元魔王おじさん

うどんり

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一章

第27話 令嬢はブックメリア邸にて食卓を囲む

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屋敷に帰ったサリヴィア・ブックメリアは、身なりを整えると食卓へと赴いた。

テーブルにつく面々を見て、少し驚いた。今日は家族が揃っていた。

「お帰りなさい、サリヴィア」

母がこちらを向いて微笑んだ。

長い金色の髪をした、サリヴィアによく似た美しい女性だった。

「ただいま戻りました。今日は珍しく家族揃っての食事ですね」

言ってはみたが……素直に喜べない。

サリヴィアは、家族の表情を眺めながら思った。

父が鶏肉のハーブ焼きをかじり、ワイン片手にテーブルを叩いた。

やや肥満気味の身体。白髪まじりの深い灰色の髪をした、顔の大きい男だった。
しわのある顔には、力強い表情が浮かんでいる。

「先の襲撃事件――魔物に街へ入られたのは領主の慢心による警戒不足によるもの。そうは思わんかサリヴィアも」

「ええ、それもあるでしょうね。さすが父様です、思慮が深くていらっしゃる」

ここで何か批判しようものならうるさい。

サリヴィアは適当に相づちを打ってうなずいた。

家主がああではテーブルマナーもなにもあったものではないが、自分は慎ましく速やかに食事を済ませようと決心する。

「今が批判するチャンスなのだ!さて、どう段取りを練ったものか……」

サリヴィアの父は野心家だった。

先の襲撃事件を領主の批判材料とみるや、水を得た魚のように領主の権力を落とす算段を練り始めたのだった。

いずれ自分が実権を握る日を夢見ているらしい。

「…………」

ウォフナーはそれを聞いているのかいないのか、ずっと無言で思い詰めたような表情をしている。

彼はここ最近ずっとこの調子だ。

家では何を言っても上の空のことが多い。

町を守るために、考えることが多すぎると彼は言っていた。

考えすぎな気もするが。

「……ねえ、ちょっと聞いてますの、あなた? 最近仕事にかまけすぎではなくて?」

やや苛立ちながらウォフナーにとげのある言葉を向けるのは、ウォフナーの妻。
サリヴィアの義理の姉だった。

やや不機嫌そうなのは、ウォフナーとの間に子どもができず、最近実家の方からおしかりを受けたからだろう。

「…………」

母は母でそんな皆を笑顔で見守ることしかできない。

気苦労は感じているのか疲れた表情を一瞬見せるときがある。

サリヴィアは、オックステールのスープを見つめながら、愛想笑いを貼り付け直した。

――それから、ふと自分が一瞬闇に呑まれたような錯覚に陥る。

ああ、なんて。

なんて浅はかな家庭なのか。

たったこれだけの家族がまとまることもできない。

そして自分も手をこまねいていることしかできないことに腹が立つ。

サリヴィアは呆れたような悲しいような気分に小さくため息をついた。


それから、コーラルたちと山の中で食べた食事を思い出した。

こんな食卓より、あのときの食卓の方がずっと暖かくて楽しいものだった。

血の繋がっている家族とは、仮面を貼り付けながら上っ面な会話しかできない。

しかし自分にはどうすることもできない。

かといって、誰も現状を救ってくれない。

……救われたい?誰かに救ってほしいのか、私は?
誰かに、この現状と自分の未来を変えてほしいのか?
情けない。他力本願なんて。

…………。

……わっとと、また物思いにふけってしまった。

思考に気を取られて顔からだんだん愛想笑いが剥がれ落ちていたことに気づいて、サリヴィアは慌てて仮面を装着し直した。
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