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第3章「辺境からの革命」
第27話「繋がる道、繋がる心」
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改革開始から一年。
王宮の大会議室には、五十人以上の領主が集まっていた。
「王国街道網計画」
私は、巨大な地図を壁に掲げた。
「これが、完成予想図です」
赤い線が、王国中を網の目のように結んでいる。
「王都を中心に、東西南北に主要街道」
「そこから、各領地を繋ぐ支線」
「全長、三千キロメートル」
場内が、どよめいた。
「三千キロ!?」
「そんな距離、完成させられるのか?」
「できます」
私は、断言した。
「期間は二年。段階的に建設します」
「まず、主要街道から」
地図を指差していく。
「王都からノルディアへの北街道――すでに完成」
「次は、王都から東部商業都市エルデンへ」
「その次は、南部農業地帯、西部鉱山地帯へ」
「でも――」
一人の領主が、手を上げた。
「費用は、どうするんだ?」
「良い質問です」
私は、別の書類を配布した。
「建設費用は、国庫と各領地で折半」
「ただし――」
「街道が完成すれば、商業が活性化します」
「関税収入、通行料収入が増えます」
「それを、建設費用の返済に充てます」
データを示す。
「試算では、五年で投資回収が可能です」
「五年……」
領主たちが、計算を始めた。
「それなら、やる価値があるかもしれない」
「だが」
別の領主が言った。
「我が領地には、険しい山がある」
「そこを通すのは、不可能だ」
「不可能ではありません」
私は、別の図面を見せた。
「トンネルを掘ります」
「トンネル!?」
「はい。山を貫く、長大トンネル」
場内が、再び驚きに包まれた。
「そんなこと、できるのか?」
「できます」
私は、前世の土木工学の知識を総動員して説明した。
「魔法と技術の融合です」
「岩盤を魔法で削り、支柱で補強する」
「換気システムも、魔法陣で構築します」
詳細な設計図を見せる。
「これなら――」
領主たちが、納得し始めた。
「本当に、できるかもしれない」
「では」
カイル王子が、立ち上がった。
「賛成の方、挙手を」
ゆっくりと、手が上がっていく。
最終的に――。
「全員一致で、可決!」
カイルが、宣言した。
「王国街道網計画、正式に承認されました!」
拍手が、響いた。
一週間後。
最初の建設現場――東街道。
王都から、商業都市エルデンまで、二百キロメートル。
「では、着工式を行います」
私は、スコップを手に取った。
そして、地面に突き刺す。
「これより、東街道建設を――開始します!」
「「「おおおお!!」」」
数百人の作業員が、歓声を上げた。
工事が、始まった。
測量班が、正確なルートを決める。
整地班が、地面を平らにする。
石材班が、道路の基礎を作る。
「順調ですね」
オスカーが、工程表を確認している。
「ええ。このペースなら、予定通り――」
その時。
「エリシア様! 問題です!」
技術者が、駆けてきた。
「どうしたの?」
「前方二十キロ地点――大きな川があります」
「知っています。架橋の計画がありますよ」
「いえ、それが――」
技術者が、青い顔で言った。
「今年は雨が多くて、川が増水しています」
「計画していた場所では、橋脚が立てられません」
「そんな……」
現場に行くと――。
濁流が、轟々と流れていた。
「これは……」
普段なら幅五十メートルの川が、百メートル以上に広がっている。
「この状態では、橋を架けられません」
技術者が、頭を抱えた。
「増水が収まるまで、待つしか――」
「待てません」
私は、川を見つめた。
「工期が遅れれば、全体計画に影響します」
「でも――」
「別の方法を、考えましょう」
その夜、宿で。
私は、前世の橋梁工学の教科書を思い出していた。
「増水した川に橋を架ける方法……」
ルシアンが、横で地図を見ている。
「川の上流、十キロ地点に――」
彼が、ある場所を指差した。
「岩盤がある」
「岩盤……?」
「ああ。ここなら、川幅も狭い」
「そして、岩盤なら橋脚が安定する」
「でも、十キロも迂回すれば――」
「時間がかかる、か?」
ルシアンが、計算した。
「確かに距離は伸びる。だが――」
「安全で確実な橋が作れる」
「それに――」
彼は、地図の別の場所を指差した。
「この迂回ルートは、三つの村を通る」
「今は孤立している村だ」
「つまり……」
私の目が、輝いた。
「経済効果が、より大きくなる!」
「その通りだ」
ルシアンが、微笑んだ。
「デメリットを、メリットに変えるんだ」
「素晴らしい!」
私は、彼を抱きしめた。
「ありがとう、ルシアン!」
「お、おい……」
彼の顔が、赤くなった。
「急に抱きつくな」
「だって、嬉しくて」
私は、彼を見上げた。
「あなたがいてくれて、本当に良かった」
ルシアンは、少し照れながら――。
「……私も、だ」
そして、私の額にキスをした。
翌日。
ルートを変更し、上流に橋を架けることにした。
「岩盤を基礎にします」
新しい設計図を描く。
「長さ、百メートル。石造アーチ橋」
「アーチ橋?」
技術者が、訊いた。
「はい。アーチ構造なら、強度が増します」
私は、前世の知識を説明した。
「重量が、アーチ全体に分散されるんです」
「なるほど……」
建設が、始まった。
まず、両岸の岩盤に土台を作る。
次に、中央に足場を組む。
そして、石を一つ一つ積み上げていく。
「慎重に! 一つでもズレたら、崩壊します!」
作業員たちが、真剣な顔で作業している。
二ヶ月後――。
「最後の石を、置きます!」
要石――アーチの頂点の石が、はめ込まれた。
そして――。
足場を外す。
橋が、自立した。
「成功だ……!」
歓声が、上がった。
「本当に、立った!」
「すごい……石だけで、こんな長い橋が!」
試しに、馬車を通してみる。
揺れもなく、安定している。
「完璧です、エリシア様!」
「みんなのおかげです」
私は、作業員たちに頭を下げた。
「ありがとうございました」
橋の完成から三ヶ月。
東街道の第一区間が、開通した。
王都からエルデンまで、整備された道。
「開通式を行います!」
カイル王子、各領主、そして多くの民衆が集まった。
「では――」
私は、リボンを切った。
「東街道、開通です!」
拍手と歓声。
最初の馬車が、新しい道を走り出す。
「速い!」
「揺れない!」
「こんなに快適な道、初めてだ!」
人々の喜びの声。
「エリシア様」
孤立していた村の村長が、近づいてきた。
「本当に、ありがとうございます」
「我が村は、今まで陸の孤島でした」
村長の目に、涙が浮かんでいた。
「でも、この道のおかげで――」
「王都と繋がることができました」
「物を売ることができます」
「子供たちを、街の学校に通わせることができます」
「これからは――」
村長が、笑顔になった。
「希望を持って、生きられます」
その言葉が、胸に響いた。
「こちらこそ、ありがとうございます」
私は、深く頭を下げた。
「道は、人を繋ぎます」
「そして、心も繋ぎます」
半年後。
東街道に続き、南街道も完成した。
そして――。
最大の難所、西街道の建設が始まった。
西部は、険しい山岳地帯。
「ここに、トンネルを掘ります」
私は、山を見上げた。
「全長、五キロメートル」
「五キロ……」
作業員たちが、不安そうな顔をした。
「本当に、掘れるんですか?」
「掘れます」
私は、断言した。
「魔法と技術を、組み合わせます」
まず、魔法で岩盤を削る。
「火の魔法で、岩を熱する」
「次に、水の魔法で急冷」
「岩にひびが入ります」
「そして、物理的に砕く」
実演してみせる。
ゴォォォ。
火の魔法が、岩を真っ赤に熱した。
次に、水をかける。
バキバキバキ。
岩にひびが入った。
「すげぇ……」
作業員たちが、感嘆の声を上げた。
「これなら、いけるかも!」
工事が、始まった。
両側から、同時に掘り進める。
毎日、数メートルずつ前進。
でも――。
「エリシア様、問題が!」
三ヶ月後、技術者が報告に来た。
「地下水脈に当たりました」
「水が、噴き出しています」
現場に行くと――。
トンネルの中が、水浸しになっていた。
「これは……」
「このままでは、作業ができません」
「排水を」
私は、指示を出した。
「魔法陣で、排水システムを構築します」
「それに――」
設計図を修正する。
「この水を、利用しましょう」
「利用?」
「はい。麓の村に、水を引きます」
「この山岳地帯は、水不足です」
「トンネルの水を、村に供給するんです」
技術者の目が、輝いた。
「それは……素晴らしいアイデアです!」
排水システムと水路を建設。
問題が、解決策に変わった。
一年後。
西街道のトンネルが――。
ついに、貫通した。
「繋がった!」
両側から掘り進めたトンネルが、中央で合流。
誤差は、わずか十センチ。
「すごい精度だ……」
技術者たちが、驚いている。
「測量が、完璧だったんです」
私は、微笑んだ。
「みんなの努力の結果です」
トンネルを、光が貫く。
美しい光景。
「やった……やったぞ!」
作業員たちが、抱き合って喜んでいる。
二年後。
全ての主要街道が、完成した。
王都を中心に、東西南北に伸びる道。
そして、各地を繋ぐ支線。
「王国街道網、完成です!」
国王陛下の前で、私は報告した。
「素晴らしい」
国王が、満足そうに頷いた。
「これで、王国は一つに繋がった」
「はい」
私は、深く頭を下げた。
「これも、陛下のご支援のおかげです」
「エリシア」
国王が、私を見た。
「お前は、本当にこの国を変えた」
「教育、農業、そしてインフラ」
「全てが、目に見えて良くなっている」
「ありがとうございます」
「だが――」
国王の表情が、真剣になった。
「最後の、そして最も困難な改革が残っている」
「身分制度改革、ですね」
「そうだ」
国王は、深くため息をついた。
「これが、一番難しい」
「わかっています」
私は、頷いた。
「でも――」
私は、窓の外を見た。
整備された街道を、人々が行き交っている。
貴族も、平民も、商人も、農民も――。
同じ道を、歩いている。
「準備は、整っています」
「教育で、平民も学んだ」
「農業で、平民も豊かになった」
「インフラで、平民も自由に移動できるようになった」
「あとは――」
私は、国王を見た。
「制度を、変えるだけです」
国王は、長い沈黙の後――。
「……わかった」
彼は、立ち上がった。
「三ヶ月後、身分制度改革について――」
「正式な議会を開く」
「ありがとうございます!」
私は、深く頭を下げた。
その夜、城のバルコニーで。
「ついに、ここまで来たな」
ルシアンが、私の隣に立った。
「ええ」
私は、星空を見上げた。
「二年――長かったようで、短かった」
「お前、本当によく頑張ったな」
ルシアンが、私の肩を抱いた。
「私一人じゃ、できませんでした」
私は、彼を見上げた。
「あなたがいてくれたから」
「カイル殿下が、支援してくれたから」
「仲間たちが、協力してくれたから」
「そして――」
私は、微笑んだ。
「民衆が、信じてくれたから」
「エリシア」
ルシアンが、私の顔を両手で包んだ。
「愛している」
「私も」
私は、目を閉じた。
彼の唇が、私の唇に触れた。
深く、優しいキス。
「これから――」
ルシアンが、囁いた。
「最後の戦いが始まる」
「ええ」
私は、頷いた。
「でも、勝ちます」
「必ず、勝ちます」
星が、輝いていた。
希望の星のように。
明日への星のように。
「さあ、休もう」
「はい」
二人で、部屋に戻った。
長い一日だった。
でも、充実した一日。
そして――。
明日からは、最後の戦いが始まる。
身分制度改革。
最大の、そして最も困難な挑戦。
「でも、大丈夫」
私は、ベッドに横になりながら呟いた。
「ここまで来たんだから」
「必ず、成し遂げる」
深い眠りに落ちていった。
夢の中では――。
貴族と平民が、対等に話している世界。
身分に関係なく、才能が評価される世界。
誰もが、自由に夢を追える世界。
そんな未来を、見た。
「必ず、実現させる」
夢の中で、誓った。
長い戦いは、まだ続く。
でも、ゴールは――。
もう、すぐそこに見えていた。
王宮の大会議室には、五十人以上の領主が集まっていた。
「王国街道網計画」
私は、巨大な地図を壁に掲げた。
「これが、完成予想図です」
赤い線が、王国中を網の目のように結んでいる。
「王都を中心に、東西南北に主要街道」
「そこから、各領地を繋ぐ支線」
「全長、三千キロメートル」
場内が、どよめいた。
「三千キロ!?」
「そんな距離、完成させられるのか?」
「できます」
私は、断言した。
「期間は二年。段階的に建設します」
「まず、主要街道から」
地図を指差していく。
「王都からノルディアへの北街道――すでに完成」
「次は、王都から東部商業都市エルデンへ」
「その次は、南部農業地帯、西部鉱山地帯へ」
「でも――」
一人の領主が、手を上げた。
「費用は、どうするんだ?」
「良い質問です」
私は、別の書類を配布した。
「建設費用は、国庫と各領地で折半」
「ただし――」
「街道が完成すれば、商業が活性化します」
「関税収入、通行料収入が増えます」
「それを、建設費用の返済に充てます」
データを示す。
「試算では、五年で投資回収が可能です」
「五年……」
領主たちが、計算を始めた。
「それなら、やる価値があるかもしれない」
「だが」
別の領主が言った。
「我が領地には、険しい山がある」
「そこを通すのは、不可能だ」
「不可能ではありません」
私は、別の図面を見せた。
「トンネルを掘ります」
「トンネル!?」
「はい。山を貫く、長大トンネル」
場内が、再び驚きに包まれた。
「そんなこと、できるのか?」
「できます」
私は、前世の土木工学の知識を総動員して説明した。
「魔法と技術の融合です」
「岩盤を魔法で削り、支柱で補強する」
「換気システムも、魔法陣で構築します」
詳細な設計図を見せる。
「これなら――」
領主たちが、納得し始めた。
「本当に、できるかもしれない」
「では」
カイル王子が、立ち上がった。
「賛成の方、挙手を」
ゆっくりと、手が上がっていく。
最終的に――。
「全員一致で、可決!」
カイルが、宣言した。
「王国街道網計画、正式に承認されました!」
拍手が、響いた。
一週間後。
最初の建設現場――東街道。
王都から、商業都市エルデンまで、二百キロメートル。
「では、着工式を行います」
私は、スコップを手に取った。
そして、地面に突き刺す。
「これより、東街道建設を――開始します!」
「「「おおおお!!」」」
数百人の作業員が、歓声を上げた。
工事が、始まった。
測量班が、正確なルートを決める。
整地班が、地面を平らにする。
石材班が、道路の基礎を作る。
「順調ですね」
オスカーが、工程表を確認している。
「ええ。このペースなら、予定通り――」
その時。
「エリシア様! 問題です!」
技術者が、駆けてきた。
「どうしたの?」
「前方二十キロ地点――大きな川があります」
「知っています。架橋の計画がありますよ」
「いえ、それが――」
技術者が、青い顔で言った。
「今年は雨が多くて、川が増水しています」
「計画していた場所では、橋脚が立てられません」
「そんな……」
現場に行くと――。
濁流が、轟々と流れていた。
「これは……」
普段なら幅五十メートルの川が、百メートル以上に広がっている。
「この状態では、橋を架けられません」
技術者が、頭を抱えた。
「増水が収まるまで、待つしか――」
「待てません」
私は、川を見つめた。
「工期が遅れれば、全体計画に影響します」
「でも――」
「別の方法を、考えましょう」
その夜、宿で。
私は、前世の橋梁工学の教科書を思い出していた。
「増水した川に橋を架ける方法……」
ルシアンが、横で地図を見ている。
「川の上流、十キロ地点に――」
彼が、ある場所を指差した。
「岩盤がある」
「岩盤……?」
「ああ。ここなら、川幅も狭い」
「そして、岩盤なら橋脚が安定する」
「でも、十キロも迂回すれば――」
「時間がかかる、か?」
ルシアンが、計算した。
