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3 動き出した運命
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「それが6年前の出来事です。今では、ダリムさんが紹介してくれる人たちがここにやってきます。死ぬ前にペットの声が聞きたい、弱っていくペットの望みを叶えてあげたい。そんな依頼が多いです」
「…そうですか」
「私は、これは両親がくれた能力だと思っているんです。だから、誰かを傷つけるために使うつもりはありません」
「ダリムとは、ダリム・アーノルド公でしょうか。アーノルド公爵家の当主の」
「ええ。その時はまだご当主様ではありませんでしたが」
「アーノルド公爵家は王家にも深いかかわりがある貴族です。十分信頼に足ります」
「ハリオ様は、ダリムさんから話を聞いて来られたのではないのですか?」
サーシャの言葉にハリオは首を横に振る。どこか苦笑するように答えた。
「侍女たちが噂話をしていたので。…藁にもすがる気持ちでやってきました。でも、アーノルド公がかかわっているのなら安心です」
「ダリムさんには本当によくしてもらっています。この家も、仕事場が必要だろうって、空き家を改築して作ってくれました。ここは森に近いですから、何かあれば動物たちが駆けつけてくれます。…ダリムさんには本当に感謝しているのです。そして、今では、父親のように思っています」
幸せそうな微笑んだ。そんなサーシャにハリオはすがるような目を向けた。
「サーシャ様!」
「はい。…あの、何でしょうか?」
「どうか、私と一緒に、王宮に来てくれませんか?」
「…王宮、ですか?」
「ええ。私がつかえている第二王子のユリウス様のホワイトライオンが、この頃、全然ご飯を食べないのです。近づけば威嚇するようになり、手の施しようがなくて」
「…」
「彼は、ユリウス王子が唯一大切にしている存在なんです。だから!」
『サーシャ、この人は、怪しくないよ』
「オース」
『この人、いい人。でも、僕は、王子は嫌いだよ。だって、彼は冷たいとよく聞く。街のみんな、そう言ってるよ。だから、きっと君は傷つく。僕は反対だ』
「オース」
「サーシャ様?」
「いえ、あの…もし、私が断ったらどうなりますか?」
サーシャの問いにハリオは静かに首を横に振った。
「どうもなりませんよ。サーシャ様にご迷惑はおかけしません。まあ、…私は困ってしまいますが」
苦笑いを浮かべるハリオ。そんな彼に、サーシャは考え込むように口を閉じた。
窓の外は穏やかな風が吹いていた。タルジュア国の気候は平均していつも穏やかである。雨季は少ない。しかし、定期的な雨は降るため、作物はよく育った。国土は広く、一年中過ごしやすいため、移民も多い。
もちろん、一見、穏やかなだけでいろんな問題があるだろう。動物たちが世間話のようにする話の中には、人々のひどい行いの話も含まれていた。国を治めるというのは、大変なことであるということは想像に難くない。第二とはいえ王子。王宮では休まらないこともあるのではないだろうか。だからこそ、人に冷たくなるのではないか。
「助けには、ならないかもしれません」
「え?」
「それでもよろしいですか?」
突然の言葉にハリオは一瞬反応に遅れ、しかし、すぐに首を縦に何回も振った。
「も、もちろんです!よろしくお願いします」
九十度に腰を曲げて頭を下げる。そんな様子にサーシャは苦笑を浮かべた。
『サーシャ!』
怒るような声。サーシャはオースを見た。
「オース、ごめんね。だけど、私行きたいよ」
『…サーシャ』
「だって、私が行けば解決するかもしれないんだから」
『……そっか、もう君は、11歳の子供ではないんだね』
「うん。もう、17歳だから。大人じゃないかもしれないけど、子供じゃないよ」
『そうだったね…』
「でもね、オース、ついてきてね」
『僕がついていかないなんて思ったのかい?』
オースの言葉にサーシャは頬を上げながら首を横に振った。
「ちっとも」
『だよね。…もう、しょうがないな!君の決断を尊重するよ。でも、君が傷ついたら、僕は、王子の頭をつつくからね!』
