1,388 / 1,519
丸呑み
しおりを挟む俺が来た目的を女達に告げた。そして四人が孕んだ事も。母体の義の予定が絶たれていた三人は抱き合って喜び、涙を流す。静かにそれを聞いていた二キャンバルの四だけは小さく「そうか」と呟いた。
報告を纏めて城に上げる事となり、四人は仕事に戻ってく。
「成る可く穏便にな」
「敵対されなきゃね」
「我慢を覚えた方が良い。では、またな」
出入口前で見送って、風呂場を見遣る。
「お前誰だ?」
その女は喋らない。ピクリと体が動いたので聞いてはいるのだろうけど、浴槽に浸かって長湯を楽しんでいる。
「《隠密》系か、《阻害》系か。何方にしても丸見えだぞ?」
「……」
バレバレなのを教えると、無言の女が此方に流し目を送り、睨め付ける。視界に違和感。女の像が歪んで見える。《魔力視》に切り替えるとそれは細い割にある、女の子の姿では無かった。
「獣人か」
「竜人と呼べ、下郎」
「で?トカゲちゃんは女なのかい?それとも女の子になりたい男の子かな?」
《魔力視》を戻し、其奴の本来の姿が目に入る。ツルッとした肌には細かい鱗が光り、髪の代わりに棘が生えた人型のトカゲが湯に浸かっていた。
「命乞いは聞かん。死ぬが良い」
その瞬間、《結界》が一枚剥がされた。それと同時に《威圧》を纏わせ動きを止める。多分だが、今のはスキルでは無く単純な魔力だ。魔力を収束して打ち出したモノと思われる。部屋が寒くなるぜ。
「む…、ググッ」
「お湯が気持ち良過ぎたか?上がれないなら出してやろうか?」
「ムギッ、ングッ」
「《結界》一枚は破れたのに、それより弱い《威圧》は破れないのかい?トカゲちゃ~ん」
「んんんっ!」
「ほれほれ頑張れ。がーんっばれ、がーんっばれ」
頭に血が上り、正常な判断が付かなくなったトカゲちゃんは白目を向いて気絶した。酸欠である。《威圧》を解いて《洗脳》したら浮かせて放置した。
「カケル!どう言う事だ!?」
昼食を持って来た二クリアの九が、部屋に入って絶句した後、俺に詰め寄った。
「キレイな部屋になったろ?」
「そ、そうじゃ無い!此方のお方はどうしたのか!?」
「下郎に負けたトカゲちゃんだねぇ」
「此方のお方は竜人族、この国を治める方々のお一人だぞ」
「そうなんだ?おい起きろトカゲッ」
「ヒギッ」
《威圧》を放って起こしてやると、ジタバタと俺の方に向き直ろうと体を攀じる。《洗脳》はあんまり効いてないみたいだな。
「うお、おのれ外道っ」
「下郎から外道になっちゃった。その外道に手も足も出ない気分はどーだい?」
「カケル、止めるのだ!竜人族と事を構えるといかなカケルと言えど命が無いっ」
「此奴等が人を食料にしてても、それ言えるのか?」
「は?そんなまさか」
浮かせて放置してる時、《感知》で雌雄を確かめようとして見付けてしまったのだ。男女何方かは分からなかったが。
「予想するなら男だが、どっちなんだい?」
「糞ッ!魔法がっ何故だ!?首がっ」
「何が男なのだ!?竜人族は全て女で…まさかっ!?」
「干からびた腕かな?丸呑みしてたら俺にも分かるぜ」
《鑑定》に人の腕とあったから間違い無い。よく喉に引っ掛からなかったものだ。
「九ちゃん、もしかして、食事に出されてる肉って…もしや?」
「こっ、コレはコーラーの肉だ!繁殖も肥育も国の民がやっているっ」
良かった。けどコーラーって種の名前だったのか…。持って来てくれた食事に手を伸ばし、トカゲちゃんへの《洗脳》を強めた。
《洗脳》が効いたトカゲちゃんこと、二六七によると、元々は竜人族の住処だったこの地に人が流入し、搾取する側される側の生活が始まったのだと。で、増え過ぎる人口を脅威と見たトカゲの偉い人が男女を隔離し始めて、使い物にならなくなった食材を報奨として分配する事になったのだそうな。
「何だかこの国ヤバいな」
「そんな事を聞いて、よく食事が喉を通るな」
それはそれ、これはこれだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる