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第3章「辺境からの革命」
第23話「晩餐会の罠」
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晩餐会当日。
夕暮れ時、王宮の大広間。
豪華なシャンデリア、金の装飾、長いテーブル。
百人以上の貴族が、集まっていた。
「エリシア、準備はいいか?」
ルシアンが、小声で訊いた。
「ええ」
私は、深呼吸をした。
純白のドレス。首元には、青い宝石のネックレス。
でも、その下には――。
軽量の防護服を着込んでいた。
「レオンたちは?」
「配置についている」
ルシアンが、目配せをした。
会場のあちこちに、変装したノルディアの戦士たち。
給仕、楽師、衛兵――。
全て、私たちの仲間。
「では、行きましょう」
私たちは、大広間に入った。
「辺境王と、エリシア様のご入場です」
司会の声。
一斉に、視線が集まった。
賛美の目、嫉妬の目、そして――。
殺意を含んだ目。
「ようこそ、エリシア」
玉座から、国王陛下が立ち上がった。
「陛下」
私たちは、深く頭を下げた。
「さあ、座りなさい」
国王の隣、上座に案内された。
周囲には――。
グレゴール公爵、そして保守派貴族たち。
彼らの目が、冷たかった。
「では、晩餐を始めましょう」
国王の宣言で、料理が運ばれてきた。
前菜、スープ、魚料理――。
どれも豪華絢爛。
「エリシア様」
給仕が、ワインを注ごうとした。
「いえ、結構です」
私は、グラスを手で覆った。
「あら、なぜ?」
隣の貴族夫人が、不思議そうに訊いた。
「今日は、お酒を控えているんです」
私は、微笑んだ。
実際には――。
このワインに、毒が盛られている可能性がある。
給仕の顔を見る。
見覚えのない顔。
「では、水を」
「はい」
給仕が、去っていく。
その背中を、レオンが見張っている。
「エリシア」
カイル王子が、向かいから話しかけてきた。
「お元気そうですね」
「ええ、殿下も」
「最近の噂、気にしていますか?」
「いいえ」
私は、はっきりと答えた。
「真実は、いずれ明らかになりますから」
カイルが、微笑んだ。
「その通りですね」
晩餐は、和やかに進んでいった。
表面上は。
でも、私の神経は研ぎ澄まされていた。
いつ、襲ってくるのか。
どこから、攻撃が来るのか。
メインディッシュが運ばれてきた。
「こちら、本日の特別料理です」
給仕が、私の前に皿を置いた。
ローストビーフ。美しい盛り付け。
でも――。
「ありがとうございます」
私は、フォークを手に取った。
そして、肉を切ろうとした瞬間――。
ルシアンが、私の手を止めた。
「待て」
「ルシアン?」
彼は、私の皿を自分の皿と交換した。
そして、肉を一口食べた。
「……何でもない」
「本当に?」
「ああ」
でも、彼の顔が少し青ざめている。
「やはり……」
小声で呟いた。
肉にも、毒が。
ルシアンは、事前に解毒薬を飲んでいたから大丈夫だが――。
「計画通りだな」
彼が、小さく笑った。
「ええ」
私も、微笑んだ。
罠は、確実に仕掛けられている。
なら――。
こちらの準備も、完璧に。
デザートの時間。
突然、照明が消えた。
「な、何だ!?」
「停電か!?」
場内が、騒然となった。
その闇の中――。
「エリシア、危ない!」
ルシアンが、私を押し倒した。
シュッ。
鋭い音。
短剣が、私がいた場所を通り過ぎた。
「刺客だ!」
誰かが叫んだ。
パチン。
レオンが、魔法で明かりを灯した。
会場が、再び明るくなった。
そこには――。
黒装束の男が、短剣を構えていた。
「貴様……!」
衛兵たちが、男に向かう。
でも――。
「させるか」
別の刺客が、次々と現れた。
五人、十人――。
「こんなに……!」
カイル王子が、剣を抜いた。
「皆、下がれ!」
戦闘が、始まった。
刺客と衛兵が、ぶつかり合う。
「エリシア、こっちだ!」
ルシアンが、私の手を引いた。
でも――。
「待って」
私は、立ち止まった。
「逃げません」
「何を言って――」
「これは、チャンスです」
私は、中央に歩いていった。
「皆さん、静かに!」
大声で叫ぶ。
戦闘が、一瞬止まった。
「この襲撃――偶然だと思いますか?」
私は、全員を見渡した。
