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第3章「姫騎士との絆──共闘の始まり」
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獣人の村への救援依頼を受けて数日が経った。
蓮はその依頼を受けようと何度もギルドを訪れたが、バルトに止められていた。
「神谷、お前にはまだ早い」
「でも、困っている人がいるんです!」
「気持ちはわかる。だが、Cランクの依頼は危険だ。お前はまだEランク。経験が足りない」
バルトの言葉は厳しかったが、的確だった。
「もう少し実績を積め。それから考えろ」
「……わかりました」
蓮は渋々引き下がった。
その日の午後、蓮は街の広場で休憩していた。
噴水の縁に腰掛け、パンを齧りながら、ぼんやりと人々の往来を眺めている。
「やっぱり、あの依頼が気になるな……」
獣人の村は魔物に襲われている。
一刻も早く助けに行かなければ、村人たちが危険にさらされる。
「でも、俺一人じゃ無理だ……」
支援術師は一人では戦えない。
仲間が必要だ。
「誰か、一緒に行ってくれる人がいれば……」
そう考えていた時だった。
「神谷さん?」
聞き覚えのある声が響いた。
蓮が振り向くと──
金色の髪を揺らしたアリシアが、そこに立っていた。
「アリシア!」
「久しぶりですね」
アリシアは微笑んだ。
あれから二週間。
彼女とは一度も会っていなかった。
「騎士団の任務で忙しかったんですか?」
「ええ。国境付近の巡回任務がありまして」
アリシアは隣に座った。
「神谷さんは、冒険者として順調ですか?」
「まあ、なんとか。Eランクになりました」
「それは素晴らしい。あれから二週間でEランクとは、早い成長です」
「ダリウスたちのおかげですよ」
蓮は謙遜した。
「そういえば……」
アリシアは掲示板の方を見た。
「獣人の村の救援依頼、まだ誰も受けていないようですね」
「え、知ってるんですか?」
「ええ。騎士団でも話題になっています」
アリシアは真剣な表情になった。
「あの村は、王国の辺境にある小さな集落です。最近、魔物の活動が活発化していて……」
「やっぱり、危険なんですね」
「ええ。だからこそ、早急に対処しなければなりません」
アリシアは立ち上がった。
「実は、私も個人的に救援に向かおうと思っていました」
「え、一人で?」
「騎士団は今、人手不足で……正式な派遣は難しいんです」
アリシアは悔しそうに拳を握った。
「だから、私が休暇を使って行こうと」
「危険すぎます!」
蓮は立ち上がった。
「一人で行くなんて……」
「でも、放っておけません」
アリシアの瞳には強い決意が宿っていた。
「騎士として、弱き者を守るのが私の使命です」
「……じゃあ、俺も一緒に行きます」
蓮は即座に答えた。
「え?」
「アリシアが一人で行くなら、俺も行きます。二人なら、少しは安全でしょう」
「でも、危険ですよ……」
「アリシア一人で行く方が危険です」
蓮は真剣な目でアリシアを見た。
「それに、俺の支援魔法があれば、アリシアの力をもっと引き出せる」
「……本当に、いいんですか?」
「もちろん」
蓮は笑顔で頷いた。
「俺も、困っている人を助けたいから」
アリシアは少し迷ったが、やがて微笑んだ。
「ありがとうございます、神谷さん」
「じゃあ、明日の朝、出発しましょう」
「はい」
二人は固く握手を交わした。
翌朝、蓮とアリシアは王都の門を出た。
「獣人の村まではどれくらいかかるんですか?」
「馬車で半日ほどです」
「結構遠いんですね」
「ええ。辺境の村ですから」
二人は街道を歩いていった。
幸い、商人の馬車が通りかかり、乗せてもらうことができた。
馬車に揺られながら、蓮はアリシアに尋ねた。
「アリシアって、なんで騎士になったんですか?」
「……父の影響ですね」
アリシアは遠くを見つめた。
「私の父は、王国騎士団の団長でした」
「団長!?」
「ええ。とても立派な人でした」
アリシアは静かに語った。
「父は常々言っていました。『強さとは、弱き者を守るためにある』と」
「素敵な言葉ですね」
「父は、その言葉通りに生きました。多くの人々を救い、慕われていました」
アリシアの表情が少し曇った。
「でも……三年前、魔王軍との戦いで戦死しました」
「……そうだったんですか」
蓮は言葉を失った。
「父の遺志を継ぎ、私も騎士になりました」
アリシアは剣の柄を握った。
「いつか父のように、多くの人を守れる騎士になりたい」
「アリシアなら、きっとなれますよ」
蓮は励ました。
「ありがとうございます」
アリシアは微笑んだ。
夕方近く、馬車は獣人の村に到着した。
「ここが……」
蓮は村を見回した。
木造の家が十数軒、森の中にひっそりと佇んでいる。
だが──
村のあちこちが破壊され、炎で焼け焦げていた。
「ひどい……」
アリシアは顔を曇らせた。
「助けてー!」
子供の声が聞こえた。
「あっちです!」
二人は声のする方へ走った。
村の中心部では──
巨大な魔物が、村人たちを襲っていた。
体長4メートルほどの、トカゲのような魔物。
リザードマンよりも巨大で、鋭い牙と爪を持っている。
「ドラゴンリザード……!」
アリシアは剣を抜いた。
「Cランクの魔物です!」
「っ!」
蓮は息を呑んだ。
村人たちは逃げ惑い、子供たちが泣き叫んでいる。
「神谷さん、支援を!」
「わかった!」
蓮は支援強化を発動した。
「支援強化!」
アリシアの体が黄金色の光に包まれる。
「行きます!」
アリシアは地を蹴り、ドラゴンリザードに突撃した。
「はあっ!」
剣がドラゴンリザードの鱗に食い込む──が、浅い。
「硬い……!」
「ガアアア!」
ドラゴンリザードが尾を振るった。
アリシアは咄嗟に剣で受け止めたが、衝撃で数メートル吹き飛ばされた。
「アリシア!」
「大丈夫……です……」
アリシアは立ち上がった。
だが、ダメージは大きい。
「このままじゃ……」
蓮は焦った。
支援強化だけでは足りない。
もっと強力な支援が必要だ。
「もっと……もっと強く……!」
蓮は必死に考えた。
その時──
蓮の体が、淡く光り始めた。
「え……?」
視界にメッセージが浮かび上がる。
【新スキル習得】
スキル名:バーサーク・ブースト
効果:対象の攻撃力と速度を2倍に強化。ただし防御力が半減。
持続時間:5分
消費MP:30
「新しいスキル……!?」
蓮は驚いた。
だが、今はそれを考えている場合ではない。
「アリシア!」
蓮は叫んだ。
「バーサーク・ブースト!」
アリシアの体が、先ほどとは異なる赤い光に包まれた。
「この力……!」
アリシアは自分の体に驚いた。
体中に力が漲る。
視界がクリアになり、全ての動きが遅く見える。
「これなら……!」
アリシアは再びドラゴンリザードに突撃した。
今度は──
まるで稲妻のような速さで、ドラゴンリザードの首を刎ねた。
「ガ……ア……」
ドラゴンリザードは倒れた。
「やった……!」
だが、次の瞬間──
森の奥から、もう一匹のドラゴンリザードが現れた。
「嘘……まだいるの……!?」
アリシアは疲労で膝をついた。
バーサーク・ブーストの効果で、体力を激しく消耗している。
「くそっ……!」
蓮は焦った。
MPはもう残り少ない。
「どうすれば……」
その時──
森の反対側から、炎の魔法が飛んできた。
「フレイムランス!」
巨大な炎の槍が、二匹目のドラゴンリザードを貫いた。
「ガアアアッ!」
ドラゴンリザードは炎に包まれて倒れた。
「誰……!?」
蓮が振り向くと──
長い黒髪の少女、リリアが立っていた。
「あなたたち、無茶しすぎよ」
リリアは冷たい声で言った。
「リリア……!」
「たまたま通りかかっただけ。勘違いしないで」
リリアは杖を下ろした。
「助かりました……」
アリシアは安堵の息を吐いた。
「村の人たちは?」
「大丈夫みたいです」
蓮は周囲を見回した。
村人たちは怯えているが、怪我人は少ないようだ。
「良かった……」
夜、村の集会所で、村長が蓮たちに礼を述べた。
「本当にありがとうございました。あなた方のおかげで、村は救われました」
村長は獣人の老人で、大きな耳と尻尾を持っていた。
「いえ、当然のことです」
アリシアは微笑んだ。
「でも、なぜドラゴンリザードがこんなところに……」
「実は……最近、森の奥で異変が起きているんです」
村長は深刻な表情で言った。
「魔物たちが、何かに怯えて森から逃げてきている」
「何かに怯えて……?」
「ええ。もっと強大な何かが、森の奥にいるのかもしれません」
「……」
蓮とアリシアは顔を見合わせた。
「調査が必要ですね」
リリアが口を開いた。
「え、リリアも?」
「私も気になるのよ。魔法学院の課題で、魔物の生態を調べているところだったから」
リリアは腕を組んだ。
「明日、森の奥を調査しましょう」
「わかりました」
アリシアが頷いた。
「じゃあ、三人で行きましょう」
「三人……か」
蓮は少し嬉しくなった。
アリシアとリリア。
強力な二人と共に行動できる。
「よろしくお願いします」
蓮は二人に頭を下げた。
その夜、蓮は村の宿舎で休んでいた。
「新しいスキルか……」
蓮はステータスを確認した。
【ステータス】
名前:神谷蓮
レベル:5
HP:140/140
MP:80/80
スキル:
- 支援強化 Lv.2
- バーサーク・ブースト Lv.1(新規)
「レベルも上がってる……」
戦闘で経験値を得たようだ。
「もっと強くならないと」
蓮は拳を握りしめた。
アリシアやリリアのような強い仲間を、もっと支えられるように。
「明日から、本格的な冒険が始まるんだな……」
蓮は期待と不安を胸に、眠りについた。
翌朝、三人は森の奥へと向かった。
木々が鬱蒼と茂り、日光がほとんど届かない。
不気味な静けさが漂っている。
「気をつけて。魔物がいつ現れてもおかしくないわ」
リリアが警告した。
「はい」
アリシアは剣を構えた。
蓮は二人の後ろを歩きながら、周囲を警戒した。
しばらく進むと──
巨大な洞窟が現れた。
「あれは……」
「洞窟……何かいそうね」
リリアは杖を構えた。
「入りましょう」
アリシアが先頭に立った。
三人は洞窟の中へと進んでいった。
洞窟の中は暗く、湿っていた。
壁には奇妙な紋様が刻まれている。
「これは……古代文字?」
リリアが壁を調べた。
「読めるんですか?」
「少しだけ。これは……封印の術式ね」
「封印?」
「何かを封じるための魔法陣よ」
リリアは眉をひそめた。
「まさか……」
その時──
洞窟の奥から、強大な魔力が溢れ出した。
「この魔力……!」
アリシアは身構えた。
「ただの魔物じゃない……」
リリアは冷や汗を流した。
奥から、巨大な影が近づいてくる。
それは──古代の魔獣、ベヒモスだった。
体長10メートル。
全身が岩のような硬い鱗で覆われ、巨大な牙と爪を持つ。
「ベヒモス……Aランクの魔物……!」
アリシアは驚愕した。
「逃げるわよ!」
リリアが叫んだ。
だが──
ベヒモスは一瞬で洞窟の出口を塞いだ。
「逃げ道が……!」
「戦うしかない……!」
アリシアは剣を構えた。
「神谷さん、支援を!」
「わかった!」
蓮は支援強化を二人にかけた。
「支援強化!」
「バーサーク・ブースト!」
アリシアとリリアの体が光り輝く。
「行くわよ!」
リリアが先制攻撃を放った。
「フレイムストーム!」
巨大な炎の竜巻がベヒモスを襲う。
だが──
ベヒモスは炎を物ともせず、突進してきた。
「うっ……!」
アリシアが剣で受け止めるが、衝撃で吹き飛ばされた。
「アリシア!」
「大丈夫……です……」
アリシアは立ち上がったが、腕が震えている。
「このままじゃ……」
蓮は焦った。
支援だけでは足りない。
「もっと……もっと強力な支援を……!」
蓮は必死に祈った。
その時──
蓮の体が、激しく光り始めた。
視界にメッセージが浮かび上がる。
【スキル進化】
支援強化 Lv.2 → グランド・サポート Lv.1
効果:対象全員の全能力を2倍に強化
持続時間:10分
消費MP:50
「全員を……2倍に……!」
蓮は叫んだ。
「グランド・サポート!」
洞窟全体が、眩い光に包まれた。
アリシアとリリアの体が、強烈な光に包まれる。
「この力……!」
「信じられない……!」
二人は驚愕した。
体中に、これまでにない力が漲る。
「行ける……!」
アリシアは剣を振るった。
「はあああっ!」
剣撃が、ベヒモスの鱗を切り裂いた。
「フレイムエクスプロージョン!」
リリアの最大魔法が、ベヒモスを直撃した。
ドオオオンッ!
洞窟が揺れる。
ベヒモスは倒れた。
「やった……!」
だが、蓮は膝をついた。
「神谷さん!」
アリシアが駆け寄った。
「大丈夫……MPを使いすぎただけ……」
蓮は笑顔で答えた。
「でも、勝てた……」
「ええ。あなたのおかげです」
アリシアは蓮を抱き支えた。
「……認めるわ」
リリアが近づいてきた。
「あなたの支援魔法、本物ね」
「リリア……」
「私が間違っていたわ。支援術師だからって、弱いわけじゃない」
リリアは小さく微笑んだ。
「これから、よろしく」
「こちらこそ」
蓮は笑顔で答えた。
三人は、洞窟を後にした。
新しい仲間との絆が、ここに生まれた。
蓮はその依頼を受けようと何度もギルドを訪れたが、バルトに止められていた。
「神谷、お前にはまだ早い」
「でも、困っている人がいるんです!」
「気持ちはわかる。だが、Cランクの依頼は危険だ。お前はまだEランク。経験が足りない」
バルトの言葉は厳しかったが、的確だった。
「もう少し実績を積め。それから考えろ」
「……わかりました」
蓮は渋々引き下がった。
その日の午後、蓮は街の広場で休憩していた。
噴水の縁に腰掛け、パンを齧りながら、ぼんやりと人々の往来を眺めている。
「やっぱり、あの依頼が気になるな……」
獣人の村は魔物に襲われている。
一刻も早く助けに行かなければ、村人たちが危険にさらされる。
「でも、俺一人じゃ無理だ……」
支援術師は一人では戦えない。
仲間が必要だ。
「誰か、一緒に行ってくれる人がいれば……」
そう考えていた時だった。
「神谷さん?」
聞き覚えのある声が響いた。
蓮が振り向くと──
金色の髪を揺らしたアリシアが、そこに立っていた。
「アリシア!」
「久しぶりですね」
アリシアは微笑んだ。
あれから二週間。
彼女とは一度も会っていなかった。
「騎士団の任務で忙しかったんですか?」
「ええ。国境付近の巡回任務がありまして」
アリシアは隣に座った。
「神谷さんは、冒険者として順調ですか?」
「まあ、なんとか。Eランクになりました」
「それは素晴らしい。あれから二週間でEランクとは、早い成長です」
「ダリウスたちのおかげですよ」
蓮は謙遜した。
「そういえば……」
アリシアは掲示板の方を見た。
「獣人の村の救援依頼、まだ誰も受けていないようですね」
「え、知ってるんですか?」
「ええ。騎士団でも話題になっています」
アリシアは真剣な表情になった。
「あの村は、王国の辺境にある小さな集落です。最近、魔物の活動が活発化していて……」
「やっぱり、危険なんですね」
「ええ。だからこそ、早急に対処しなければなりません」
アリシアは立ち上がった。
「実は、私も個人的に救援に向かおうと思っていました」
「え、一人で?」
「騎士団は今、人手不足で……正式な派遣は難しいんです」
アリシアは悔しそうに拳を握った。
「だから、私が休暇を使って行こうと」
「危険すぎます!」
蓮は立ち上がった。
「一人で行くなんて……」
「でも、放っておけません」
アリシアの瞳には強い決意が宿っていた。
「騎士として、弱き者を守るのが私の使命です」
「……じゃあ、俺も一緒に行きます」
蓮は即座に答えた。
「え?」
「アリシアが一人で行くなら、俺も行きます。二人なら、少しは安全でしょう」
「でも、危険ですよ……」
「アリシア一人で行く方が危険です」
蓮は真剣な目でアリシアを見た。
「それに、俺の支援魔法があれば、アリシアの力をもっと引き出せる」
「……本当に、いいんですか?」
「もちろん」
蓮は笑顔で頷いた。
