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第2章「王都での日々──支援術師としての成長」
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ゴブリン退治から数日が経った。
蓮は冒険者として、着実に実績を積み重ねていた。
「今日の依頼は……薬草採取か」
ギルドの依頼掲示板を眺めながら、蓮は呟いた。
最初のゴブリン退治で一緒だったダリウスたちとは、その後も何度か依頼をこなした。
だが、彼らにはそれぞれの都合があり、毎回一緒に行けるわけではない。
「一人で行ける依頼を探さないとな……」
支援術師は、基本的にパーティで動く職業だ。
一人では戦闘ができないため、ソロで行ける依頼は限られている。
「採取系なら、一人でもいけるか」
蓮は薬草採取の依頼書を手に取った。
【依頼内容】
森の奥に自生する「月光草」を10本採取
報酬:3シルバー
難易度:E
備考:魔物に注意
「よし、これにしよう」
蓮は依頼書を受付に持っていった。
「神谷さん、一人で大丈夫ですか?」
受付嬢のミラが心配そうに尋ねた。
「うん、採取だけだから」
「でも、森には魔物もいますよ」
「見つけたら逃げるから大丈夫」
蓮は笑顔で答えた。
本当は不安だった。
だが、いつまでも誰かに頼ってばかりではいられない。
「わかりました。気をつけてくださいね」
「ありがとう」
蓮はギルドを出た。
王都の外れにある森は、昼間でも薄暗かった。
木々が生い茂り、日光がほとんど届かない。
湿った土の匂いと、鳥の鳴き声だけが聞こえる。
「月光草は……確か青白く光る草だったな」
蓮は依頼書の説明を思い出しながら、森の奥へと進んだ。
足元には苔が生え、時折小動物が横切っていく。
「平和だな……」
そう思った矢間──
ガサッ!
茂みが揺れた。
「っ!」
蓮は反射的に身構えた。
茂みから現れたのは──
スライム。
青いゼリー状の魔物。
体長は約30センチ。ぷるぷると震えながら、蓮の方へと近づいてくる。
「スライムか……」
蓮は少し安心した。
スライムは最弱クラスの魔物だ。
動きも遅く、攻撃力も低い。
「でも、俺は攻撃手段がないからな……」
蓮はゆっくりと後ろに下がった。
スライムはゆっくりと追いかけてくる。
「逃げるしかない……!」
蓮は走り出した。
幸い、スライムは遅い。
すぐに距離を離すことができた。
「はあ……はあ……危なかった……」
蓮は木に寄りかかって息を整えた。
「やっぱり一人は厳しいな……」
自分の無力さを痛感する。
だが、諦めるわけにはいかない。
「月光草を探さないと」
蓮は気を取り直して、再び森の奥へと進んだ。
30分ほど歩くと、開けた場所に出た。
そこには──
青白く光る草が、数本生えていた。
「あれが月光草!」
蓮は駆け寄った。
月光草は、その名の通り月の光のように淡く輝いていた。
葉は細長く、根元から柔らかな光を放っている。
「よし、採取しよう」
蓮は腰に下げていた小袋を取り出し、慎重に月光草を引き抜いた。
一本、二本、三本──
「あと7本……」
周囲を見回すと、少し離れた場所にも月光草が生えていた。
蓮は次々と採取していった。
「よし、これで10本!」
目標を達成し、蓮は満足そうに頷いた。
「さて、戻るか──」
その時だった。
グルルルル……
低い唸り声が響いた。
「え……?」
蓮は振り返った。
そこには──
灰色の狼が、牙を剥いて立っていた。
「う、嘘だろ……ウルフ……!」
ウルフは、スライムとは比べ物にならない強さの魔物だ。
素早く、牙と爪で攻撃してくる。
「やばい……!」
蓮は後ずさった。
ウルフは低く唸りながら、じりじりと距離を詰めてくる。
「逃げないと……!」
蓮は走り出した。
だが──
ガウッ!
