【完結】動物と話せるだけの少女、森で建国して世界の中心になりました

なみゆき

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 王都を追われた私が、ひとり森へと足を踏み入れた瞬間
―― 木々のざわめきが止まり、空気がぴたりと静まった。


「……なんだか、見られてる気がする」



その直後、茂みの奥からウサギがぴょんと飛び出し、私の前にぺたんとひれ伏した。 
続いてシカが優雅に現れ、頭を垂れて一礼。 フクロウは枝の上から「ホー」と敬礼し、リスたちは木の実を捧げ持って整列した。



「伝説の動物使い様が来たぞー!」 
「インコ界の英雄だって聞いたクエッ!」
 「“パンの耳の聖女”って呼ばれてるニャ!」



どうやら、過去に助けた動物たちが、“口コミ”ならぬ“鳴き声ネットワーク”で噂を広めていたらしい。 


王宮でインコの羽を直した話、迷子のリスを見つけた話、王女の猫に正しい爪とぎ場所を教えた話
――すべてが、いつの間にか伝説化していた。


私は戸惑いながらも、ポケットからパンの耳を取り出して差し出す。

「……これ、いる?」


その瞬間、動物たちは歓喜の雄叫びを上げた。

「パンの耳だー!」 
「神の食べ物ニャ!」 
「ミナ様、最高クエッ!」


ウサギは跳ね回り、シカは涙を流し、フクロウは「ホー!」と三回連続で叫んだ。 
リスたちはパンの耳を神棚に祀り始め、インコは「ミナ様! ミナ様!」と連呼する。


私は苦笑しながら、つぶやいた。

「なんでこんなことに……」


だが、動物たちの瞳は真剣だった。 


彼らは、私を“仲間”としてではなく、“導く者”として迎えていた。


その夜、森の奥に小さな小屋が建てられた。
ウサギが草を運び、カメが床を磨き、フクロウが設計図を読み上げる。 

私はその中心で、パンの耳をかじりながら、静かに笑った。


こうして、森の住人としての生活が始まった。 

そして、私の知らぬところで
――“動物王国建国”の第一歩が、静かに踏み出されていた。
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