「俺も、困っている人を助けたいから」
アリシアは少し迷ったが、やがて微笑んだ。
「ありがとうございます、神谷さん」
「じゃあ、明日の朝、出発しましょう」
「はい」
二人は固く握手を交わした。
翌朝、蓮とアリシアは王都の門を出た。
「獣人の村まではどれくらいかかるんですか?」
「馬車で半日ほどです」
「結構遠いんですね」
「ええ。辺境の村ですから」
二人は街道を歩いていった。
幸い、商人の馬車が通りかかり、乗せてもらうことができた。
馬車に揺られながら、蓮はアリシアに尋ねた。
「アリシアって、なんで騎士になったんですか?」
「……父の影響ですね」
アリシアは遠くを見つめた。
「私の父は、王国騎士団の団長でした」
「団長!?」
「ええ。とても立派な人でした」
アリシアは静かに語った。
「父は常々言っていました。『強さとは、弱き者を守るためにある』と」
「素敵な言葉ですね」
「父は、その言葉通りに生きました。多くの人々を救い、慕われていました」
アリシアの表情が少し曇った。
「でも……三年前、魔王軍との戦いで戦死しました」
「……そうだったんですか」
蓮は言葉を失った。
「父の遺志を継ぎ、私も騎士になりました」
アリシアは剣の柄を握った。
「いつか父のように、多くの人を守れる騎士になりたい」
「アリシアなら、きっとなれますよ」
蓮は励ました。
「ありがとうございます」
アリシアは微笑んだ。
夕方近く、馬車は獣人の村に到着した。
「ここが……」
蓮は村を見回した。
木造の家が十数軒、森の中にひっそりと佇んでいる。
だが──
村のあちこちが破壊され、炎で焼け焦げていた。
「ひどい……」
アリシアは顔を曇らせた。
「助けてー!」
子供の声が聞こえた。
「あっちです!」
二人は声のする方へ走った。
村の中心部では──
巨大な魔物が、村人たちを襲っていた。
体長4メートルほどの、トカゲのような魔物。
リザードマンよりも巨大で、鋭い牙と爪を持っている。
「ドラゴンリザード……!」
アリシアは剣を抜いた。
「Cランクの魔物です!」
「っ!」
蓮は息を呑んだ。
村人たちは逃げ惑い、子供たちが泣き叫んでいる。
「神谷さん、支援を!」
「わかった!」
蓮は支援強化を発動した。
「支援強化!」
アリシアの体が黄金色の光に包まれる。
「行きます!」
アリシアは地を蹴り、ドラゴンリザードに突撃した。
「はあっ!」
剣がドラゴンリザードの鱗に食い込む──が、浅い。
「硬い……!」
「ガアアア!」
ドラゴンリザードが尾を振るった。
アリシアは咄嗟に剣で受け止めたが、衝撃で数メートル吹き飛ばされた。
「アリシア!」
「大丈夫……です……」
アリシアは立ち上がった。
だが、ダメージは大きい。
「このままじゃ……」
蓮は焦った。
支援強化だけでは足りない。
もっと強力な支援が必要だ。
「もっと……もっと強く……!」
蓮は必死に考えた。
その時──
蓮の体が、淡く光り始めた。
「え……?」
視界にメッセージが浮かび上がる。
【新スキル習得】
スキル名:バーサーク・ブースト
効果:対象の攻撃力と速度を2倍に強化。ただし防御力が半減。
持続時間:5分
消費MP:30
「新しいスキル……!?」
蓮は驚いた。
だが、今はそれを考えている場合ではない。
「アリシア!」
蓮は叫んだ。
「バーサーク・ブースト!」
アリシアの体が、先ほどとは異なる赤い光に包まれた。
「この力……!」
アリシアは自分の体に驚いた。
体中に力が漲る。
視界がクリアになり、全ての動きが遅く見える。
「これなら……!」
アリシアは再びドラゴンリザードに突撃した。
今度は──
まるで稲妻のような速さで、ドラゴンリザードの首を刎ねた。
「ガ……ア……」
ドラゴンリザードは倒れた。
「やった……!」
だが、次の瞬間──
森の奥から、もう一匹のドラゴンリザードが現れた。
「嘘……まだいるの……!?」
アリシアは疲労で膝をついた。
バーサーク・ブーストの効果で、体力を激しく消耗している。
「くそっ……!」
蓮は焦った。
