女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

文字の大きさ
1,425 / 1,519

徒手空拳

しおりを挟む


 どうにかこうにか、大人の威厳は保たれた。が、今度はタイマン張れと言う。魔装の使用は無しにして、しっかり物理で対峙した。

「ひっ、ひいっあひーっ」

「チクショーッ!やっぱ手の長さの分不利だーっ」

こっちはバット、相手は小剣。この差をフットワークと獣人特性とスキルで補って来るのだ。生きた心地がしない。真剣を使った挙句鬼ごっこさせられているとは言え、これは騎士も真面目にやらんと殺られてしまう。そこらの人の子じゃかなりキツいぞ?

「兄貴っ、次俺ー」「ああっ俺もお」「僕もー」

やめてくださいしんでしまいます。回復掛けて水飲んで、インターバルください。

「「「はーよ、はーよ」」」

「干し芋食って待て」

急かしよる。

「兄貴ってさー、心と体が一緒に動いてないよなー」

「あー、なー」

モグモグタイムの中、俺と一戦交わったダートが口を開き、ガットはその意見に乗った。

「どゆことー?」

ニットとハークは理解出来なかったのか首を傾げる。

「俺もまだまだ未熟でな。スキルに振り回されてんのさ」

「な。見てて思った」

「それなのに一発も当てられねーんだぜ?」

「あー、避ける先分かんないもんねー」「さ、さすかけー」

心も体も動こうとしてるのに、《逃げる》等移動系のスキルはノーモーションで来るから何方も付いて行けない状態なのだ。ミーネズブートキャンプを耐え切った兄弟子達はその事に気付いたようである。ハークはその場の流れに乗ったな。

息を吹き返し、ガットニットをボコにして、ハークの膝を折った所でブルランさんが帰って来た。

「カケル殿…」

「…ハ、ハークッ。お前の心はまだ折れて無い筈だ!この程度で音を上げるな!」

「爺やぁ…」

「カケル殿…」

「……加減はしたんだからねっ。治すから此処迄ーっ」

有無を言わせず《治癒》をして、はいはいそれまで。

  「爺やに仇討ちして欲しかったのにー」
聞こえているぞ?

「徒手空拳では勝ち目がありませぬし、装備を纏っては命の遣り取りになり兼ねませぬ」

「スキル無しだと俺がボコボコにされるからな?」

「「「見たいっ!」」」

流石兄弟子!俺がされたくない事を平然と言ってのけるッ。そこに痺れたり憧れたりはせんぞォ!

「ハークは、俺がボコにされて転がされるのが見たいのか…」

「頑張って!」「応援してまぁ~す」

とほほ。徒手空拳、スキル無しで対峙する事になっちまった。

「《逃げる》スキルと《並列思考》は自動発動だから」

「初めて耳にするスキルですな。では、私も《身体強化》を使わせて頂きましょう」

言わなきゃ良かった。結局スキルバトルになっちゃったよ。

「カケルさぁ~ん」

リュネ!助けてくれるのか!?

「鎧、強過ぎですよ~」

鬼悪魔リュネ。脱いだらアイツがこんにちわしちゃうでしょうが。練兵場の隅でカナブン鎧にフォームチェンジした。これなら普通の皮だからな。

「「「すげーっ!」」」「カケル何それーっ!」

「ふ、普段着にしようと思ったら、派手過ぎたんだ」

「流石は冒険者と言った所でございますな。では…」

《強化》系スキルを帯びたブルランさんが構えると、スッと前に出る。一瞬で必殺の間合いに詰められたが、左に回り込みながら避ける。手の内を探ろうとしているブルランさんだが、手の内の無い俺はローキックだ。執事服のズボンを少し汚して間合いから離れる。させじと寄って来ては拳を突き出して来るのを今度は体勢を低くして躱し、脛への前蹴り。後ろへ跳ねて間合いを取る。間合いに入って拳を繰り出すブルランさんに対し、俺は執拗な迄にローを当てて間合いを取る。加減して、加減して…。

「カケル殿、此処迄でございます」

そしてブルランさんが折れた。両脚の異変に気付いて膝を折り、負けを認めた。

「爺や!何で!?」

「陛下、恥ずかしながら、足が折れてしまいました」

「ハークも骨折って終わりだったんだ。此処迄にしような」

「兄貴の戦いってやるぶんには楽しいけど見るのはつまんねーよなー」

余計なお世話ですよ。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...