「確かに距離は伸びる。だが――」
「安全で確実な橋が作れる」
「それに――」
彼は、地図の別の場所を指差した。
「この迂回ルートは、三つの村を通る」
「今は孤立している村だ」
「つまり……」
私の目が、輝いた。
「経済効果が、より大きくなる!」
「その通りだ」
ルシアンが、微笑んだ。
「デメリットを、メリットに変えるんだ」
「素晴らしい!」
私は、彼を抱きしめた。
「ありがとう、ルシアン!」
「お、おい……」
彼の顔が、赤くなった。
「急に抱きつくな」
「だって、嬉しくて」
私は、彼を見上げた。
「あなたがいてくれて、本当に良かった」
ルシアンは、少し照れながら――。
「……私も、だ」
そして、私の額にキスをした。
翌日。
ルートを変更し、上流に橋を架けることにした。
「岩盤を基礎にします」
新しい設計図を描く。
「長さ、百メートル。石造アーチ橋」
「アーチ橋?」
技術者が、訊いた。
「はい。アーチ構造なら、強度が増します」
私は、前世の知識を説明した。
「重量が、アーチ全体に分散されるんです」
「なるほど……」
建設が、始まった。
まず、両岸の岩盤に土台を作る。
次に、中央に足場を組む。
そして、石を一つ一つ積み上げていく。
「慎重に! 一つでもズレたら、崩壊します!」
作業員たちが、真剣な顔で作業している。
二ヶ月後――。
「最後の石を、置きます!」
要石――アーチの頂点の石が、はめ込まれた。
そして――。
足場を外す。
橋が、自立した。
「成功だ……!」
歓声が、上がった。
「本当に、立った!」
「すごい……石だけで、こんな長い橋が!」
試しに、馬車を通してみる。
揺れもなく、安定している。
「完璧です、エリシア様!」
「みんなのおかげです」
私は、作業員たちに頭を下げた。
「ありがとうございました」
橋の完成から三ヶ月。
東街道の第一区間が、開通した。
王都からエルデンまで、整備された道。
「開通式を行います!」
カイル王子、各領主、そして多くの民衆が集まった。
「では――」
私は、リボンを切った。
「東街道、開通です!」
拍手と歓声。
最初の馬車が、新しい道を走り出す。
「速い!」
「揺れない!」
「こんなに快適な道、初めてだ!」
人々の喜びの声。
「エリシア様」
孤立していた村の村長が、近づいてきた。
「本当に、ありがとうございます」
「我が村は、今まで陸の孤島でした」
村長の目に、涙が浮かんでいた。
「でも、この道のおかげで――」
「王都と繋がることができました」
「物を売ることができます」
「子供たちを、街の学校に通わせることができます」
「これからは――」
村長が、笑顔になった。
「希望を持って、生きられます」
その言葉が、胸に響いた。
「こちらこそ、ありがとうございます」
私は、深く頭を下げた。
「道は、人を繋ぎます」
「そして、心も繋ぎます」
半年後。
東街道に続き、南街道も完成した。
そして――。
最大の難所、西街道の建設が始まった。
西部は、険しい山岳地帯。
「ここに、トンネルを掘ります」
私は、山を見上げた。
「全長、五キロメートル」
「五キロ……」
作業員たちが、不安そうな顔をした。
「本当に、掘れるんですか?」
「掘れます」
私は、断言した。
「魔法と技術を、組み合わせます」
まず、魔法で岩盤を削る。
「火の魔法で、岩を熱する」
「次に、水の魔法で急冷」
「岩にひびが入ります」
「そして、物理的に砕く」
実演してみせる。
ゴォォォ。
火の魔法が、岩を真っ赤に熱した。
次に、水をかける。
バキバキバキ。
岩にひびが入った。
「すげぇ……」
作業員たちが、感嘆の声を上げた。
「これなら、いけるかも!」
工事が、始まった。
両側から、同時に掘り進める。
毎日、数メートルずつ前進。
でも――。
「エリシア様、問題が!」
三ヶ月後、技術者が報告に来た。
「地下水脈に当たりました」
「水が、噴き出しています」
現場に行くと――。
トンネルの中が、水浸しになっていた。
「これは……」
「このままでは、作業ができません」
「排水を」
