女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

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コーラ

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 暗い、多分暗い筈。
目の前は真っ黒。
温度も何も、感じ無い。

声を出そうも体が動かない。
指先、目、舌さえも。
地に足着いてない感覚はあるが、浮いてる訳では無さそうで、味わった事は無いが、例えるなら固まったコンクリの中に居るような感じだ。

空気はあるのが唯一の救いだ。
体が動かないので呼吸も出来無い。
《皮膚呼吸》、覚えていて良かった。

内臓は辛うじて動いてるようだ。
思考を止められてないのは助かる。
但し、糞尿垂れ流したくなっても出せないのは辛そうだ。

瞬き出来ず、目が乾く。
水魔法は使えた。
スキルも使えるようだ。
球体で溜まって行く水を《感知》で捉え、浮かせて目玉に押し付けた。

《感知》の範囲には、何も無い。
これが《収納》の中なのか…。

《転移》覚えたら脱出出来るかな?
《叡智》を使おうとして多重に掛けた《結界》が消えて行く感じがして止めた。
今《結界》を解いたらダメな気がする。

《感知》を解いて、考える。
今使ってるのは《逃げる》《並列思考》《空想》のセットに、《結界》と《纏う》が三つずつ。
《感知》+《叡智》の発動しかけで《結界》と《纏う》が二つずつ解けた。
今使えるのは精々《結界》《纏う》セットが二回と《感知》一回かそこら。

《結界》を三枚張り、纏った《結果》を解いて更に《結界》二枚張る。
その瞬間、重力を感じて《結界》の底に落ち掛ける。
《逃げる》で浮く。
体が動く。

「あ、あ…」

呟く声が耳に入った。
大きく深呼吸。
空気は美味い。

目の水を拭い、落ち着いた。
目の前は相変わらず真っ黒だ。
だが少しだけ、自由を得られた。

《空想》し、転移する姿を想像する。
現在地が不明で外が見えない以上、《転移》は成功しないだろう。
ならば先ずは、視覚以外の方法で別地点の映像を見れなくてはならない。
脳裏に映像を浮かび上がらせるスキル…。
《予知》《夢見》《白昼夢》と、三つの候補が上がる。

《予知》は時間軸が違う。
《夢見》は寝なければならない。
消去法で《白昼夢》にした。

《白昼夢》を発動すると、まるで目で見ているかのように、何処かの風景が脳裏に映し出された。
知ってる場所を探さねば…。
否、此処は知ってる場所の上空だ。

川があり、橋が掛かり、萎れた花にコーラ。
地球の、俺が死んだ場所の上であった。

直ぐに意識をシルケに飛ばす。
今地球に行ってもどうにもならん。
女達が心配するだけだ。

映像がシルケに切り替わる。
知らない場所だが魔力を感じる。
怒るリュネの魔力だ。
ミーネとネーヴェがそこに近付いている。
俺も向かう。

映像が切り替わり、リュネが居た。
近くには四肢と尻尾と、翼に角を切り飛ばされた龍が、鱗を剥がされ浮かされていた。

場所を覚えるスキル…、《空間記憶》…否、《記憶》。
《記憶》スキルで現在地を記憶した。

《転移》スキルを身に付けた。
成功する事を切に祈る。

『リュネ。近くに転移する。アレのスキルを封じられるか?』

『カケルさんっ!?』

『カケル!』『旦那様!?』『主様っ無事か!?』

リュネに繋がると、ミーネとネーヴェ、それにリームからも《念話》が届く。

『《封印》しました。何時でもどうぞ』

リュネの言葉に覚悟を決めて、《転移》を発動した。

「カケルさんっ!」

 目を開けて、リュネの肉声が聞こえる方へ目をやると、おっぱいに包まれた。

「もがっ、ばだいば…ぷふ。只今、リュネ」

「カケルさんっ!カケルさぁ~んっ!」

「旦那様!」「カーケルー!」

ミーネとネーヴェが飛んで来て、ネーヴェの突進で《結界》が全部割れた。回復する…。

「へへ、中々貴重な体験だったぜ…」

「よく生きて出られたな。体に不調は無いか?」

「本当に、本当に…。心配したんですからぁ!」

「リュネの注意喚起のおかげで助かったよ」

「で、何があった?」

汚物を見るような視線でボロボロになった龍を見遣るネーヴェがボソリと呟くと、ミーネとリュネの気配も変わった。





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