MPはもう残り少ない。
「どうすれば……」
その時──
森の反対側から、炎の魔法が飛んできた。
「フレイムランス!」
巨大な炎の槍が、二匹目のドラゴンリザードを貫いた。
「ガアアアッ!」
ドラゴンリザードは炎に包まれて倒れた。
「誰……!?」
蓮が振り向くと──
長い黒髪の少女、リリアが立っていた。
「あなたたち、無茶しすぎよ」
リリアは冷たい声で言った。
「リリア……!」
「たまたま通りかかっただけ。勘違いしないで」
リリアは杖を下ろした。
「助かりました……」
アリシアは安堵の息を吐いた。
「村の人たちは?」
「大丈夫みたいです」
蓮は周囲を見回した。
村人たちは怯えているが、怪我人は少ないようだ。
「良かった……」
夜、村の集会所で、村長が蓮たちに礼を述べた。
「本当にありがとうございました。あなた方のおかげで、村は救われました」
村長は獣人の老人で、大きな耳と尻尾を持っていた。
「いえ、当然のことです」
アリシアは微笑んだ。
「でも、なぜドラゴンリザードがこんなところに……」
「実は……最近、森の奥で異変が起きているんです」
村長は深刻な表情で言った。
「魔物たちが、何かに怯えて森から逃げてきている」
「何かに怯えて……?」
「ええ。もっと強大な何かが、森の奥にいるのかもしれません」
「……」
蓮とアリシアは顔を見合わせた。
「調査が必要ですね」
リリアが口を開いた。
「え、リリアも?」
「私も気になるのよ。魔法学院の課題で、魔物の生態を調べているところだったから」
リリアは腕を組んだ。
「明日、森の奥を調査しましょう」
「わかりました」
アリシアが頷いた。
「じゃあ、三人で行きましょう」
「三人……か」
蓮は少し嬉しくなった。
アリシアとリリア。
強力な二人と共に行動できる。
「よろしくお願いします」
蓮は二人に頭を下げた。
その夜、蓮は村の宿舎で休んでいた。
「新しいスキルか……」
蓮はステータスを確認した。
【ステータス】
名前:神谷蓮
レベル:5
HP:140/140
MP:80/80
スキル:
- 支援強化 Lv.2
- バーサーク・ブースト Lv.1(新規)
「レベルも上がってる……」
戦闘で経験値を得たようだ。
「もっと強くならないと」
蓮は拳を握りしめた。
アリシアやリリアのような強い仲間を、もっと支えられるように。
「明日から、本格的な冒険が始まるんだな……」
蓮は期待と不安を胸に、眠りについた。
翌朝、三人は森の奥へと向かった。
木々が鬱蒼と茂り、日光がほとんど届かない。
不気味な静けさが漂っている。
「気をつけて。魔物がいつ現れてもおかしくないわ」
リリアが警告した。
「はい」
アリシアは剣を構えた。
蓮は二人の後ろを歩きながら、周囲を警戒した。
しばらく進むと──
巨大な洞窟が現れた。
「あれは……」
「洞窟……何かいそうね」
リリアは杖を構えた。
「入りましょう」
アリシアが先頭に立った。
三人は洞窟の中へと進んでいった。
洞窟の中は暗く、湿っていた。
壁には奇妙な紋様が刻まれている。
「これは……古代文字?」
リリアが壁を調べた。
「読めるんですか?」
「少しだけ。これは……封印の術式ね」
「封印?」
「何かを封じるための魔法陣よ」
リリアは眉をひそめた。
「まさか……」
その時──
洞窟の奥から、強大な魔力が溢れ出した。
「この魔力……!」
アリシアは身構えた。
「ただの魔物じゃない……」
リリアは冷や汗を流した。
奥から、巨大な影が近づいてくる。
それは──古代の魔獣、ベヒモスだった。
体長10メートル。
全身が岩のような硬い鱗で覆われ、巨大な牙と爪を持つ。
「ベヒモス……Aランクの魔物……!」
アリシアは驚愕した。
「逃げるわよ!」
リリアが叫んだ。
だが──
ベヒモスは一瞬で洞窟の出口を塞いだ。
「逃げ道が……!」
「戦うしかない……!」
アリシアは剣を構えた。
「神谷さん、支援を!」
「わかった!」
蓮は支援強化を二人にかけた。
「支援強化!」
「バーサーク・ブースト!」