ウルフは一瞬で距離を詰め、蓮に飛びかかってきた。
「うわあっ!」
蓮は咄嗟に横に転がった。
ウルフの牙が、蓮のジャケットを掠めた。
「くそっ……!」
立ち上がろうとするが、足が震えて力が入らない。
恐怖で体が動かない。
ウルフが再び飛びかかろうとした──その時。
──炎の矢が、ウルフの脇腹に突き刺さった。
「ガウッ!」
ウルフは悲鳴を上げて飛び退いた。
「誰……!?」
蓮は声のする方を見た。
木々の間から、一人の少女が現れた。
長い黒髪。
整った顔立ち。
そして、冷たい印象を与える青い瞳。
彼女は杖を構え、再び魔法を唱えた。
「フレイムアロー」
炎の矢が次々とウルフに襲いかかる。
「ガウッ! ガウッ!」
ウルフは炎に包まれ、最後は地面に倒れ込んだ。
「…………」
少女は無言で杖を下ろした。
「た、助かった……ありがとう……」
蓮は立ち上がり、少女に近づいた。
「あなたは……?」
少女は蓮を一瞥した。
その瞳は冷たく、感情が読み取れない。
「……リリア。魔法学院の生徒」
「魔法学院……」
「あなた、一人で森に入るなんて無謀よ。支援術師なら尚更」
リリアの言葉は冷たかった。
「え、支援術師ってわかるの?」
「見ればわかるわ。武器も持たず、魔力の流れも支援系。初心者丸出し」
「う……」
図星を突かれ、蓮は黙り込んだ。
「次からは仲間と来なさい。一人で来るのは自殺行為よ」
リリアはそう言うと、踵を返して歩き出した。
「あ、待って!」
蓮は慌てて追いかけた。
「何?」
「お礼がしたい。命を救ってもらったから」
「必要ないわ」
「でも……」
「私は通りかかっただけ。お礼なんて求めてない」
リリアは冷たく言い放った。
「それに、あなたみたいな弱い冒険者を助けるのは当然のこと。魔術師としての義務よ」
「弱い……」
蓮は胸が痛んだ。
「事実でしょう? あなたは支援術師。一人では何もできない」
リリアは容赦なく言った。
「支援術師なんて、結局はパーティのおまけ。主役になれない、脇役職業」
「……」
蓮は何も言い返せなかった。
リリアの言葉は、周囲の冒険者たちが言っていたことと同じだった。
「じゃあね。次は死なないように気をつけなさい」
リリアはそう言い残して、森の奥へと消えていった。
蓮は一人、その場に取り残された。
「弱い……か」
拳を握りしめる。
確かに、自分は弱い。
一人では魔物も倒せない。
誰かに助けてもらわなければ、死んでいた。
「でも……」
蓮は顔を上げた。
「俺には支援の力がある。仲間を強くする力がある」
それは確かに地味で、目立たない力だ。
だが──
「仲間がいれば、俺は役に立てる」
蓮は決意を新たにした。
もっと強くなろう。
もっと仲間を支えられるように。
そして──いつか、リリアのような人にも認めてもらえるように。
「帰ろう」
蓮は月光草が入った袋を抱え、森を後にした。
ギルドに戻ると、ミラが心配そうに駆け寄ってきた。
「神谷さん! 無事だったんですね!」
「うん、ただいま」
「怪我は……あ、服が破れてる!」
ミラは蓮のジャケットの裂け目に気づいた。
「ウルフに襲われたんだ。でも、魔術師の人に助けてもらった」
「そうだったんですか……本当に危なかったですね」
ミラは安堵の息を吐いた。
「月光草、ちゃんと採取できました」
蓮は袋を差し出した。
「ありがとうございます。確認しますね」
ミラは月光草を数えた。
「10本、確かに。依頼達成です」
彼女は報酬の3シルバーを蓮に渡した。
「お疲れ様でした」
「ありがとう」
蓮は受け取った。
宿に戻ると、蓮はベッドに倒れ込んだ。
「はあ……疲れた……」
今日は本当に危なかった。
リリアがいなければ、間違いなく死んでいた。
「リリア……か」
冷たい態度だったが、彼女は確実に強い魔術師だった。
あの炎の魔法は、見事だった。
「いつか、あの人とパーティを組めたらな……」
そんなことを考えながら、蓮はステータスを開いた。
【ステータス】
名前:神谷蓮
レベル:3(前回から+2)
HP:120/120
MP:60/60
スキル:支援強化 Lv.2(前回から+1)
「レベル上がってる!」
依頼をこなすことで、経験値が貯まっていたようだ。
「支援強化もLv.2に……」
スキルの詳細を確認する。
【支援強化 Lv.2】
・強化倍率:全ステータス1.7倍(前回1.5倍)
・持続時間:15分(前回10分)
・対象:視界内の味方一人
・消費MP:10
「おお、強化倍率が上がってる!」
蓮は嬉しくなった。
レベルが上がれば、スキルも強くなる。
もっと強くなれば、もっと仲間を支えられる。
「よし、明日からもっと頑張ろう」
蓮は拳を握りしめた。
翌日、蓮は再びギルドに向かった。
「おはよう、神谷」
声をかけてきたのは、ダリウスだった。
「おはよう、ダリウス」
「今日、依頼あるんだけど、一緒に来ないか?」
「もちろん」
「よし。じゃあ準備してくれ」
ダリウスと共に、蓮は新しい依頼に向かった。
森の中、蓮たちは大型の魔物──オーガと対峙していた。
体長3メートル、筋骨隆々の体、凶暴な顔つき。
「でけえ……」
ダリウスが呟いた。
「でも、やるしかない」
蓮は支援強化を発動した。
「支援強化!」
ダリウスの体が光り輝く。
「来た! この力!」
ダリウスは剣を構え、オーガに突撃した。
「はあっ!」
剣がオーガの腕に深く食い込む。
「ガアアア!」
オーガが怒りの咆哮を上げた。
「もう一発!」
ダリウスは連続で斬りかかった。
支援強化の効果で、彼の動きは驚異的に速く、鋭い。
「とどめだ!」
最後の一撃が、オーガの首を刎ねた。
ドサッ。
オーガが倒れる。
「やった!」
ダリウスは喜びの声を上げた。
「神谷、お前の支援マジで最高だわ!」
「いや、ダリウスが強いから」
「いやいや、お前がいなきゃ無理だった」
ダリウスは蓮の肩を叩いた。
「俺たち、いいコンビだな」
「ああ」
蓮は笑顔で頷いた。
ギルドに戻ると、バルトが待っていた。
「おお、オーガ討伐か。よくやった」
「ありがとうございます」
「神谷、お前のランク、上げといたぞ」
「え、本当ですか!?」
蓮は驚いた。
「ああ。実績を見て、Eランクに昇格だ」
「やった!」
蓮は冒険者カードを確認した。
【冒険者カード】
名前:神谷蓮
ランク:E(前回F)
職業:支援術師
「おめでとう、神谷」
ダリウスが祝福した。
「ありがとう」
蓮は嬉しさで胸がいっぱいになった。
着実に、成長している。
「これからも頑張るぞ」
蓮は拳を握りしめた。
その夜、蓮は宿の窓から星空を眺めていた。
「異世界に来て、もう二週間か……」
あっという間だった。
だが、充実していた。
毎日が新しい発見と挑戦の連続。
「もっと強くなりたい」
蓮は心の中で呟いた。
「もっと、仲間を支えられるように」
そして──
「いつか、リリアみたいな強い人にも認めてもらえるように」
蓮は決意を新たにした。
支援術師として。
冒険者として。
もっと、もっと強くなる。
窓の外には、満月が輝いていた。
数日後、ギルドの掲示板に新しい依頼が貼られた。
【緊急依頼】
獣人の村が魔物に襲撃されている
至急、救援を求む
報酬:20シルバー
難易度:C
「獣人の村……」
蓮はその依頼書を見つめた。
Cランクの依頼は、まだ自分には早い。
だが──
「困っている人を助けたい」
蓮は依頼書を手に取った。
これが、後に運命的な出会いとなることを、蓮はまだ知らない。
獣人少女・セラとの出会いが、すぐそこまで迫っていた。
蓮は冒険者として、着実に実績を積み重ねていた。
「今日の依頼は……薬草採取か」
ギルドの依頼掲示板を眺めながら、蓮は呟いた。
最初のゴブリン退治で一緒だったダリウスたちとは、その後も何度か依頼をこなした。
だが、彼らにはそれぞれの都合があり、毎回一緒に行けるわけではない。
「一人で行ける依頼を探さないとな……」
支援術師は、基本的にパーティで動く職業だ。
一人では戦闘ができないため、ソロで行ける依頼は限られている。
「採取系なら、一人でもいけるか」
蓮は薬草採取の依頼書を手に取った。
【依頼内容】
森の奥に自生する「月光草」を10本採取
報酬:3シルバー
難易度:E
備考:魔物に注意
「よし、これにしよう」
蓮は依頼書を受付に持っていった。
「神谷さん、一人で大丈夫ですか?」
受付嬢のミラが心配そうに尋ねた。
「うん、採取だけだから」
「でも、森には魔物もいますよ」
「見つけたら逃げるから大丈夫」
蓮は笑顔で答えた。
本当は不安だった。
だが、いつまでも誰かに頼ってばかりではいられない。
「わかりました。気をつけてくださいね」
「ありがとう」
蓮はギルドを出た。
王都の外れにある森は、昼間でも薄暗かった。
木々が生い茂り、日光がほとんど届かない。
湿った土の匂いと、鳥の鳴き声だけが聞こえる。
「月光草は……確か青白く光る草だったな」
蓮は依頼書の説明を思い出しながら、森の奥へと進んだ。
足元には苔が生え、時折小動物が横切っていく。
「平和だな……」
そう思った矢間──
ガサッ!
茂みが揺れた。
「っ!」
蓮は反射的に身構えた。
茂みから現れたのは──
スライム。
青いゼリー状の魔物。
体長は約30センチ。ぷるぷると震えながら、蓮の方へと近づいてくる。
「スライムか……」
蓮は少し安心した。
スライムは最弱クラスの魔物だ。
動きも遅く、攻撃力も低い。
「でも、俺は攻撃手段がないからな……」
蓮はゆっくりと後ろに下がった。
スライムはゆっくりと追いかけてくる。
「逃げるしかない……!」
蓮は走り出した。
幸い、スライムは遅い。
すぐに距離を離すことができた。
「はあ……はあ……危なかった……」
蓮は木に寄りかかって息を整えた。
「やっぱり一人は厳しいな……」
自分の無力さを痛感する。
だが、諦めるわけにはいかない。
「月光草を探さないと」
蓮は気を取り直して、再び森の奥へと進んだ。
30分ほど歩くと、開けた場所に出た。
そこには──
青白く光る草が、数本生えていた。
「あれが月光草!」
蓮は駆け寄った。
月光草は、その名の通り月の光のように淡く輝いていた。
葉は細長く、根元から柔らかな光を放っている。
「よし、採取しよう」
蓮は腰に下げていた小袋を取り出し、慎重に月光草を引き抜いた。
一本、二本、三本──
「あと7本……」
周囲を見回すと、少し離れた場所にも月光草が生えていた。
蓮は次々と採取していった。
「よし、これで10本!」
目標を達成し、蓮は満足そうに頷いた。
「さて、戻るか──」
その時だった。
グルルルル……
低い唸り声が響いた。
「え……?」
蓮は振り返った。
そこには──
灰色の狼が、牙を剥いて立っていた。
「う、嘘だろ……ウルフ……!」
ウルフは、スライムとは比べ物にならない強さの魔物だ。
素早く、牙と爪で攻撃してくる。
「やばい……!」
蓮は後ずさった。
ウルフは低く唸りながら、じりじりと距離を詰めてくる。
「逃げないと……!」
蓮は走り出した。
だが──
ガウッ!
