女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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俺の勝ちだ

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 煉瓦の壁はネーヴェやリームにも使える単純な土魔法だ。街の入口となっている岩壁の左右から半円を描くように壁を生やし、殆ど龍二人の力で壁を建て終えた。半径十五キロハーンはあるだろう。

「カケル殿、この中に住み変えるのか?」

「人が増えたらな。だが今は水瓶と森と畑にする」

女達に指示を出すと、リームが壁の内側を地下二十ハーンの深さで《収納》する。ネーヴェは抉れて出来た壁と底を硬くして水捌けを悪くした。

「主様、土を作るのに少し時間が掛かる」

「構わない。俺の方がずっと時間が掛かるからな。ボーデンフェルトは土魔法や《収納》は龍並に使えるよな?」

「雌程では無いが人の子以上には出来るつもりぞ」

「ならば競走と行こうか。俺は西から、お前は東から。壁の奥側に幅二十ハーン、深さ十五ハーンの壕を掘って行こう。負けたら街の者に肉を振舞ってやる」

「我が負けたら?」

「毎日水撒きでもしてもらおうか」

「骨が折れるな。だが負けてやりはせん!」

二人同時にその場から姿を消した。夫々反対側へと猛スピードで飛び出して、壁の端を目指す。
 俺はノーズコーンを被って飛びながら、掘り抜く範囲を指定する。俺の前方に二十×二十高さハーンの四角い《収納》を出現させる。これを水平にすると柱状節理を切り離したミーネの《収納》と同じような事ができる。ミーネは一瞬で消したので切れたようになったが、今の俺の力では上の部分を飲み込んでしまうだろう。
壁の端に着いた所でノーズコーンを仕舞い、五ハーン潜った位置から地面を切り出して進む。《収納》した土は他の事に使おう。なるべく早く、そして正確に南端へ向けて飛んだ。


 夜になり、人々の騒ぐ声が街の中央広場を包み込む。夫々の家庭から持ち寄った夕飯と、中央に作られた簡易キッチンで焼かれる肉が今夜のご馳走だ。

「同じ方法であれば我が負けていたであろうな」

「否、それでは本気のお前と戦った事にはならんだろ。あれが人の子の限界だと思うぞ。少なくとも今現在のな」

「うむ、増々以て潔し。雌が惚れる訳か」

「カケルはご飯くれる。だいすき」

「雄とは言え本気で戦ったのだ。主様は誇って良い。その姿がまた、愛おしい」

煉瓦製のテーブルセットには焼けた肉と各家庭からのお裾分けが所狭しと並び、俺達に供されている。年寄りや女子供は椅子に座り、男達は立食で腹を満たす。歓声と笑顔を見るボーデンフェルトの目は優しい。
肉を食ってると言う事で、結果は聞くな。本気の龍は雄でも人以上と言うだけの事だ。仕事の丁寧さで言えば俺の勝ちだがな!
だがまあ、肉のおかげで俺達は街の住民に受け入れられたようだ。奥さん連中がリーム達に群がって話に花を咲かせているからな。

 壕以外の仕事はと言うと、リームは枯れ果てた土に魔力と水を練り込み、草を生やして練り込む作業を延々と繰り返していたそうだ。今は一面緑色になっている。ネーヴェは一平方キロ程の器で溜池を三つ作ったのだと。煉瓦で作ったので染みて行くから偶に水を足さなきゃならんようだ。魚も入れなきゃな。

「カケル殿」「カケル様」

スープの飲み比べをしていると、マシュエルと婆ちゃんが揃ってやって来た。

「しっかり食べてる?」

「お陰様でな。街の外に緑と湖が出来たと聞いた。感謝の、言葉も無い」

「皆さんの笑顔を取り戻して下さり、本当にありがとうございます」

「まだまだ足りない物が多いけど、それもまた追々やってくよ。明日からの食料は外に生えてるのを好きなだけ使ってくれ」

「カケル殿、外の草は食える物であったのか?」

ボーデンフェルトが不思議そうな顔をする。

「野菜の種とアマグキと、木の種しか持って来てねーもん。実物はどうか分からんが、葉物と根物は食える状態になってると思うぞ」

「実物は魔力を与えれば直ぐにでも成りましょう。そこの雄にでも出来るであろうよ」

勝っても負けても水撒き係となるボーデンフェルトであった。
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