3 / 20
第3話 皇后の頭痛の種3
アレウス・ヴィクトリユ・ガリア。
ガリア帝国の現皇帝クロヴィスの第三皇子として誕生したアレウスは、幼少の頃からその類稀なる才覚を発揮していた。勉強だけでなく武術も人並み外れて出来た上に、アレウス本人も教師達によく食い付いていた。皇子としての教育は順調に進んでいた。先に生まれた異母兄達を押さえて皇太子に選ばれたのも「皇后の息子」というだけでなく、アレウス本人の才覚も大いに関係していた。
ただ、皇室や貴族が持つ古い伝統や価値観に、アレウスは猛反発した。
お陰で幼少期の数年は大変だった。
実情を知らない大勢の者達はアレウスの反抗期が終わったと思っているようだが、そうではない。この馬鹿息子は年中反抗期である。悪戯や暴言が飛び交わなくなったけれど、別方面にシフトしたと言ってもいい。それは、一言で言うと「害虫駆除」。特権階級を始めとした「使えない者達」の排除だ。しかも、自分の仕業だと一切の証拠を残さない徹底ぶり。
『え? 使えない処か害にしかならない連中なんていらいでしょう? 見せしめのためにもココは一発ド派手にかましてやりましょう! 汚い花火を打ち上げてやりますよ!』
そんなことを爽やかな笑顔で言って実行に移す皇太子など前代未聞だろう。
だが、皇族としては正しい行いだった。
アレウスは皇位継承権を持つ皇子として、また皇帝となる者として、相応しい教育を受けていたのだ。
この頃から息子は意識していたのか、それとも無自覚なのかは分からないけれど将来を見越して選別を行っていたように思う。
自分にとって使えそうな人材だと判断した場合に限り、そこまで厳しい処置をしなかった。
『反省しているんだし、チャンスは与えないとね』
と言い放ち、実に上手く飴と鞭を使い分けている。
あれには流石の私も舌を巻いたものだ。アレウスの行動の結果、あの子を公然と悪し様に言う者はいなくなった。「使えない者達」は悉く没落、あるいは墓の下。
まったく、何処でそんな知恵を付けてきたのか。もっとも、アレウスは膨大な魔力量を秘めているためそれを上手く利用して事に当たっていると考えるべきだろう。
しかし――
『あ~、早く大人になりたいですねぇ。そうしたら思う存分暴れられるんですけどね』
何度、聞いたことだろうか。
今も十分好き勝手にやっているというのに。これ以上何をするというのか……。
「そんなに結婚するのが嫌なのですか?」
「母上。母上は勘違いなさっているようですが、私は結婚するのが嫌なのではありません。母上が決めた相手と結婚するのが嫌なのです。私は自分で妃を選ぶと決めているんですから」
「……それは初耳です」
「今、初めて言いましたから。なにしろ、母上は私の意見を聞かずに事故物件といっても過言ではない相手ばかりを見繕ってきますからね。あのような者達から妃を選んだら最後、国が傾きかねません。自意識と名誉欲に目がくらんだ中身空っぽな狡賢い狐は如何に楽をして贅沢をする事しか頭にないようですから。そこに厄介な外戚という名の害虫が王家に蔓延しても困るでしょう。それに、私にも『理想』というものがありますので」
「……理想? そんなものがあったのですか?」
「母上。母上は私を何だと思っているんですか? 当然、『理想の女性』位います」
「そ……う。それは知らなかったわ。で?」
「『で?』、とは?」
「どんな女性が好みなのです」
まずは息子の女の好みをリサーチしてから次に一手を放とう。
そう考えた私は悪くない。
「そうですね。私の妃になるということは引いては未来の皇后になるということです。そのためには誰もが認める絶世の美女でなければなりません」
後に、「聞くのではなかった」と後悔する馬鹿息子の『理想の女性』語りはまだ始まったばかりだった。
ガリア帝国の現皇帝クロヴィスの第三皇子として誕生したアレウスは、幼少の頃からその類稀なる才覚を発揮していた。勉強だけでなく武術も人並み外れて出来た上に、アレウス本人も教師達によく食い付いていた。皇子としての教育は順調に進んでいた。先に生まれた異母兄達を押さえて皇太子に選ばれたのも「皇后の息子」というだけでなく、アレウス本人の才覚も大いに関係していた。
ただ、皇室や貴族が持つ古い伝統や価値観に、アレウスは猛反発した。
お陰で幼少期の数年は大変だった。
実情を知らない大勢の者達はアレウスの反抗期が終わったと思っているようだが、そうではない。この馬鹿息子は年中反抗期である。悪戯や暴言が飛び交わなくなったけれど、別方面にシフトしたと言ってもいい。それは、一言で言うと「害虫駆除」。特権階級を始めとした「使えない者達」の排除だ。しかも、自分の仕業だと一切の証拠を残さない徹底ぶり。
『え? 使えない処か害にしかならない連中なんていらいでしょう? 見せしめのためにもココは一発ド派手にかましてやりましょう! 汚い花火を打ち上げてやりますよ!』
