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律儀者
しおりを挟むイゼッタとネーヴェを甘やかして時間を過ごし、女達が夕飯の支度に赴いた。俺に許された手伝いは配膳のみ。なので再び《白昼夢》で弥一ん家を覗く事にした。
出掛けてから結構時間が空いたので、奴は既に帰宅して、机にPC出してカタカタターンとやっている。傍らには紙箱入りのボールペン。コンビニで無く文具屋で買って来る辺り律儀者である。
カタカタと打ち込んだ文字列を、えらく細長いプリンターで出力してる。持ち運びには便利そうだが一枚ずつ紙送りせにゃならんからだいぶ時間が掛かりそうだな。当の弥一本人も頭を掻いてヤキモキしてる。ヤキモキし過ぎてボールペンの箱が落ちるのを《収納》すると、驚いたようで立ち上がり、キョロキョロしながら何事か叫んでるようだ。ア、エ、ウ。俺の名を呼んでるっぽいな。《白昼夢》を見てる状態では此方からコミュニケーションを取る事は出来無いようだ。仕舞ってある雑木紙にボールペンで文字を書こうとしたが無理みたい。一度スキルを解除して、紙に文字を書かねばならん。なので一旦スキルを解除し、新しいボールペンでお手紙書いた。
ジェルインク助かる!
少しにじむけどすげー書きやすい!
とにかくありがとう。
弥一んちを見るスキル、白昼夢ってんだけど、見るだけのスキルだからこっちからコミュニケーション取れないんだ。だから叫んでも何も聞こえないんだぜ。
こっちはそろそろ夕飯だから今プリントしてるだろう質問は明日にでも回収するよ。←収納ってスキルな。
夜はなるべく来ないから好きなだけ右手を動かすといいぞ。
では。ノシノシノシノシ
依然ウロウロキョロキョロしてる弥一を余所に、机に雑木紙を乗せて直ぐに戻った。
箱入りなのでダースだと思ったら、一箱十本入りだった。一本千百十ヤンと少し、と考えると高いボールペンだな。とは言え彼奴の金で買ってるのだし、文句は言えんか。
翌日になり、食休みがてら覗きに行くと、机の上に紙束が乗せられていた。野郎どんだけ書いたんだ?回答するにもこちとら手書きぞ!?寝ている弥一の顔に濡れタオルでも乗せてやろうかと思ったが、紙束を回収して帰った。
今日は商業ギルドに行くのでお供にシャリーを引き連れてバルタリンドに向かう。妻三人とメイドとテイカが赤ちゃん抱いて同行したが、多分ママ上殿の所から離れないのだろうな。ママ上殿とメッツ君にご挨拶して外に出た。
商業ギルドに着くと、直ぐに受付嬢が集まって個室へと案内される。色目使ってるのをシャリーの目力が抑え付け、お仕事モードに切り替えさせられてた。で、部屋に居るのは俺とシャリーに、商業ギルドからはプリニアと、今お茶を持って来た女職員の四人。女職員は出てっちゃったので三人だな。
「地主様とは話が固まりましたので書面での契約と金銭の支払いのみとなりました。今回は魔石での取引ですね」
シャリーと二人で契約書を読み込み、不備が無いのを確認すると、ボールペンでサインする。
「それは魔道具で?」
「文明の利器だよ。便利だが使い捨てだからガラスペンの方が良いよ」
「そう言う物ですか…」
商材にはならんと釘を刺し、魔石をゴロゴロ机の上に積み上げる。トカゲの魔石十一個。崩れそうなので床に置く。プリニアがその場で領収書を書いて渡し、土地の購入が完了した。
「この度はご利用ありがとうございました。またのご愛顧をお待ちしております」
「土地なんて早々買い増し出来無いけどな」
「素材や魔道具の持ち込みでも構いませんし、これからお屋敷を建てるのでしたら私共が手配致します」
「建屋作りに関しては大丈夫。家作りに強い知り合いが居るからね」
「それは、差し出口を…」
「若返り効果のある浴場を作るから、完成したら入りにおいでよ」
「!完成をお待ちしておりますっ!」
「女性専用ですけどね。旦那様、そろそろ…」
受付嬢が列を生して見送る中、商業ギルドを後にした。
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