1,275 / 1,519
嫌な感じ
しおりを挟む「次の人ー、一人ですか?」
受け付けの男に訝しまれるが、そんなに一人は珍しいか?群れてる雑魚ばかり見て目が腐ったか。
「今回は下見だからな。三万だっけ?回収だけでもしときたいぜ」
「無理せずですよ。中で共闘相手を見付けても良いですしね」
「見付けたいモンだな」
金貨三枚を鑑札に変え、列に並んだ。
カーンコーン…
鐘が鳴ると最前の者から鑑札を見せて入って行く。最初のパーティは歩き、そして続く者の歩みはジワジワと速くなり、俺は早足で中へと入った。
《感知》を使い、《結界》を纏い、全速力で階段を目指す。前を往く邪魔者を《威圧》で止めて、天井付近の壁を駆けるように飛んで行く。
階段を降りたら走らない。纏っていた《結界》を張り直し、飛んで移動する。
『リュネ!ミーネネーヴェ!何処だ!?』
ダンジョン内なら届いてる筈だ。移動しながら《念話》を飛ばし、返事を待つ。階層毎に《感知》で全体を見渡すのも忘れない。調査依頼で癖付いた習慣が地味に役に立つ。勿論こんな浅い所に居る筈も無いのだが、つい期待してしまう。
通路の脇道から出て来た敵が、《結界》にぶつかり奇声を上げる。正面に居る敵は左右の壁に押し付けられて煙に変わる。全て無視して階段を降りる。
地下十階のボス部屋に飛び込んで、部屋全体に《結界》を張る。魔法陣から出ようとした敵は《結界》と地面の板挟みとなり直ぐに煙へと変わった。下に向かう階段の扉が開くのを見て、一直線に飛んで行った。
敵が武器を持ち、魔法を唱える。それがどうした。立ち塞がる者は壁に押し付け、速度を落とさず下へ下へと降りて行き、体感で一オコンしない内に地下八十階のボス部屋となった。だが此処も殺り方は変わらない。ドロップも取らずに階段を降りる。
(これが嫌な感じか…)
降りた先で感じる何とも言えない感覚。これが龍に嫌な感じと言わしめた感覚か。此処迄の階層にリュネ達の姿は無かった。隠し部屋なんてのも無いし、隠れて居なけりゃカラクレナイとサミイは分かる。この先に居ないと辻褄が合わない。
どうしてこんな所で寝泊まりしたんだ。ボス部屋前でも良かった筈だ。そんなに帰るのが惜しかったか?そんなに真っ暗で息が詰まる部屋が好きか。サミイもカラクレナイと一緒の方が良いのかよ。
ムカムカして、苛立つ。もう、良いか。前を向いていた足が半歩下がり、体が回る。もう、帰ろう。
「帰るかよっ!!」
叫んで自分に言い聞かせた。コレ、精神攻撃だ。精神攻撃に気付けたのはアラクネ達のおかげだな。偶には会いに行くか。良し、善は急げだ。たっぷり産卵させてやろう。
「後でだってヤれっからあっ!!《結界》!!」
結界を三重に張り、嫌な感じが晴れる。リュネ達ならこの程度一枚で充分だろうに、一体どうなっているのか?とにかく先に進まなければならない。踵を戻して階段部屋の扉を開けた。
《感知》で調べ、途中の敵を磨り潰して階段を降りる。地下九十階のボス部屋迄来たが、正直キツい。《結界》が足りず、此処迄に二枚追加した。
だがそれがどうした。サミイはもっとキツい筈だ。扉を潜り、五枚の《結界》を部屋一杯に広げてボス共を押し潰し、更に一枚《結界》を増した。
少し休む。水の棒で飲水し、ダンジョンフルーツに齧り付く。俺の《結界》が魔法で無い事を悔やむ。魔力だけは無駄にあるのに、水と煉瓦と光しか出せない。ちゃんと習っておけば良かった。何が熟練度マックスだ。《結界》が一枚でも破れたら動けなくなるじゃねーか。役立たずの人の子め、こんなポンコツ使ってられっか!
「うおっ!」
突然左目に光が刺さり、怯んで目を閉じ尻もちを着いてしまった。まさか今のも精神攻撃だったのか?視力のある右目を開けると、そこには小さく光る粒が浮いていた。
敵じゃ、無い。何処かで見たような…。
「ダンジョンに、居たよな」
それは応えない。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる