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龍殺し
しおりを挟むボロボロの龍は《封印》されているようで宙に浮かんで微動だにしない。出来無いと言うのが正解か。
「私が居たのに、《収納》されてしまいました。ごめんなさい」
殺気の籠った視線を《封印》された者に向けたまま、リュネが詫びた。
「どして攻撃してきたのか聞いてる」
視線を逸らさずネーヴェが問う。
「私を、モノにしたかった、と…」
「主を屠れば言う事を聞くとでも思ったか、…屑め」
「殺す」
「唯殺すのでは足りん。塵も残さず消滅してくれる」
「皆、知り合いじゃ、無いんだな?」
「知らないです」「無論だ」「分かんないけど知らない」
「そうか…。俺の女を取ろうとした野郎だ。俺が殺る」
「カケルさん…」
「それに皆身重なんだ。あまり殺意を出すとお腹の子が怖がるよ」
「…ふっ、旦那様の女で良かった」「はい」「ん」
三人が殺意を消すと、重かった空気が軽くなる。正直動けなかったんだ。
《封印》に包まれた野郎の内臓を少しずつ《収納》し、海に捨てる。直ぐに魚がやって来て、バチャバチャ餌に食い付いた。そして爆発する。爆発する程大量の魔力があるようで、これは人が食っても爆発するな。
内臓の次は骨、骨の次は肉と、《収納》しては捨てて行き、全てを海に捨てた頃には辺りに魚の気配は消えていた。
「旦那様も遂に龍殺しか」
「実力じゃあ無いけどな」
「カケルさん、次は私です。どうぞ罰を」
リュネには何の罪も無い。だが、そうだな。
「リュネ」
「はい」
「俺が死んでも後追いせず、天寿を全うしてから俺の来世に来てくれ。今世の記憶は消されてるだろうがな」
「はい…はいっ」
「お前等も後追いだけはするなよ?」
「分かった」「ん。来世のカケルさがす」
そこまで長寿にはなれんだろ…。なれんだろ?リュネにおぶさり島へと帰った。
島に着いて既に暗く、お弁当を食べそびれたのを思い出す。
「カケル様、ご無事で何よりです」
「主様!」「カケルー!」「カケルー!」「旦那さまっ」「貴方様あっ」「「「カケル様っ!!」」」
陸に着き、女達が迎えてくれる。
「皆、お迎えありがとな。見ての通り生きて帰ったよ。今回は俺が弱かったからやられたが、雄とは言え龍相手だから仕方無いよな?次が無いとは信じたいが、次があったらちゃんと逃げるよ」
泣いてる女を撫であやし、皆で食堂へと向かった。
「カケル、《転移》使えるようになった。すごい」
湯に浸かりながら、ネーヴェが俺を褒める。リュネ曰く、龍ですら数人と言われるスキルだそうで、人の子では皆無であるとノーノが続けた。勇者を召喚しようとした魔法も転移の一部だが、誰かにするのと自分に使うのとでは次元が違うそうだ。
「リュネはやはり凄いんだな」
「人の子一人守れませんでしたけどね」
「卑屈になるなよ。おかげで《転移》や《記憶》、《白昼夢》なんてのを覚えられたんだから」
「《記憶》?」「《白昼夢》ってなんですか?」
「《記憶》はそのまんまだな。《白昼夢》ってのは他所の風景を脳裏に浮かび上がらせるスキルだ」
「過去や未来は無理だが、現在の場所を見られる」
「此処では無い何処かを見て、その情景を記憶する事で《転移》が可能と言う事で御座いますね?」
「《記憶》するのは場所だけどね」
「旦那さまはいろんな所に行けちゃうんですね!」
「そうだな」
多分だが、俺の《転移》はある意味リュネを超えている。リュネの転移はシルケの中だけだが、俺のは地球にも行けるのだ。如何にリュネでも地球に行った俺を探す事は出来まい。
…そう、帰れるのだ。
帰った所で国籍無いけどな。身分証も無いから寝る場所にも困るし仕事にも就けん。やれて外国の地方で野菜や野草の露店売りくらいの物だろう。少なくとも日本にゃ住めないな。けど…。
「カケル、何考えてる?」
俺の頭を太腿で挟み、肩車状態のイゼッタが前屈みで覗き込んで来る。一児の母に思えぬお転婆ママさんだ。
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