女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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少し迷った

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 地下二十一階。明らかに敵か強くなった、と思う。感知能力に優れ暗闇から素早く攻撃して来る蛇の魔獣に、壁や天井に張り付いて毒を吐きかけるヤモリっぽいのが罠と同時に襲いかかって来る。
普通の冒険者なら大変だろうな。攻撃も毒も《結界》に阻まれ効果を成さず、脳味噌スカスカにされて煙に変わるので、小さな魔石を拾うだけの簡単なお仕事だ。

「これは…、食えるのか?」

煙になったヤモリっぽいのから白い玉が落ちて来て、ポンポンと床に跳ねる。少年用軟球程のプニプニとしたそれを拾い上げ、《鑑定》すると卵と出た。フォークの握りをしてみるが、一応食べられるみたいだし、回収して先へと進んだ。

 代わり映えの無い階層を下り、地下三十階。ボス部屋前に到着する。此処迄は普通の冒険者でも来られるようで、途中何組かのパーティーの反応があった。普通の冒険者が毒対策をどうしてるのか気になる所ではあったのだが、飯の種になってそうだし敢えて我慢したよ。
ボス部屋前は誰も居らず、戦闘中でも無いようだ。扉を開けて中に入る。
部屋に入って間も無く、部屋全体に広がる大小様々な魔法陣が無数に展開された。キレイで見蕩れてしまいそうになるが、此方も部屋全体に《結界》を張って対応する。
魔法陣から現れようとする敵が、《結界》に押し付けられ出られない。魔法陣から押し出され、結界に押し付けられた魔物は板挟みとなり、潰れて煙となる。

 こりゃ誰も近寄らん訳だ。煙に変わる寸前の敵を見て少し後悔した。お肉がこびり付いた骨でした。ゾンビと言うか、スケルトンと言うか、その中間くらい。人の姿に動物も見てしまった。恐怖には耐性があるので差程でも無いが、気持ち悪さが強い。学生の頃に生きた鶏を締め、シルケでもゴーラやトカゲを捌いて来たが、それはそれ、これはこれ。ドロップ回収したら休憩しようと思う。箱の中身がお肉とかじゃ無くて本当に良かった。


 休憩を済ませて階段を降り、地下三十ー階。此処からは情報も金になると言うので雑木紙にボールペンを用意して、階層内を隈無く移動して回る。
《感知》にて階層の全体を把握したらトレースしてマッピング。出来上がった地図に、敵の種類と量と出現場所、罠の種類と位置、箱の場所と罠の有無を書き込んで完成。正確過ぎて買取価格が想像も付かん。そして一枚書き上がるのに時間が掛かる。敵の名前が分からないのが困り物で、《叡智》を使っても分からないのだ。ミーネが以前言っていた、人は何でも名前を付けたがると言う言葉を思い出した。
猫は自分を猫とは名乗らん。名前も付けない。

 一枚に一オコン強掛かり、昼飯?を挟み、三十五階迄書き終えて再び腹が減る。きっと夕食の時間だろう。下への階段のある部屋で今夜は野営する。
乾燥野菜と薄切り肉を鍋にぶち込み、塩と香辛料で味を整え、水分少なめで硬練りにした溶きマタルを小分けに入れて火を通し、水団鍋にした。慣れた味だがやはり醤油か味噌が欲しい。
仮眠して、回復と《洗浄》を掛けて目を覚ます。体感的にはまだ夜の筈だが、隣に女でも寝てなけりゃ寝ててもつまんないので仕事仕事。
マッピングはだいぶ慣れて来た。敵の数は変わるだろうから大体の数で良いし、箱に掛かってる罠だってランダムの筈だ。初見の階層に来て罠を警戒しない冒険者はダンジョンの餌になれば良い。だが三十八階で少し迷った。

隠し扉を書くべきか。

これは書かない方が良いだろうな。出来れば普通の冒険者には見付からないで欲しい。入ったら死ぬだろうし。俺は《感知》で見えているので中の様子が丸分かりなのだが、これは多分罠部屋だ。短い通路を抜けるとそこそこ広い部屋の中央に箱がある。《結界》を二重に掛けて隠し扉を押し開けた。
…やっぱり罠部屋だった。部屋に入ると、中央に置かれていた箱が地面に埋まって石畳で塞がれてしまった。勿論扉は塞がれて開かない。ちょっとイラッとした。

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