「いいえ。これは、計画的な暗殺です」
「何を……」
グレゴール公爵が、動揺した顔をした。
「そして、その黒幕は――」
私は、彼を指差した。
「あなたたちです」
場内が、静まり返った。
「何を言うか! 証拠もなく――」
「証拠なら、あります」
私は、手を叩いた。
すると――。
変装していた給仕たちが、本当の姿を現した。
ノルディアの戦士たち。
「彼らは、全ての会話を記録していました」
レオンが、前に出た。
「グレゴール公、あなたの屋敷での会話」
「暗殺計画、毒の準備、刺客の雇用――全て」
レオンが、録音魔法陣を起動した。
『あの女を、今すぐ殺せ』
『毒を盛り、失敗したら刺客を』
グレゴール公爵の声が、会場に響いた。
「こ、これは偽造だ!」
「偽造?」
私は、冷たく笑った。
「では、これは?」
オスカーが、書類を持ってきた。
「刺客への支払い記録。あなたの署名入りです」
グレゴール公爵の顔が、真っ青になった。
「それに――」
私は、刺客の一人を指差した。
「彼から、全て聞きました」
刺客が、仮面を外した。
「すみません、エリシア様」
なんと――それは、演技だった。
最初から、私たちの味方。
「あなたは……!」
グレゴール公爵が、愕然とした。
「そう。最初から、罠だったんです」
私は、微笑んだ。
「あなたたちが仕掛けた罠――それを、逆手に取らせていただきました」
「くそ……!」
グレゴール公爵が、剣を抜いた。
「なら、ここで――」
彼が、私に向かって突進してきた。
その瞬間――。
ルシアンが、彼の前に立ちはだかった。
剣と剣が、ぶつかり合う。
「お前の相手は、私だ」
ルシアンの目が、冷たく光った。
一瞬の攻防。
そして――。
ガシャン。
グレゴール公爵の剣が、弾き飛ばされた。
「終わりだ」
ルシアンの剣が、彼の首に当てられた。
「投降しろ」
「くっ……」
グレゴール公爵は、膝をついた。
「陛下」
私は、国王に向かった。
「これが、真実です」
「保守派貴族たちは、改革を恐れて私を暗殺しようとしました」
「……」
国王は、深いため息をついた。
「グレゴール、本当か?」
「陛下、それは――」
「本当か、と聞いている!」
国王の怒声。
グレゴール公爵は、観念した。
「……はい」
「なぜだ」
「この国を、守りたかったんです」
グレゴール公爵が、叫んだ。
「身分制度、伝統、秩序――それらが、この国を支えてきた」
「エリシアの改革は、それを壊す」
「だから――」
「だから、殺そうとした?」
カイル王子が、前に出た。
「民を救う者を、殺そうとした?」
「それは――」
「それは、保守ではない」
カイルの声が、響いた。
「ただの、保身だ」
その言葉に、グレゴール公爵は何も言えなかった。
「グレゴール公」
国王が、宣言した。
「お前を、逮捕する」
「国家反逆罪、殺人未遂――全ての罪で」
衛兵たちが、グレゴール公爵を連行した。
「待て、待ってくれ!」
彼の叫び声が、遠ざかっていった。
場が、静まった。
「エリシア」
国王が、私を見た。
「よくやった」
「陛下……」
「お前は、陰謀を暴き、真実を明らかにした」
国王は、玉座から降りてきた。
「そして――」
彼は、私の前に立った。
「改めて、お前に問う」
「全王国改革計画――本当に、実現できるのか?」
「はい」
私は、はっきりと答えた。
「必ず、実現させます」
国王は、長い沈黙の後――。
「……わかった」
彼は、宣言した。
「エリシア=ノルディアに、全王国改革の全権を与える」
場内から、どよめきが起こった。
「ただし」
国王が、続けた。
「期限は三年。三年で、結果を出せ」
「必ず」
私は、深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
「そして――」
国王は、カイルを見た。
「カイル、お前はエリシアを補佐しろ」
「はい、父上」
カイルが、前に出た。
「喜んで」
国王は、再び玉座に座った。
「本日の晩餐会は、これで終了する」
「皆、解散」
貴族たちが、ざわざわと退出していく。
賛同の目、反対の目、様々な視線。
でも、私は――。
「やった……」
小さく呟いた。
「ああ」
ルシアンが、私の肩を抱いた。
「よくやったな」
「あなたのおかげです」
「いや、お前の力だ」
二人で、微笑み合った。
深夜。
