【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子

文字の大きさ
29 / 78

第29話六年前~ブリリアントside~

しおりを挟む

「シュゼット側妃。いい加減覚えてください。貴女より歳下のベリー伯爵夫人は既にマスターしていますのよ? 彼女にできた事が、どうして貴女にはできませんの?」

「……申し訳ありません。私は平民同然の暮らしでしたので……覚えが悪いのです……伯爵夫人のようなきちんとした貴族の方とは違うのです」

「何を言ってますの? ベリー伯爵夫人は貴女と違って“本物の平民出身”ですわよ!ベリー劇場の看板女優だと説明しましたでしょう!?」

 他の妃達がキレるのも仕方のない状況でした。
 幾ら言っても、勉強をする気のないシュゼット側妃のやる気を出させるために行った異例の措置。それは『新たな公式愛妾と共に勉強をして覚えさす』というものでした。

 提案した妃もそうですが、承認した王妃殿下も血迷われたかと思いました。ですが、これは必要なことでした。
 
「私も頑張っているのですが……これ以上は……」

 涙ながらに語るシュゼット側妃は正直鬱陶しいですわ。
 別に虐めている訳でもないのに涙を流すのです。勉強をするように注意を促しているだけですのに顔を俯いてしまうのです。気分転換にとテラスで休息の茶会を開いても一人つまらなそうな態度。会話に参加する気配すらありません。
 私も何度かシュゼット側妃と会って話をしましたが、何時も悲し気で怯えたような表情しか向けられません。
 シュゼット側妃が、今までまともに教育されていなかった事は皆も承知していました。そのため、他の側妃たちも最初は同情的でしたが……今では、「最初の同情心を返していただきたい」と訴えております。
 王妃殿下もお手上げ状態で、もう国王陛下にお伺いを立てるしかないと頭を抱えていらっしゃいました。

 そこで提案された新たな公式愛妾が、ベリー伯爵の奥方様。つまり、ルース・ベリー伯爵夫人だったわけです。彼女は王都で注目の人気女優。貧民街産まれで九歳の頃からオレンジ売りを始め、十五歳で女優に転身した成功者でした。十二歳で女優を志し、彼女を見込んだ劇団のオーナー兼劇作家のオーギュスト・ベリー伯爵は慧眼の持ち主でした。彼女は富裕層から下層階級まで幅広いファン層を持ち、人気を不動のものとしているのです。もっとも、そのせいで国王陛下に目を付けられてしまったのですが、流石は職業女性。陛下相手に一歩も譲らず、愛人契約を結んだと言う女傑でした。

 彼女は「ベリー劇場の女優ルース」として、国王陛下にこう言ったそうです。

『私は女優よ、商品なの。大貴族だろうが、王様だろうが恋愛関係のない男とタダで寝る程安くはないわ。どうしても私を囲いたいと言うのなら、私個人に見合ったものを用意して頂戴。この国一番の女優になろうとしている私に見合ったものをね。言っておくけど、私は囲われ者になっても女優は止めないわ。あら?貴男の後ろの護衛、物凄い顔になっているわね。今にも斬りかかってきそうな雰囲気だわ。私は何もおかしな事は言ってないわよ?不敬罪?上等じゃない。そんなに殺したいなら殺せばいいわ。ただし、殺すのは私が舞台に上がった時にして頂戴。何故ですって?私は女優なのよ。死ぬなら舞台の上よ!事前に死ぬのが分かっているのならとっておきの演目にしておくわ。腐れ外道の国王と護衛、どうかしら?』

 
 陛下相手にここまで言える人物は、この国で彼女だけではないでしょうか。流石のお母様もまだここまでの事は仰っていませんから。護衛騎士は絶句なさっていたそうですが、陛下は大笑いして愛人契約に上機嫌でサインしたという話です。

 平民出身者が公式愛妾になるなど前代未聞。

 後宮に入るにしてもルールと秩序がございます。
 「妃」ほどではありませんが、やはり身分制度はありました。この場合、後宮の身分制度と言うべきなのかもしれませんね。
 
 王妃は、侯爵家以上の家柄の令嬢が選ばれます。正式な唯一の妃という絶対的な存在として後宮ではなく王宮で暮らしております。
 
 後宮に住むのは王妃以外の女性たち側妃、公式愛妾、愛妾




 

しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...