私は、指示を出した。
「魔法陣で、排水システムを構築します」
「それに――」
設計図を修正する。
「この水を、利用しましょう」
「利用?」
「はい。麓の村に、水を引きます」
「この山岳地帯は、水不足です」
「トンネルの水を、村に供給するんです」
技術者の目が、輝いた。
「それは……素晴らしいアイデアです!」
排水システムと水路を建設。
問題が、解決策に変わった。
一年後。
西街道のトンネルが――。
ついに、貫通した。
「繋がった!」
両側から掘り進めたトンネルが、中央で合流。
誤差は、わずか十センチ。
「すごい精度だ……」
技術者たちが、驚いている。
「測量が、完璧だったんです」
私は、微笑んだ。
「みんなの努力の結果です」
トンネルを、光が貫く。
美しい光景。
「やった……やったぞ!」
作業員たちが、抱き合って喜んでいる。
二年後。
全ての主要街道が、完成した。
王都を中心に、東西南北に伸びる道。
そして、各地を繋ぐ支線。
「王国街道網、完成です!」
国王陛下の前で、私は報告した。
「素晴らしい」
国王が、満足そうに頷いた。
「これで、王国は一つに繋がった」
「はい」
私は、深く頭を下げた。
「これも、陛下のご支援のおかげです」
「エリシア」
国王が、私を見た。
「お前は、本当にこの国を変えた」
「教育、農業、そしてインフラ」
「全てが、目に見えて良くなっている」
「ありがとうございます」
「だが――」
国王の表情が、真剣になった。
「最後の、そして最も困難な改革が残っている」
「身分制度改革、ですね」
「そうだ」
国王は、深くため息をついた。
「これが、一番難しい」
「わかっています」
私は、頷いた。
「でも――」
私は、窓の外を見た。
整備された街道を、人々が行き交っている。
貴族も、平民も、商人も、農民も――。
同じ道を、歩いている。
「準備は、整っています」
「教育で、平民も学んだ」
「農業で、平民も豊かになった」
「インフラで、平民も自由に移動できるようになった」
「あとは――」
私は、国王を見た。
「制度を、変えるだけです」
国王は、長い沈黙の後――。
「……わかった」
彼は、立ち上がった。
「三ヶ月後、身分制度改革について――」
「正式な議会を開く」
「ありがとうございます!」
私は、深く頭を下げた。
その夜、城のバルコニーで。
「ついに、ここまで来たな」
ルシアンが、私の隣に立った。
「ええ」
私は、星空を見上げた。
「二年――長かったようで、短かった」
「お前、本当によく頑張ったな」
ルシアンが、私の肩を抱いた。
「私一人じゃ、できませんでした」
私は、彼を見上げた。
「あなたがいてくれたから」
「カイル殿下が、支援してくれたから」
「仲間たちが、協力してくれたから」
「そして――」
私は、微笑んだ。
「民衆が、信じてくれたから」
「エリシア」
ルシアンが、私の顔を両手で包んだ。
「愛している」
「私も」
私は、目を閉じた。
彼の唇が、私の唇に触れた。
深く、優しいキス。
「これから――」
ルシアンが、囁いた。
「最後の戦いが始まる」
「ええ」
私は、頷いた。
「でも、勝ちます」
「必ず、勝ちます」
星が、輝いていた。
希望の星のように。
明日への星のように。
「さあ、休もう」
「はい」
二人で、部屋に戻った。
長い一日だった。
でも、充実した一日。
そして――。
明日からは、最後の戦いが始まる。
身分制度改革。
最大の、そして最も困難な挑戦。
「でも、大丈夫」
私は、ベッドに横になりながら呟いた。
「ここまで来たんだから」
「必ず、成し遂げる」
深い眠りに落ちていった。
夢の中では――。
貴族と平民が、対等に話している世界。
身分に関係なく、才能が評価される世界。
誰もが、自由に夢を追える世界。
そんな未来を、見た。
「必ず、実現させる」
夢の中で、誓った。
長い戦いは、まだ続く。
でも、ゴールは――。
もう、すぐそこに見えていた。
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