女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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甘いな

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「姉さん、交代ですよ~」

 夕飯を食べ終えて、離れで監視任務をしていると、室内に《転移》して来たリュネが交代を告げる。

「リュネの方は良いのか?」

「大丈夫でぇす。さあさあ姉さん、ルビーちゃんが待ってますよ~」

「はぁ。我はお前みたいに主様と交合う事も出来ず帰ると言う訳か」

「それはそっちの勝手でーす」

「リーム、真面目な態度で仕事を手伝ってくれて本当に助かったよ。島やルドエで作物の世話もしてくれて、何時も感謝してるんだ。礼は後で必ずするから待っていてくれないか?」

リームの背中に抱き着いて、頭を肩に乗せてスリスリしながら感謝を告げるとリームは頭を撫でてくれる。

「我は主様の為に生きると誓った女だ。何時迄も待とう」

「はいはーい。姉さん、行きますよー」

「あ、俺も少し島に行く用事があるから俺が連れて行くよ」

俺からリームを引き剥がそうとするのを止められたリュネは頬っぺたを膨らませた。

「甘い物用意したいし、俺だって我が子に会いたいんだよ」

「んもう。早く帰って来てくださいねっ!」

長居したら怖いので、さっさと行って戻らねば。リームを抱き締めたままの姿で島へと《転移》した。

「リーム。あまり時間が無いから手伝って欲しい」

「何だ?子でも成せと言うなら早くせねばな」

「お菓子作りだよ」

寝ようとしている子供達を撫でたりして愛でていると、ついつい時間を忘れてしまう。後ろのリームに急かされて、厨房で材料を掻き集めたら風呂場の二階へ移動した。

「で、何を作るのだ?」

「時間無いしなぁ…」

考えながら竈や鍋、調理道具を用意して、先ずは湯を沸かしてもらう。湯が沸く間にタレ作り。黒糖に塩を少々。水を加えて鍋で煮る。沸騰して、水分がそこそこ飛んだらそれで良し。

「湯は沸いているぞ?何かする事はあるか?」

「フサナリを茹でるから吹き溢れないよう見張っててくれ」

自分毎《洗浄》したフサナリの種をザラザラーっと湯に投下。火の様子はリームに見てもらい、俺は他にも色々用意せねば…。

 茹で上がったフサナリを潰し、薄い板状に伸ばして乾燥させる。俺一人ではこの乾燥させる工程に日数が掛かってしまう所だが、今はリームが居てくれる。

「火で炙れば良いのか?」

「結局は炙るんだけど、先ず乾燥させてから炙るんだ。普通なら天日で干したりするんだけど、面倒だから中々作るに至らなかったんだよ」

「成程な。水分を無くせば良いのだな?」

試しに一枚やってもらう。魔力で冷やす要領で、水分を気化させるようだ。カチカチになった薄板を、コンロの上に浮かせて回して焼き上げる。

「直接火で炙れば良いでは無いか?」

「熱だけで炙りたいんだよね。火を当てると黒くなっちゃうから」

「…確かに手間ではあるな」

「食堂で焼いたら焼いた傍から無くなりそうだしね」

こんがりとキツネ色に焼けたボコボコの煎餅に、黒蜜ダレを塗って完成。シルケには塩っぱいお菓子は無いので甘い煎餅にしてみた。リームに再び乾かしてもらい、割って食べてみる。

ガリガリ…

ゴリッゴリッ…

「甘いな」

黒糖だからな。堅焼き煎餅のかりん糖味って感じになった。味はともかく、お貴族様にこのガリガリが好まれるかどうかは分からんな。少し工夫してみようと思う。

伸した生地に《散開》を掛けて、中身をスカスカにしてから乾かしてもらい、焼いてみる。

「今度は少し軽くなったと思う」

「どれ…」

パリパリ…

ボリボリ…

「甘いな」

同じ味付けだからな。だがさっきよりだいぶ軽くなった。《散開》を強めてもう一枚試作して、納得の軽さとなった。

「主様はその白いのの成形を、我は乾かした後焼いて、黒いのに浸して乾かす。だな?」

「頼むよ。俺はその後入れ物を作るから」

「うむ」

流れ作業で煎餅を作り、箱詰めして行った。リームに手伝ってもらって良かった。何故なら出来上がった煎餅が減らないから。



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