ウルフは一瞬で距離を詰め、蓮に飛びかかってきた。
「うわあっ!」
蓮は咄嗟に横に転がった。
ウルフの牙が、蓮のジャケットを掠めた。
「くそっ……!」
立ち上がろうとするが、足が震えて力が入らない。
恐怖で体が動かない。
ウルフが再び飛びかかろうとした──その時。
──炎の矢が、ウルフの脇腹に突き刺さった。
「ガウッ!」
ウルフは悲鳴を上げて飛び退いた。
「誰……!?」
蓮は声のする方を見た。
木々の間から、一人の少女が現れた。
長い黒髪。
整った顔立ち。
そして、冷たい印象を与える青い瞳。
彼女は杖を構え、再び魔法を唱えた。
「フレイムアロー」
炎の矢が次々とウルフに襲いかかる。
「ガウッ! ガウッ!」
ウルフは炎に包まれ、最後は地面に倒れ込んだ。
「…………」
少女は無言で杖を下ろした。
「た、助かった……ありがとう……」
蓮は立ち上がり、少女に近づいた。
「あなたは……?」
少女は蓮を一瞥した。
その瞳は冷たく、感情が読み取れない。
「……リリア。魔法学院の生徒」
「魔法学院……」
「あなた、一人で森に入るなんて無謀よ。支援術師なら尚更」
リリアの言葉は冷たかった。
「え、支援術師ってわかるの?」
「見ればわかるわ。武器も持たず、魔力の流れも支援系。初心者丸出し」
「う……」
図星を突かれ、蓮は黙り込んだ。
「次からは仲間と来なさい。一人で来るのは自殺行為よ」
リリアはそう言うと、踵を返して歩き出した。
「あ、待って!」
蓮は慌てて追いかけた。
「何?」
「お礼がしたい。命を救ってもらったから」
「必要ないわ」
「でも……」
「私は通りかかっただけ。お礼なんて求めてない」
リリアは冷たく言い放った。
「それに、あなたみたいな弱い冒険者を助けるのは当然のこと。魔術師としての義務よ」
「弱い……」
蓮は胸が痛んだ。
「事実でしょう? あなたは支援術師。一人では何もできない」
リリアは容赦なく言った。
「支援術師なんて、結局はパーティのおまけ。主役になれない、脇役職業」
「……」
蓮は何も言い返せなかった。
リリアの言葉は、周囲の冒険者たちが言っていたことと同じだった。
「じゃあね。次は死なないように気をつけなさい」
リリアはそう言い残して、森の奥へと消えていった。
蓮は一人、その場に取り残された。
「弱い……か」
拳を握りしめる。
確かに、自分は弱い。
一人では魔物も倒せない。
誰かに助けてもらわなければ、死んでいた。
「でも……」
蓮は顔を上げた。
「俺には支援の力がある。仲間を強くする力がある」
それは確かに地味で、目立たない力だ。
だが──
「仲間がいれば、俺は役に立てる」
蓮は決意を新たにした。
もっと強くなろう。
もっと仲間を支えられるように。
そして──いつか、リリアのような人にも認めてもらえるように。
「帰ろう」
蓮は月光草が入った袋を抱え、森を後にした。
ギルドに戻ると、ミラが心配そうに駆け寄ってきた。
「神谷さん! 無事だったんですね!」
「うん、ただいま」
「怪我は……あ、服が破れてる!」
ミラは蓮のジャケットの裂け目に気づいた。
「ウルフに襲われたんだ。でも、魔術師の人に助けてもらった」
「そうだったんですか……本当に危なかったですね」
ミラは安堵の息を吐いた。
「月光草、ちゃんと採取できました」
蓮は袋を差し出した。
「ありがとうございます。確認しますね」
ミラは月光草を数えた。
「10本、確かに。依頼達成です」
彼女は報酬の3シルバーを蓮に渡した。
「お疲れ様でした」
「ありがとう」
蓮は受け取った。
宿に戻ると、蓮はベッドに倒れ込んだ。
「はあ……疲れた……」
今日は本当に危なかった。
リリアがいなければ、間違いなく死んでいた。
「リリア……か」
冷たい態度だったが、彼女は確実に強い魔術師だった。
あの炎の魔法は、見事だった。
「いつか、あの人とパーティを組めたらな……」
そんなことを考えながら、蓮はステータスを開いた。
