支援魔術師の俺、美女だらけの仲間と世界を救う

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第1章「最弱スキル──『支援強化』という烙印」

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アリシアと共に草原を歩き始めてから、すでに1時間が経過していた。
「もうすぐ王都が見えてくるはずです」
アリシアは前を向きながら言った。
「王都……」
蓮は期待に胸を膨らませた。
異世界の街。どんな場所なんだろう。
中世ヨーロッパのような石造りの建物が並び、市場では様々な商品が売られているのだろうか。
「神谷さんは、どちらから?」
アリシアが尋ねた。
「え、あ……えっと、遠い場所から。すごく遠い」
蓮は曖昧に答えた。
異世界から来たなんて、まだ言えない。
「そうですか。旅の冒険者なんですね」
アリシアは納得したように頷いた。
「それにしても、あの支援魔法は本当に驚きました。あれほど効果的な支援術を使える魔術師は、王国でも数えるほどしかいません」
「そ、そうなの?」
蓮は驚いた。
自分では「最弱」だと思っていたスキルが、実は珍しいものなのか。
「ええ。普通の支援魔術師は、味方の攻撃力か防御力、どちらか一つを少しだけ上げることしかできません」
アリシアは説明を続けた。
「でも、あなたの魔法は全体的な能力を底上げしてくれました。速度も、力も、集中力も──全てが向上したんです」
「へえ……」
蓮は自分のスキルを見直した。
もしかして、これって結構すごいスキルなのか?
「王都に着いたら、冒険者ギルドに登録するといいですよ。あなたほどの実力なら、すぐに上位ランクになれるはずです」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
蓮は笑顔で答えた。
少しずつ、この世界での生活に希望が見えてきた気がした。

丘を越えると、眼下に巨大な街が広がっていた。
「うわあ……」
蓮は思わず声を上げた。
石造りの高い城壁に囲まれた街。
中央には立派な城が聳え立ち、周囲には無数の建物が密集している。
街の門からは人々が出入りし、活気に満ちている。
「あれが王都グランディアです。人口は約10万人。この国で最も栄えた都市です」
アリシアは誇らしげに言った。
「すごい……本当にファンタジーの世界だ……」
蓮は感動で胸がいっぱいになった。
二人は街の門に向かって歩き出した。

「止まれ!」
門の前で、二人の衛兵が槍を交差させて道を塞いだ。
「身分証明を」
「私は王国騎士団のアリシアです」
アリシアは胸元から紋章の入った札を取り出した。
衛兵たちは札を確認し、すぐに姿勢を正した。
「アリシア様! 失礼しました!」
「構いません。それと、この方は私の客人です」
アリシアは蓮を示した。
「かしこまりました。どうぞお通りください」
衛兵たちは道を開けた。
蓮はアリシアに続いて門をくぐった。

街の中は想像以上に賑やかだった。
石畳の道の両側には店が並び、商人たちが声を張り上げて商品を売っている。
パンの香ばしい匂い。魚の生臭さ。香辛料の刺激的な香り。
「すごい活気だな……」
蓮は周囲を見回した。
人間だけでなく、獣の耳や尻尾を持った獣人、尖った耳のエルフらしき人々も歩いている。
「ここがメインストリートです。冒険者ギルドはこの先を右に曲がったところにあります」
アリシアは慣れた様子で道を進んだ。

冒険者ギルドは、街の中心部にある大きな建物だった。
三階建ての石造りで、入り口には「冒険者ギルド グランディア支部」と書かれた看板が掲げられている。
「ここです」
アリシアが扉を開けた。
中に入ると、広いホールが広がっていた。
受付カウンター、依頼掲示板、そして多くの冒険者たち。
筋骨隆々の戦士、ローブを着た魔術師、弓を背負った弓使い──様々な冒険者が集まっている。
「初めてか? ここは冒険者ギルドだ」
カウンターの奥から、豪快な笑い声が響いた。
「ギルド長のバルトです」
アリシアが紹介した。
カウンターから現れたのは、40代半ばと思われる大柄な男性。
筋肉質な体、短く刈り込まれた髪、そして豪快な髭。
「おお、アリシアじゃないか。今日はどうした?」
「この方を連れてきました。新規登録をお願いします」
「ほう、新人か」
バルトは蓮をじっくりと観察した。
「名前は?」
「神谷蓮です」
「神谷……珍しい名前だな。まあいい。職業は?」
「支援術師です」
その瞬間、周囲の空気が変わった。
「支援術師?」
「マジかよ……」
「あの最弱職業じゃん」
ざわざわと、周囲の冒険者たちが囁き始めた。
「ちょっと待って、支援術師って……」
若い男性冒険者が笑いを堪えながら言った。
「自分じゃ何もできない、ただのお荷物職業だろ?」
「そうそう。パーティに入っても足引っ張るだけ」
「攻撃もできない、防御もできない。ただ仲間をちょっと強くするだけ」
次々と嘲笑の声が上がった。
蓮の顔が青ざめた。
「最弱……職業……」
女神が言っていた意味が、今ようやく理解できた。
支援強化は、この世界では価値のないスキルなのだ。
「おい、お前ら!」
アリシアが怒りの声を上げた。
「彼の支援魔法は、普通の支援術師とは違います! 私が実際に体験したんです!」
「へえ、姫騎士様がそこまで言うなんて珍しいな」
髭を生やした中年の冒険者が皮肉っぽく言った。
「でもな、支援術師なんて結局はおまけだろ。俺たちみたいに最前線で戦えるわけじゃない」
「そうだそうだ!」
周囲が同調する。
蓮は拳を握りしめた。
悔しい。
だけど、何も言い返せない。
実際、自分は攻撃もできないし、防御もできない。
一人では何の役にも立たない。
「……すみません。俺、やっぱり登録やめます」
蓮は俯いて言った。
「神谷さん!」
アリシアが驚いて蓮を見た。
「いいんです。俺みたいな役立たずが冒険者になっても、迷惑かけるだけだから」
蓮は踵を返して、ギルドを出ようとした。
「待て」
低い声が響いた。
バルトだった。
「お前、本当にそれでいいのか?」
「……はい」
「周りの奴らに何を言われたからって、諦めるのか?」
バルトは蓮の前に立ちはだかった。
「俺は40年以上冒険者をやってきた。色々な職業の奴らを見てきた」
バルトは腕を組んだ。
「確かに、支援術師は地味だ。目立たない。華々しい活躍もできない」
「……」
「だが、本当に強いパーティには必ず優秀な支援術師がいる」
バルトは真剣な目で蓮を見た。
「攻撃力が2倍になるのと、1.5倍になるのじゃ、戦闘の結果は全く変わる。防御力が上がれば、死ぬはずだった仲間が生き残る」
「でも……」
「お前の支援魔法、アリシアから聞いた。全ステータス1.5倍、10分持続──これは相当なもんだ」
バルトは蓮の肩に手を置いた。
「自分の力を過小評価するな。そして、周りの雑音に惑わされるな」
「ギルド長……」
蓮は顔を上げた。
「冒険者ってのは、自分の道を自分で切り開く奴らだ。他人に何を言われようと、自分を信じて進む」
バルトは豪快に笑った。
「お前、本当に諦めるのか? それとも、ここで登録して、自分の力を証明するか?」
蓮は考えた。
確かに、周りに何を言われても関係ない。
自分の力を、自分で証明すればいい。
「……登録、させてください」
蓮は顔を上げて言った。
「よし! それでいい!」
バルトは満足そうに頷いた。

登録手続きはすぐに終わった。
蓮は冒険者カードを受け取った。

【冒険者カード】
名前:神谷蓮
ランク:F(最低ランク)
職業:支援術師
登録日:×月×日

「Fランクか……」
蓮は苦笑した。
まあ、初心者だから仕方ない。
「最初はみんなFランクからだ。依頼をこなして実績を積めば、すぐに上がる」
バルトは励ました。
「ありがとうございます」
「それと──」
バルトは依頼掲示板を指差した。
「明日、初心者向けの依頼がある。ゴブリン退治だ。興味あるか?」
「ゴブリン退治……」
蓮は少し考えた。
「やります」
「よし。明日の朝8時にここに来い。他の初心者たちと一緒に行ってもらう」
「わかりました」
蓮は頷いた。

ギルドを出ると、夕暮れが近づいていた。
「神谷さん、今日はどこに泊まるんですか?」
アリシアが尋ねた。
「あ、まだ決めてない……宿屋を探さないと」
「それなら、私が案内します。手頃な宿を知っていますから」
「ありがとう、助かるよ」
アリシアに連れられて、蓮は街の宿屋に向かった。
「ギルド長の言葉、心に響きました」
歩きながら、蓮はアリシアに言った。
「ええ。バルトさんは厳しいけど、本当に冒険者のことを考えてくれる人です」
「俺、頑張ってみるよ。支援術師として」
蓮は決意を新たにした。
「私も、あなたの力になります」
アリシアは微笑んだ。
「もし困ったことがあったら、いつでも言ってください。あなたは私の命の恩人ですから」
「ありがとう、アリシア」
二人は夕暮れの街を歩いていった。

宿屋「旅人の憩い」は、街の中心部から少し離れた場所にある小さな宿だった。
「ここなら一泊2シルバーです。安くて清潔ですよ」
アリシアが勧めた。
「じゃあ、ここにする」
蓮は宿の扉を開けた。
中に入ると、年配の女性が受付に座っていた。
「いらっしゃい。お泊まりかい?」
「はい。一泊お願いします」
「2シルバーだよ」
「えっと……」
蓮は焦った。
お金がない。
「あ、私が払います」
アリシアが財布を取り出した。
「いや、悪いよ……」
「気にしないでください。これもお礼のうちです」
アリシアは宿の女将に2シルバーを渡した。
「ありがとう、アリシア。絶対に返すから」
「いいんですよ。それより、明日の依頼、頑張ってくださいね」
「うん」
アリシアは微笑んで、宿を出ていった。

部屋に入ると、蓮はベッドに倒れ込んだ。
「はあ……疲れた……」
一日でいろいろなことがありすぎた。
死んで、転生して、異世界に来て、ゴブリンと戦って、街に着いて、冒険者登録して──
「でも、なんだか楽しいかも」
蓮は天井を見上げた。
元の世界では、毎日が同じことの繰り返しだった。
特に変化もなく、刺激もなく、ただ時間が過ぎていくだけ。
だけど、この世界は違う。
毎日が新しい体験。
自分の力を試せる場所。
そして──仲間ができるかもしれない。
「支援術師か……」
蓮は自分のステータスを開いた。

【ステータス】
名前:神谷蓮
レベル:1
HP:100/100
MP:50/50
スキル:支援強化 Lv.1

「確かに地味だけど……これが俺の力だ」
蓮は拳を握りしめた。
「絶対に、この力で誰かの役に立ってみせる」
窓の外には、星が輝いていた。
異世界の空は、地球の空よりもずっと美しかった。
「明日から、本当の冒険が始まるんだな……」
蓮は期待と不安を胸に、ゆっくりと目を閉じた。

翌朝、蓮は早めに目を覚ました。
「よし、行くか」
簡単な朝食を済ませ、冒険者ギルドに向かった。
ギルドに着くと、すでに数人の冒険者が集まっていた。
「おお、来たか」
バルトが声をかけた。
「おはようございます」
「今日のゴブリン退治には、お前を含めて5人で行ってもらう」
バルトは他の冒険者たちを指差した。
「こいつらも初心者だ。仲良くやってくれ」
一人は大柄な青年。剣を背負っている。
一人は小柄な少女。弓を持っている。
一人は眼鏡をかけた青年。杖を持った魔術師のようだ。
そしてもう一人は──
「よろしくな、支援術師」
皮肉っぽい笑みを浮かべた、茶髪の青年だった。
「俺はダリウス。剣士だ。まあ、足引っ張らないでくれよ」
蓮は少しムッとしたが、我慢した。
「よろしく」
「じゃあ、行くぞ!」
5人は森に向かって出発した。

森の入り口に着くと、バルトが説明した。
「ゴブリンの巣は森の奥にある。数は10匹前後だ」
「10匹……結構多いな」
ダリウスが呟いた。
「だが、お前らなら倒せる。協力してやれ」
「わかりました」
5人は森の中へと進んでいった。
木々が鬱蒼と茂り、日差しが遮られている。
湿った土の匂いと、鳥の鳴き声が聞こえる。
「あそこだ」
弓使いの少女が指差した。
木々の間に、粗末な小屋が見えた。
ゴブリンの巣だ。
「よし、作戦を立てよう」
眼鏡の魔術師が言った。
「俺が前衛で突っ込む。お前ら後ろから援護しろ」
ダリウスが勝手に決めた。
「ちょ、ちょっと待って……」
蓮が止めようとしたが──
「行くぞ!」
ダリウスは剣を抜いて突撃した。
「あ、危ない!」
だが、時すでに遅し。
ゴブリンたちが一斉に飛び出してきた。
「うわっ!」
ダリウスは慌てて剣を振るったが、数で圧倒されている。
「援護します!」
弓使いの少女が矢を放つ。
眼鏡の魔術師が火球を放つ。
だが、ゴブリンたちは素早く避けた。
「くそっ!」
ダリウスがゴブリンに斬りかかられそうになった──その時。
「支援強化!」
蓮が叫んだ。
ダリウスの体が光り輝く。
「な、何だこれ……力が漲る……!」
ダリウスの動きが一変した。
素早く、鋭く──ゴブリン一匹を一撃で倒した。
「すげえ……!」
他の冒険者たちも驚いた。
「みんなにも!」
蓮は次々と支援強化をかけた。
弓使いの少女の矢が、驚異的な速度と精度でゴブリンを射抜く。
魔術師の火球が、威力を増してゴブリンの群れを焼き払う。
「やった!」
あっという間に、ゴブリンたちは全滅した。
「す、すごい……」
ダリウスは呆然としていた。
「お前の支援魔法……マジでやばいな……」
「ありがとう」
蓮は笑った。
「俺たち、いいチームになれそうだな」
弓使いの少女が言った。
「ああ、そうだな」
眼鏡の魔術師も頷いた。
5人は笑顔で森を後にした。

ギルドに戻ると、バルトが待っていた。
「おお、全員無事か。よくやった」
「ギルド長、報告です。ゴブリン10匹、全滅させました」
ダリウスが報告した。
「よし。報酬は一人5シルバーだ」
「やった!」
5人は報酬を受け取った。
「神谷、お前の支援魔法、本物だな」
ダリウスが蓮に言った。
「おかげで助かった。ありがとな」
「いや、みんなが頑張ったからだよ」
蓮は謙遜した。
「また一緒に依頼、やろうぜ」
「ああ、もちろん」
蓮は仲間ができた喜びを感じていた。
支援術師として、これからもっと強くなろう。
そして──仲間を支え、守っていこう。
蓮の冒険は、今始まったばかりだった。
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