宿に戻った私たちは、祝杯を上げていた。
「乾杯!」
「「「乾杯!」」」
レオン、オスカー、ミラ、ラウラ――。
皆が、喜びの表情。
「エリシア、すごかったよ!」
ミラが、興奮して言った。
「あの演説、かっこよかった!」
「演技も完璧でしたね」
オスカーが、笑った。
「刺客まで味方だったとは」
「レオンの協力のおかげです」
私は、レオンを見た。
「ありがとう」
「いえ」
レオンが、笑った。
「これで、ノルディアの未来も明るくなります」
「ええ」
私は、窓の外を見た。
星空。
明日への希望。
「でも――」
ルシアンが、真剣な顔になった。
「これからが、本当の戦いだ」
「わかっています」
私は、頷いた。
「三年で、全王国を変える」
「簡単ではない」
「ええ。でも――」
私は、皆を見渡した。
「皆がいれば、できます」
「「「はい!」」」
力強い返事。
その夜、私たちは遅くまで計画を練った。
教育改革の詳細。
農業改革の手順。
インフラ整備の優先順位。
そして――。
身分制度改革の段階的実施。
「やることが、山ほどあるな」
ルシアンが、苦笑した。
「でも、やりがいがあります」
私も、笑った。
「さあ、明日から――」
「新しい時代を、作りましょう」
翌朝。
王都の街は、ざわついていた。
「エリシア様が、全権を得たらしい」
「改革が、本当に始まるのか」
「どうなるんだろう、この国」
期待と不安が、入り混じっている。
私たちは、王宮に向かった。
「今日から、仕事が始まるぞ」
ルシアンが言った。
「ええ」
私は、空を見上げた。
青い空、白い雲。
「新しい時代の、始まりですね」
「ああ」
王宮の門をくぐる。
そこから――。
本当の戦いが、始まる。
困難も、きっと多い。
でも――。
「大丈夫」
私は、ルシアンの手を握った。
「二人なら、乗り越えられる」
「ああ」
ルシアンも、私の手を握り返した。
「一緒に、未来を作ろう」
二人で、王宮に入っていった。
新しい時代へ。
新しい未来へ。
その第一歩を、今、踏み出した。
陽光が、二人を照らしていた。
希望の光のように。
革命の光のように。
長い戦いの、始まりを告げる光のように。
夕暮れ時、王宮の大広間。
豪華なシャンデリア、金の装飾、長いテーブル。
百人以上の貴族が、集まっていた。
「エリシア、準備はいいか?」
ルシアンが、小声で訊いた。
「ええ」
私は、深呼吸をした。
純白のドレス。首元には、青い宝石のネックレス。
でも、その下には――。
軽量の防護服を着込んでいた。
「レオンたちは?」
「配置についている」
ルシアンが、目配せをした。
会場のあちこちに、変装したノルディアの戦士たち。
給仕、楽師、衛兵――。
全て、私たちの仲間。
「では、行きましょう」
私たちは、大広間に入った。
「辺境王と、エリシア様のご入場です」
司会の声。
一斉に、視線が集まった。
賛美の目、嫉妬の目、そして――。
殺意を含んだ目。
「ようこそ、エリシア」
玉座から、国王陛下が立ち上がった。
「陛下」
私たちは、深く頭を下げた。
「さあ、座りなさい」
国王の隣、上座に案内された。
周囲には――。
グレゴール公爵、そして保守派貴族たち。
彼らの目が、冷たかった。
「では、晩餐を始めましょう」
国王の宣言で、料理が運ばれてきた。
前菜、スープ、魚料理――。
どれも豪華絢爛。
「エリシア様」
給仕が、ワインを注ごうとした。
「いえ、結構です」
私は、グラスを手で覆った。
「あら、なぜ?」
隣の貴族夫人が、不思議そうに訊いた。
「今日は、お酒を控えているんです」
私は、微笑んだ。
実際には――。
このワインに、毒が盛られている可能性がある。
給仕の顔を見る。
見覚えのない顔。
「では、水を」
「はい」
給仕が、去っていく。
その背中を、レオンが見張っている。
「エリシア」
カイル王子が、向かいから話しかけてきた。
「お元気そうですね」
「ええ、殿下も」
「最近の噂、気にしていますか?」
「いいえ」
私は、はっきりと答えた。
「真実は、いずれ明らかになりますから」
カイルが、微笑んだ。
「その通りですね」
晩餐は、和やかに進んでいった。
表面上は。
でも、私の神経は研ぎ澄まされていた。
いつ、襲ってくるのか。
どこから、攻撃が来るのか。
メインディッシュが運ばれてきた。
「こちら、本日の特別料理です」
