女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

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鎬を削る

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 溝のあるローラーに通す事で細くなったミスリル線は《伸縮》を解いても靱やかで、それでいて張りもある金属線となった。皮膜を付けたら電気配線としても使えそうな感じだ。雑木に巻き付けたコイルを幾つか用意し、翌日朝にエメラルダスの所に持って行った。

「こんなに沢山用意してくれたんだ」

「材料はあったからな。鍋はこれで良いか?」

「もうバラしちゃったし、その大きさなら充分過ぎるよ」

頼まれていた物を渡すとちゅーっとして作業に戻るエメラルダス。台所を改修した修理場では、バラバラにされた海竜の皮がバケツの中で水に浸っていた。

「相手してあげたいけど、ごめんね?」

「お礼は期待しててくれ」

作業の邪魔になるだろうから防具屋を後にした。

「あら旦那。最近お店に立って無いけど、飽きちまったのかい?」

ギルドに公共浴場の進展を聞きに行く途中、店屋の女将をしてる常連さんと、その取り巻きに絡まれた。

「冒険者の仕事があってね。街が壊されたろ?風呂とか」

「あーね。旦那と子供等はそっちに行かせてるんだけど、アレ直したのもカケル様だったのかい」

「家の向かいも壊されてたねぇ」

「風呂は昨日直したんだけど、店主が問題起こして辞めちゃったからさ。商業ギルドと家政婦組合に人を寄越してもらおうって事になってんだ」

「商売敵なんだ、潰しちまえば良かったのに」

「他の場所を壊したの迄俺のせいにされちゃうよ」

店主が睨んでるのでそろそろと、別れを告げてギルドへと向かう。

「今日は違う格好なのですね。素敵です」

ギルマス室で待っていたカロがライデンの服を見て感想を述べる。

「鎧姿よりは品がありますね」

サブマスのハシュラの感想は刺があるな。

「お湯の作り方は理解したか?」

「はい。マスターの屋敷のお風呂が魔石動力な事もあり、ご教授頂きました」

「そかそか。で、昨日は誰が働いてたんだ?」

「洗濯屋のおばば様達が引き受けて下さいました。洗い物も来るので悪くないとの事」

「それは良かった」

商売を始めると言う事は、同業者と鎬を削ると言う事だ。街で長い事やっていたであろう洗濯屋の婆さん達の事は気掛かりだったんだ。これで後顧の憂いは絶たれた。オヤツ作りに集中出来る。


 島に戻り、下拵えは風呂の二階で行う。《収納》に隠し通していたクッキーを砕いて作ったタルト台を増産して冷ます。そして空いた時間に果物の糖蜜漬けを作り、味が染みる迄待つ。更にクリーム作ったり、糖蜜漬けを切ったりと、今回のが一番時間が掛かった。

「カケル、いーにおい」

「カケル、だっこ」「カララもなの」

昼飯の時間だと思い食堂へ降りて行くと、甘い匂い誘われた女達が寄って来る。

「お昼を食べて、午後のお茶の時間になったらな」

「ぬぐ…」「待てない」「なの」

「午後の部の皆が戻ったら、皆で食べような?」

妻と龍達は渋々と納得し、ラビアンの一部は自分の分が確保されている事に安堵の息を漏らした。
昼食の出来るのが何時もより早い気がするが、お茶の時間は変わらないからな?女達がチラッチラ視線を向ける中、子供達がお昼寝する迄過ごした。

「お菓子が、宝石」

「本当に…。言い得て妙の素晴らしい例えです」

タルト台に乗せられた艶々の糖蜜漬けが彼女達を詩人にさせる。

「キラキラですっ」「キラキラなの!」「んま~」

「此方の白糖の粉を振るった物もとても素晴らしい出来栄えで御座いますね。メルタールに雪が降る事は御座いませんが、まるで丘に咲く銀花のよう。果物の爽やかな香りが甘い生地と酸味のあるクリームにとても良く合って、しっとり、サクッと、そしてとろりとした三つの食感の違いが織り成す旋律に感動を禁じえません。とても美味しゅう御座いました」

手間の掛かるお菓子は評価が高いな。食べ終わってしまった事に呆然とする者、目を瞑り余韻に浸る者、ダンジョン産のとびきり美味い果物を使ってる事もあり、皆感動する程美味かったみたいだ。










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