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第4話 皇后の頭痛の種4
しおりを挟む「背丈は、私の頭一つ分低いのが良いです。隣に立つ時に小さ過ぎるとバランスが悪いですからね。見ただけでアンバランスだ。高いヒールを履けば身長などどうにでもなるでしょうが、ダンスを踊る際は負担になるでしょう。高いヒールのせいで上手く踊れなかったりして恥を晒されても困ります。声は高くもなく低くもない。良く響く声の持ち主が最適です。甲高い声は女狐達だけで十分ですし、玉を転がすような声は花園に行けば幾らでもいますから。まあ、声が通りにくければ腹式呼吸と滑舌の練習を重ねれば改善されると言いますから始めから通りやすい声でなくともいいでしょう」
「……」
「勿論、見た目だけで頭空っぽなのでは困ります。ある程度の外国語は理解できるレベルでないと、外交を有利に進められませんからね。まあ、五ヶ国の言語を話せれば文句は言いません。政治や軍に関しての知識も必要でしょう。かと言って頭でっかちの女でも困る。柔軟性に富んで臨機応変に対応できなければ話になりませんからね。なにしろ、海千山千の国内外の政治家と渡り歩かなけらばならないし、こちらの足を引っ張るであろう腐った貴族を逆に貶めなければならない」
「……」
「ああ!武術の心得があると尚いいです。いざという時、戦えないのでは命が幾らあっても足りない。馬に乗れなければ敵から逃げ切る事もできないし、剣を握らなければ最悪の辱めを受ける事にもなる。まあ、自害方法は毒でもいいですが、敵陣営に損害を与える死に方をしてくれなければ意味がありませんから、やはり武術は必要です。まあ、それに関しては私が自ら教えて差し上げてもいいでしょう。下手な人間に教えられて変な癖がついたり、筋肉モリモリになってしまっては元も子もありません。妃が『ゴリラ』にならないように私が気を付けてやらねば」
「……」
「妻には『夫を癒す』という役割もありますからね。太すぎず瘦せすぎず程よく肉付きの良い、それでいてほっそりとした肢体。抱きしめた感触が柔らかくないと興ざめしてしまいます。ああ、胸の大きさに拘りません。そんなものは幾らでも大きくできるんですから。これは私の腕の見せ所です。何も知らない真っ白な妻を手取り足取り開発して最高の女性に仕立てて見せましょう!」
「……」
「私は父や祖父のように後宮を持つつもりはありません。争いの種が増えるだけですからね。父上の時のように血で血を争う戦いは国を疲弊させる元です。周りの貴族に『都合の良い皇子』だったからこそ父上は生き残る事ができましたが、その被害は甚大ですよ。一般市民が何千人犠牲になった事か。そんな過去の愚行を再現させないためにも、私は妻ただ一人を愛する予定です。まあ、妻になる女性にはバンバン子供を産んでもらわなければなりませんからね。当然、安産型を選ぶつもりです」
未だにつらつらと『理想の女性』を語る息子に言いたい。
「そんな女がこの世にいるものか!」と。
帝国中探しても、いや、世界中探してもいないであろう『理想の女性』。いっそ、今すぐ馬鹿息子を殴り倒して正気に戻させるべきではないかと悩む。
女に無知という訳でもなく、高級娼館に“馴染み”まで作っている馬鹿息子が一体何を血迷った事を言っているのか。
この馬鹿が言う『理想の女性』は男に例えるならば、「大帝国を一代で築いた英雄的指導者であり、眉目秀麗で文武両道、性格も極めてよく妻一人をこよなく愛する男」と言う事だ。馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、本物の馬鹿だ。そんな男がこの世にいれば、この母が物にしている。決して存在しない幻を追いかけるようなものではないか!
これだけは断言できる。
馬鹿息子に任せたら最後、一生結婚できないだろうと。
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