるようにしてはいたがな」
門も無い、剥き出しの岩壁の隙間を抜けて、四人で空に上がる。見下ろすと粗荒野。更地と考えるならこれ以上無い素地だとも言える。
「ボーデンフェルト、この島について知ってる事を教えてくれ」
「うむ。我が知る限り、この島は三十年程の間略奪戦争の舞台であった。先に仕掛けたのはキネイアッセンのハバル帝国。その後ヒズラーのアフマクシア公国が参戦し、殺し、奪い、かつては森と草原しか無かったこの土地も、今ではご覧の有様だ」
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「十日に一度降れば良い方だ」
「そうか。先ずは縄張りを主張して水瓶を作るか。その後で植林だな。街道はあるのか?」
「無い。好きに移動出来る故、全てが街道であるとも言える」
見渡す限りのエリアを囲う為、一本の壁を建てて行った。
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