【ステータス】
名前:神谷蓮
レベル:3(前回から+2)
HP:120/120
MP:60/60
スキル:支援強化 Lv.2(前回から+1)
「レベル上がってる!」
依頼をこなすことで、経験値が貯まっていたようだ。
「支援強化もLv.2に……」
スキルの詳細を確認する。
【支援強化 Lv.2】
・強化倍率:全ステータス1.7倍(前回1.5倍)
・持続時間:15分(前回10分)
・対象:視界内の味方一人
・消費MP:10
「おお、強化倍率が上がってる!」
蓮は嬉しくなった。
レベルが上がれば、スキルも強くなる。
もっと強くなれば、もっと仲間を支えられる。
「よし、明日からもっと頑張ろう」
蓮は拳を握りしめた。
翌日、蓮は再びギルドに向かった。
「おはよう、神谷」
声をかけてきたのは、ダリウスだった。
「おはよう、ダリウス」
「今日、依頼あるんだけど、一緒に来ないか?」
「もちろん」
「よし。じゃあ準備してくれ」
ダリウスと共に、蓮は新しい依頼に向かった。
森の中、蓮たちは大型の魔物──オーガと対峙していた。
体長3メートル、筋骨隆々の体、凶暴な顔つき。
「でけえ……」
ダリウスが呟いた。
「でも、やるしかない」
蓮は支援強化を発動した。
「支援強化!」
ダリウスの体が光り輝く。
「来た! この力!」
ダリウスは剣を構え、オーガに突撃した。
「はあっ!」
剣がオーガの腕に深く食い込む。
「ガアアア!」
オーガが怒りの咆哮を上げた。
「もう一発!」
ダリウスは連続で斬りかかった。
支援強化の効果で、彼の動きは驚異的に速く、鋭い。
「とどめだ!」
最後の一撃が、オーガの首を刎ねた。
ドサッ。
オーガが倒れる。
「やった!」
ダリウスは喜びの声を上げた。
「神谷、お前の支援マジで最高だわ!」
「いや、ダリウスが強いから」
「いやいや、お前がいなきゃ無理だった」
ダリウスは蓮の肩を叩いた。
「俺たち、いいコンビだな」
「ああ」
蓮は笑顔で頷いた。
ギルドに戻ると、バルトが待っていた。
「おお、オーガ討伐か。よくやった」
「ありがとうございます」
「神谷、お前のランク、上げといたぞ」
「え、本当ですか!?」
蓮は驚いた。
「ああ。実績を見て、Eランクに昇格だ」
「やった!」
蓮は冒険者カードを確認した。
【冒険者カード】
名前:神谷蓮
ランク:E(前回F)
職業:支援術師
「おめでとう、神谷」
ダリウスが祝福した。
「ありがとう」
蓮は嬉しさで胸がいっぱいになった。
着実に、成長している。
「これからも頑張るぞ」
蓮は拳を握りしめた。
その夜、蓮は宿の窓から星空を眺めていた。
「異世界に来て、もう二週間か……」
あっという間だった。
だが、充実していた。
毎日が新しい発見と挑戦の連続。
「もっと強くなりたい」
蓮は心の中で呟いた。
「もっと、仲間を支えられるように」
そして──
「いつか、リリアみたいな強い人にも認めてもらえるように」
蓮は決意を新たにした。
支援術師として。
冒険者として。
もっと、もっと強くなる。
窓の外には、満月が輝いていた。
数日後、ギルドの掲示板に新しい依頼が貼られた。
【緊急依頼】
獣人の村が魔物に襲撃されている
至急、救援を求む
報酬:20シルバー
難易度:C
「獣人の村……」
蓮はその依頼書を見つめた。
Cランクの依頼は、まだ自分には早い。
だが──
「困っている人を助けたい」
蓮は依頼書を手に取った。
これが、後に運命的な出会いとなることを、蓮はまだ知らない。
獣人少女・セラとの出会いが、すぐそこまで迫っていた。
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以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
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