「王子様だよ?」
『そんな、人間界の決まり事なんか、知らないさ』
そう高らかに笑うオース。そんなオースの声につられて、サーシャは嬉しそうに「そうだね」と笑った。
「…そうですか」
「私は、これは両親がくれた能力だと思っているんです。だから、誰かを傷つけるために使うつもりはありません」
「ダリムとは、ダリム・アーノルド公でしょうか。アーノルド公爵家の当主の」
「ええ。その時はまだご当主様ではありませんでしたが」
「アーノルド公爵家は王家にも深いかかわりがある貴族です。十分信頼に足ります」
「ハリオ様は、ダリムさんから話を聞いて来られたのではないのですか?」
サーシャの言葉にハリオは首を横に振る。どこか苦笑するように答えた。
「侍女たちが噂話をしていたので。…藁にもすがる気持ちでやってきました。でも、アーノルド公がかかわっているのなら安心です」
「ダリムさんには本当によくしてもらっています。この家も、仕事場が必要だろうって、空き家を改築して作ってくれました。ここは森に近いですから、何かあれば動物たちが駆けつけてくれます。…ダリムさんには本当に感謝しているのです。そして、今では、父親のように思っています」
幸せそうな微笑んだ。そんなサーシャにハリオはすがるような目を向けた。
「サーシャ様!」
「はい。…あの、何でしょうか?」
「どうか、私と一緒に、王宮に来てくれませんか?」
「…王宮、ですか?」
「ええ。私がつかえている第二王子のユリウス様のホワイトライオンが、この頃、全然ご飯を食べないのです。近づけば威嚇するようになり、手の施しようがなくて」
「…」
「彼は、ユリウス王子が唯一大切にしている存在なんです。だから!」
『サーシャ、この人は、怪しくないよ』
「オース」
『この人、いい人。でも、僕は、王子は嫌いだよ。だって、彼は冷たいとよく聞く。街のみんな、そう言ってるよ。だから、きっと君は傷つく。僕は反対だ』
「オース」
「サーシャ様?」
「いえ、あの…もし、私が断ったらどうなりますか?」
サーシャの問いにハリオは静かに首を横に振った。
「どうもなりませんよ。サーシャ様にご迷惑はおかけしません。まあ、…私は困ってしまいますが」
苦笑いを浮かべるハリオ。そんな彼に、サーシャは考え込むように口を閉じた。
窓の外は穏やかな風が吹いていた。タルジュア国の気候は平均していつも穏やかである。雨季は少ない。しかし、定期的な雨は降るため、作物はよく育った。国土は広く、一年中過ごしやすいため、移民も多い。
もちろん、一見、穏やかなだけでいろんな問題があるだろう。動物たちが世間話のようにする話の中には、人々のひどい行いの話も含まれていた。国を治めるというのは、大変なことであるということは想像に難くない。第二とはいえ王子。王宮では休まらないこともあるのではないだろうか。だからこそ、人に冷たくなるのではないか。
「助けには、ならないかもしれません」
「え?」
「それでもよろしいですか?」
突然の言葉にハリオは一瞬反応に遅れ、しかし、すぐに首を縦に何回も振った。
「も、もちろんです!よろしくお願いします」
九十度に腰を曲げて頭を下げる。そんな様子にサーシャは苦笑を浮かべた。
『サーシャ!』
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「うん。もう、17歳だから。大人じゃないかもしれないけど、子供じゃないよ」
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「でもね、オース、ついてきてね」
『僕がついていかないなんて思ったのかい?』
オースの言葉にサーシャは頬を上げながら首を横に振った。
「ちっとも」
『だよね。…もう、しょうがないな!君の決断を尊重するよ。でも、君が傷ついたら、僕は、王子の頭をつつくからね!』
「王子様だよ?」
『そんな、人間界の決まり事なんか、知らないさ』
そう高らかに笑うオース。そんなオースの声につられて、サーシャは嬉しそうに「そうだね」と笑った。
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