アリシアとリリアの体が光り輝く。
「行くわよ!」
リリアが先制攻撃を放った。
「フレイムストーム!」
巨大な炎の竜巻がベヒモスを襲う。
だが──
ベヒモスは炎を物ともせず、突進してきた。
「うっ……!」
アリシアが剣で受け止めるが、衝撃で吹き飛ばされた。
「アリシア!」
「大丈夫……です……」
アリシアは立ち上がったが、腕が震えている。
「このままじゃ……」
蓮は焦った。
支援だけでは足りない。
「もっと……もっと強力な支援を……!」
蓮は必死に祈った。
その時──
蓮の体が、激しく光り始めた。
視界にメッセージが浮かび上がる。
【スキル進化】
支援強化 Lv.2 → グランド・サポート Lv.1
効果:対象全員の全能力を2倍に強化
持続時間:10分
消費MP:50
「全員を……2倍に……!」
蓮は叫んだ。
「グランド・サポート!」
洞窟全体が、眩い光に包まれた。
アリシアとリリアの体が、強烈な光に包まれる。
「この力……!」
「信じられない……!」
二人は驚愕した。
体中に、これまでにない力が漲る。
「行ける……!」
アリシアは剣を振るった。
「はあああっ!」
剣撃が、ベヒモスの鱗を切り裂いた。
「フレイムエクスプロージョン!」
リリアの最大魔法が、ベヒモスを直撃した。
ドオオオンッ!
洞窟が揺れる。
ベヒモスは倒れた。
「やった……!」
だが、蓮は膝をついた。
「神谷さん!」
アリシアが駆け寄った。
「大丈夫……MPを使いすぎただけ……」
蓮は笑顔で答えた。
「でも、勝てた……」
「ええ。あなたのおかげです」
アリシアは蓮を抱き支えた。
「……認めるわ」
リリアが近づいてきた。
「あなたの支援魔法、本物ね」
「リリア……」
「私が間違っていたわ。支援術師だからって、弱いわけじゃない」
リリアは小さく微笑んだ。
「これから、よろしく」
「こちらこそ」
蓮は笑顔で答えた。
三人は、洞窟を後にした。
新しい仲間との絆が、ここに生まれた。
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死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
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こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
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【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる
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まだ遅くない。
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スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
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薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
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「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
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異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
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