給仕が、私の前に皿を置いた。
ローストビーフ。美しい盛り付け。
でも――。
「ありがとうございます」
私は、フォークを手に取った。
そして、肉を切ろうとした瞬間――。
ルシアンが、私の手を止めた。
「待て」
「ルシアン?」
彼は、私の皿を自分の皿と交換した。
そして、肉を一口食べた。
「……何でもない」
「本当に?」
「ああ」
でも、彼の顔が少し青ざめている。
「やはり……」
小声で呟いた。
肉にも、毒が。
ルシアンは、事前に解毒薬を飲んでいたから大丈夫だが――。
「計画通りだな」
彼が、小さく笑った。
「ええ」
私も、微笑んだ。
罠は、確実に仕掛けられている。
なら――。
こちらの準備も、完璧に。
デザートの時間。
突然、照明が消えた。
「な、何だ!?」
「停電か!?」
場内が、騒然となった。
その闇の中――。
「エリシア、危ない!」
ルシアンが、私を押し倒した。
シュッ。
鋭い音。
短剣が、私がいた場所を通り過ぎた。
「刺客だ!」
誰かが叫んだ。
パチン。
レオンが、魔法で明かりを灯した。
会場が、再び明るくなった。
そこには――。
黒装束の男が、短剣を構えていた。
「貴様……!」
衛兵たちが、男に向かう。
でも――。
「させるか」
別の刺客が、次々と現れた。
五人、十人――。
「こんなに……!」
カイル王子が、剣を抜いた。
「皆、下がれ!」
戦闘が、始まった。
刺客と衛兵が、ぶつかり合う。
「エリシア、こっちだ!」
ルシアンが、私の手を引いた。
でも――。
「待って」
私は、立ち止まった。
「逃げません」
「何を言って――」
「これは、チャンスです」
私は、中央に歩いていった。
「皆さん、静かに!」
大声で叫ぶ。
戦闘が、一瞬止まった。
「この襲撃――偶然だと思いますか?」
私は、全員を見渡した。
「いいえ。これは、計画的な暗殺です」
「何を……」
グレゴール公爵が、動揺した顔をした。
「そして、その黒幕は――」
私は、彼を指差した。
「あなたたちです」
場内が、静まり返った。
「何を言うか! 証拠もなく――」
「証拠なら、あります」
私は、手を叩いた。
すると――。
変装していた給仕たちが、本当の姿を現した。
ノルディアの戦士たち。
「彼らは、全ての会話を記録していました」
レオンが、前に出た。
「グレゴール公、あなたの屋敷での会話」
「暗殺計画、毒の準備、刺客の雇用――全て」
レオンが、録音魔法陣を起動した。
『あの女を、今すぐ殺せ』
『毒を盛り、失敗したら刺客を』
グレゴール公爵の声が、会場に響いた。
「こ、これは偽造だ!」
「偽造?」
私は、冷たく笑った。
「では、これは?」
オスカーが、書類を持ってきた。
「刺客への支払い記録。あなたの署名入りです」
グレゴール公爵の顔が、真っ青になった。
「それに――」
私は、刺客の一人を指差した。
「彼から、全て聞きました」
刺客が、仮面を外した。
「すみません、エリシア様」
なんと――それは、演技だった。
最初から、私たちの味方。
「あなたは……!」
グレゴール公爵が、愕然とした。
「そう。最初から、罠だったんです」
私は、微笑んだ。
「あなたたちが仕掛けた罠――それを、逆手に取らせていただきました」
「くそ……!」
グレゴール公爵が、剣を抜いた。
「なら、ここで――」
彼が、私に向かって突進してきた。
その瞬間――。
ルシアンが、彼の前に立ちはだかった。
剣と剣が、ぶつかり合う。
「お前の相手は、私だ」
ルシアンの目が、冷たく光った。
一瞬の攻防。
そして――。
ガシャン。
グレゴール公爵の剣が、弾き飛ばされた。
「終わりだ」
ルシアンの剣が、彼の首に当てられた。
「投降しろ」
「くっ……」
グレゴール公爵は、膝をついた。
「陛下」
私は、国王に向かった。
「これが、真実です」
「保守派貴族たちは、改革を恐れて私を暗殺しようとしました」
「……」
国王は、深いため息をついた。
「グレゴール、本当か?」
「陛下、それは――」
「本当か、と聞いている!」
国王の怒声。
グレゴール公爵は、観念した。
「……はい」
「なぜだ」
「この国を、守りたかったんです」
グレゴール公爵が、叫んだ。
「身分制度、伝統、秩序――それらが、この国を支えてきた」
「エリシアの改革は、それを壊す」
「だから――」
「だから、殺そうとした?」