そんなことを爽やかな笑顔で言って実行に移す皇太子など前代未聞だろう。
だが、皇族としては正しい行いだった。
アレウスは皇位継承権を持つ皇子として、また皇帝となる者として、相応しい教育を受けていたのだ。
この頃から息子は意識していたのか、それとも無自覚なのかは分からないけれど将来を見越して選別を行っていたように思う。
自分にとって使えそうな人材だと判断した場合に限り、そこまで厳しい処置をしなかった。
『反省しているんだし、チャンスは与えないとね』
と言い放ち、実に上手く飴と鞭を使い分けている。
あれには流石の私も舌を巻いたものだ。アレウスの行動の結果、あの子を公然と悪し様に言う者はいなくなった。「使えない者達」は悉く没落、あるいは墓の下。
まったく、何処でそんな知恵を付けてきたのか。もっとも、アレウスは膨大な魔力量を秘めているためそれを上手く利用して事に当たっていると考えるべきだろう。
しかし――
『あ~、早く大人になりたいですねぇ。そうしたら思う存分暴れられるんですけどね』
何度、聞いたことだろうか。
今も十分好き勝手にやっているというのに。これ以上何をするというのか……。
「そんなに結婚するのが嫌なのですか?」
「母上。母上は勘違いなさっているようですが、私は結婚するのが嫌なのではありません。母上が決めた相手と結婚するのが嫌なのです。私は自分で妃を選ぶと決めているんですから」
「……それは初耳です」
「今、初めて言いましたから。なにしろ、母上は私の意見を聞かずに事故物件といっても過言ではない相手ばかりを見繕ってきますからね。あのような者達から妃を選んだら最後、国が傾きかねません。自意識と名誉欲に目がくらんだ中身空っぽな狡賢い狐は如何に楽をして贅沢をする事しか頭にないようですから。そこに厄介な外戚という名の害虫が王家に蔓延しても困るでしょう。それに、私にも『理想』というものがありますので」
「……理想? そんなものがあったのですか?」
「母上。母上は私を何だと思っているんですか? 当然、『理想の女性』位います」
「そ……う。それは知らなかったわ。で?」
「『で?』、とは?」
「どんな女性が好みなのです」
まずは息子の女の好みをリサーチしてから次に一手を放とう。
そう考えた私は悪くない。
「そうですね。私の妃になるということは引いては未来の皇后になるということです。そのためには誰もが認める絶世の美女でなければなりません」
後に、「聞くのではなかった」と後悔する馬鹿息子の『理想の女性』語りはまだ始まったばかりだった。
あなたにおすすめの小説
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
【完結】呪言《ことほぎ》あなたがそうおっしゃったから。
友坂 悠
恋愛
「君はまだ幼い、私は君を大事にしたいのだ」
あなたがそうおっしゃったから。
わたくしは今までお飾りの妻でがまんしてきたのに。
あなたがそうおっしゃったから。
好きでもない商会のお仕事を頑張ってこなしてきたのに。
全部全部、嘘だったというの?
そしたらわたくしはこれからどうすればいいっていうの?
子供の頃から将来の伴侶として約束された二人。
貴族らしく、外あたりが良く温厚に見えるように育ったラインハルト。
貞淑な令嬢、夫を支えるべき存在になるようにと育てられたアリーシア。
二人は両家に祝福され結婚したはず、だった。
しかし。
結婚したのはラインハルトが18になった歳、アリーシアはまだ14歳だった。
だから、彼のその言葉を疑いもせず信じたアリーシア。
それがまさか、三年後にこんなことになるなんて。
三年間白い結婚を継続した夫婦は子を残す意思が無いものと認められ、政略的な両家のしがらみや契約を破棄し離縁できる。
それがこの国の貴族の婚姻の決まりだった。
元は親同士の契約に逆らって離縁しやり直すための決まり事。
もちろん、そんな肉体的繋がりなど無くても婚姻を継続する夫婦は存在する。
いや、貴族であれば政略結婚が当たり前、愛はなくても結婚生活は続いていく。
貴族の結婚なんて所詮そんなもの。
家同士のつながりさえあれば問題ないのであれば、そこに愛なんてものがなくってもしょうがないのかも、知れない。
けれど。
まさかそんなラインハルトから離婚を言い出されるとは思ってもいなかったアリーシア。
自分は傾いた家を立て直すまでのかりそめの妻だったのか。
家業が上手くいくようになったらもう用無しなのか。
だまされていたのかと傷心のまま実家に戻る彼女を待っていたのは、まさかのラインハルトと妹マリアーナの婚約披露。
悲しみのまま心が虚になったまま領地に逃げ引き篭もるアリーシアだったが……
夫と妹に、いや、家族全てから裏切られたお飾り妻のアリーシア。
彼女が心の平穏を取り戻し幸せになるまでの物語。
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。