女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

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椅子がある

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 すっかり遅くなってしまった昼食だが、空いてて静かに食えるので逆に良かったと言える。

「カケル様、飲まないの?」

「昼間からエールはちょっとな。イゼッタ、お前も控えなさい」

飯と酒はセット。そんな事を言って木のジョッキを煽る十本槍の女達。それに混ざってエールを頼むイゼッタを窘める。

「カケルゥ」

「おっぱいがお酒味になったら赤ちゃん達には飲ませられん」

「ぐぬ…」

甘え声出してもダメ。ぐぬってもダーメ。果実水でも飲んでなされ。

「イゼッタ様。赤ちゃんの為なら我慢するしかないさね」

「私より先に産んだんだから我慢なさいよね」

おかしな理屈だが耐えるイゼッタに、おやつの甘納豆をそっと供えてご機嫌を取った。俺は肉を食う。


 べろんべろんになった女達をベッドに寝かせ、イゼッタもお昼寝すると横になる。俺、暇。そう言えばシャリーがこっちにしか売ってない種があるとか言ってたな。連れて来れば良かったぜ。まあ名前を聞きながらなら俺でも買えるだろうし、少し街をブラついて来るかな。

「イゼッタ、買い物行って来るよ」

「ん~…」

返事だか鼾だか判らない音を聞いて、一人部屋を出た。
エージャと来た時にある程度見て回ったがその時買った種は野菜の種で、今も食卓に並んでる。今回は豆として食えそうな物を探そうと思う。
種苗店の軒先には色んな苗が生えていて、この苗を買うのでは無く、これの種を買う為のディスプレイとなっている。売り物の苗は店の裏手に並んでると以前聞いた気がする。

「いらっしゃい。冒険には使わないモンしか無いが、何か入り用かい?」

元気の良さそうな妙齢の女が出て来た。此処の女将だろう。

「俺は金持ち冒険者でな、家に畑があるんだぜ?」

「それなら沢山買っとくれ」

「ホルストの餌になる種で、大きい粒のを見せてくれ。後、美味そうな野菜のも」

「美味いかどうかは作り手次第だよ。まあ少し待っとくれ。集めて来るよ」

女将が奥に引っ込むと、入れ替わりで女の子が出て来た。娘だな。

「お客さん、お客さん。種買うの?」

「良いのがあったら買わせてもらうよ」

「じゃあ中で待ったら良いよ。椅子あるよ」

「椅子があるのか。なら中で待つとしよう」

店の中に入ると沢山の壺。種が入っているようで、女将が小皿に少しずつ取り分けてた。女の子に手を引かれそのまま裏庭へ向かうと、こっちは苗が並んでる。水遣りはこの子の仕事なのだとさ。裏庭の真ん中に置かれた椅子とテーブルに座ると、もう一つある椅子に女の子は座った。

「お客さん、良い苗でしょ?」

「青々としてて良い苗だと思うよ。ちゃんと世話をしてて偉いな」

葉色の濃さもそうだが茎も短めで金の取れる苗なのが分かる。これで挿し木を覚えたら無敵だろうな。

「えへ~。買ってくれるともっと嬉しいんだけど」

「ごめんな。家が遠いから種でしか持って行けないんだ」

「ちぇー」

「お客さん、待たせたね。種を持って来たよ」

女将がトレイに小皿を山盛りにして歩いて来た。結構あるんだな。女将はこれから商談だからと女の子に店番を頼み、女の子は口を尖らせて店に消えて行った。

「農家は自分で苗を作るからねぇ、店ではあんまり買われないのさ。あくまでこの種からはこれが出来る…って、見せるだけだからね」

「街の人に売れば良い。木箱で育てればちょっとした収穫になるし、部屋に緑があれば装飾にもなるだろ」

「へぇ、装飾としても使える野菜ねぇ」

「小さい実か根物とかな。直ぐ出来る葉物何て毎日摘みながら育てられるんじゃないか?」

「陽の当たる窓辺でもやれる野菜に、そんなに陽の要らないヤツもあるね。試してみるよ」

金の匂いにニコニコ顔の女将を見ながら種の説明を受けた。

「こっち側のはホルストの餌。陽当たりと水さえありゃ撒いときゃ勝手に生えて来るよ。残りは野菜の種。大きい種で良かったんだよね?」

「ああ。見せてもらうな」

椅子を寄せて隣に座り、一つずつ説明を聞いた。

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