カイル王子が、前に出た。
「民を救う者を、殺そうとした?」
「それは――」
「それは、保守ではない」
カイルの声が、響いた。
「ただの、保身だ」
その言葉に、グレゴール公爵は何も言えなかった。
「グレゴール公」
国王が、宣言した。
「お前を、逮捕する」
「国家反逆罪、殺人未遂――全ての罪で」
衛兵たちが、グレゴール公爵を連行した。
「待て、待ってくれ!」
彼の叫び声が、遠ざかっていった。
場が、静まった。
「エリシア」
国王が、私を見た。
「よくやった」
「陛下……」
「お前は、陰謀を暴き、真実を明らかにした」
国王は、玉座から降りてきた。
「そして――」
彼は、私の前に立った。
「改めて、お前に問う」
「全王国改革計画――本当に、実現できるのか?」
「はい」
私は、はっきりと答えた。
「必ず、実現させます」
国王は、長い沈黙の後――。
「……わかった」
彼は、宣言した。
「エリシア=ノルディアに、全王国改革の全権を与える」
場内から、どよめきが起こった。
「ただし」
国王が、続けた。
「期限は三年。三年で、結果を出せ」
「必ず」
私は、深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
「そして――」
国王は、カイルを見た。
「カイル、お前はエリシアを補佐しろ」
「はい、父上」
カイルが、前に出た。
「喜んで」
国王は、再び玉座に座った。
「本日の晩餐会は、これで終了する」
「皆、解散」
貴族たちが、ざわざわと退出していく。
賛同の目、反対の目、様々な視線。
でも、私は――。
「やった……」
小さく呟いた。
「ああ」
ルシアンが、私の肩を抱いた。
「よくやったな」
「あなたのおかげです」
「いや、お前の力だ」
二人で、微笑み合った。
深夜。
宿に戻った私たちは、祝杯を上げていた。
「乾杯!」
「「「乾杯!」」」
レオン、オスカー、ミラ、ラウラ――。
皆が、喜びの表情。
「エリシア、すごかったよ!」
ミラが、興奮して言った。
「あの演説、かっこよかった!」
「演技も完璧でしたね」
オスカーが、笑った。
「刺客まで味方だったとは」
「レオンの協力のおかげです」
私は、レオンを見た。
「ありがとう」
「いえ」
レオンが、笑った。
「これで、ノルディアの未来も明るくなります」
「ええ」
私は、窓の外を見た。
星空。
明日への希望。
「でも――」
ルシアンが、真剣な顔になった。
「これからが、本当の戦いだ」
「わかっています」
私は、頷いた。
「三年で、全王国を変える」
「簡単ではない」
「ええ。でも――」
私は、皆を見渡した。
「皆がいれば、できます」
「「「はい!」」」
力強い返事。
その夜、私たちは遅くまで計画を練った。
教育改革の詳細。
農業改革の手順。
インフラ整備の優先順位。
そして――。
身分制度改革の段階的実施。
「やることが、山ほどあるな」
ルシアンが、苦笑した。
「でも、やりがいがあります」
私も、笑った。
「さあ、明日から――」
「新しい時代を、作りましょう」
翌朝。
王都の街は、ざわついていた。
「エリシア様が、全権を得たらしい」
「改革が、本当に始まるのか」
「どうなるんだろう、この国」
期待と不安が、入り混じっている。
私たちは、王宮に向かった。
「今日から、仕事が始まるぞ」
ルシアンが言った。
「ええ」
私は、空を見上げた。
青い空、白い雲。
「新しい時代の、始まりですね」
「ああ」
王宮の門をくぐる。
そこから――。
本当の戦いが、始まる。
困難も、きっと多い。
でも――。
「大丈夫」
私は、ルシアンの手を握った。
「二人なら、乗り越えられる」
「ああ」
ルシアンも、私の手を握り返した。
「一緒に、未来を作ろう」
二人で、王宮に入っていった。
新しい時代へ。
新しい未来へ。
その第一歩を、今、踏み出した。
陽光が、二人を照らしていた。
希望の光のように。
革命の光のように。
長い戦いの、始まりを告げる光のように。
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これは、
「世界を救ってしまったのに、何もしない」
追放聖女の物語。
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