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12.七年前2
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『市井への視察に行っているだけさ』
『コニーは案内してくれているんだよ』
『庶民のことを知るのは必要なことだろ?』
『あれだ、抜き打ちテストってやつ?』
『生の声を聞くのは大事だろ?』
愚息の言葉に脱力した記憶は新しい。
社会勉強だと言わんばかりのセリフの数々。
最初はわざと言っているのかとも考えたのだが……。
「皮肉かとも思っていたが本心だったとは」
愚息は、それらをすることによって生じる不利益をまったく理解していなかった。
王宮を脱走する王太子。
それに協力する生徒会役員達。
愚息を含めてアホとしか言いようがない言動だった。
「王太子殿下を護衛もつけずに街中を連れ回すなど正気を疑う行為だ」
護衛なしで危険にさらされる可能性を考慮していない点についても頭を抱えるしかなかった。
「王太子殿下に王宮を抜け出された件で誰が責任を取ると思っているのか」
愚息のことだ。
何も考えていないのだろう。
それに関しては王太子殿下も同じだ。
「自分付きの護衛や侍女達が総入れ替えされていても思うところがないとはな」
誰かが責任を取らねばならなかった。
割を食ったのは当然、王太子殿下付きの者達。
全員がクビを言い渡された。
『分かってはいるんです。このような失態を犯した自分の責任だということは……。ですが、王太子殿下ご自身が王宮を脱走するだなんて誰が想像できるでしょうか』
若い護衛の言葉は正しい。
何処の世界に、安全な王宮から抜け出す王子がいる?
ここにいたが……。
だが、それを考慮に入れて護衛の仕事をまっとうしろ、というのは酷だろう。
侍女にしてもそうだ。
『私どもの仕事内容に〝王太子殿下の監督責任〟があったなど初耳でございます。されど、それが王宮の決まりだと仰るのなら、従うしかございません』
ベテランの侍女は皮肉交じりにそう言って王宮を去っていった。
これは後から知ったことだが、ベテランの侍女は子爵家出身で、男爵家に嫁ぎ、早くに夫を亡くして未亡人になった女性だ。
子供を育てるため、侍女になっていたようで、かなり仕事ができたらしい。
「侍女長に」との声もあったようだが、「子育て中は」と辞退するような女性だった。子供を優先する良い母親であることは有名で、だからこそ、王太子付きになっていた。
彼女が去ったことによって不利益を被ったのは王宮の方だ。
『トカゲの尻尾切りとはこのことですね。短い間でしたが、お世話になりました』
新人の侍従は冷笑交じりの言葉を吐いて、王宮を去った。
言われた側は正論すぎて反発も覚えなかったとか。
大型新人、とまで言われていた侍従は、当然だが仕事ができた。
王太子付きになったのもその優秀さゆえである。
そんな侍従を失えば、王太子殿下の仕事の効率が落ちるのは当然だった。
書類の誤字が増えた。
計算間違いが増えた。
王太子の印が、微妙にずれていた。
などなど。
ひとつひとつは小さなミスでも、積み重なれば膨大な量になるものだ。
新しい侍従は、何かに付けて「大型新人と呼ばれた元侍従」と比べられた。
誰に?
もちろん、王太子殿下にだ。
『前の侍従なら、私が言う前に資料を机に置いてくれていたのだが』
『前の侍従なら、事前の打ち合わせに色々と準備をしてくれたものだ』
『前の侍従なら――』
こんなことを言われ続ければ誰だって嫌になる。
そのせいか、王太子付きの侍従は長続きしなかった。
中にはノイローゼ気味になって辞めた者までいたくらいだ。
最終的には、持ち回り制になった。
「ああ、持ち回り制になったのは何も侍従だけではないな」
『コニーは案内してくれているんだよ』
『庶民のことを知るのは必要なことだろ?』
『あれだ、抜き打ちテストってやつ?』
『生の声を聞くのは大事だろ?』
愚息の言葉に脱力した記憶は新しい。
社会勉強だと言わんばかりのセリフの数々。
最初はわざと言っているのかとも考えたのだが……。
「皮肉かとも思っていたが本心だったとは」
愚息は、それらをすることによって生じる不利益をまったく理解していなかった。
王宮を脱走する王太子。
それに協力する生徒会役員達。
愚息を含めてアホとしか言いようがない言動だった。
「王太子殿下を護衛もつけずに街中を連れ回すなど正気を疑う行為だ」
護衛なしで危険にさらされる可能性を考慮していない点についても頭を抱えるしかなかった。
「王太子殿下に王宮を抜け出された件で誰が責任を取ると思っているのか」
愚息のことだ。
何も考えていないのだろう。
それに関しては王太子殿下も同じだ。
「自分付きの護衛や侍女達が総入れ替えされていても思うところがないとはな」
誰かが責任を取らねばならなかった。
割を食ったのは当然、王太子殿下付きの者達。
全員がクビを言い渡された。
『分かってはいるんです。このような失態を犯した自分の責任だということは……。ですが、王太子殿下ご自身が王宮を脱走するだなんて誰が想像できるでしょうか』
若い護衛の言葉は正しい。
何処の世界に、安全な王宮から抜け出す王子がいる?
ここにいたが……。
だが、それを考慮に入れて護衛の仕事をまっとうしろ、というのは酷だろう。
侍女にしてもそうだ。
『私どもの仕事内容に〝王太子殿下の監督責任〟があったなど初耳でございます。されど、それが王宮の決まりだと仰るのなら、従うしかございません』
ベテランの侍女は皮肉交じりにそう言って王宮を去っていった。
これは後から知ったことだが、ベテランの侍女は子爵家出身で、男爵家に嫁ぎ、早くに夫を亡くして未亡人になった女性だ。
子供を育てるため、侍女になっていたようで、かなり仕事ができたらしい。
「侍女長に」との声もあったようだが、「子育て中は」と辞退するような女性だった。子供を優先する良い母親であることは有名で、だからこそ、王太子付きになっていた。
彼女が去ったことによって不利益を被ったのは王宮の方だ。
『トカゲの尻尾切りとはこのことですね。短い間でしたが、お世話になりました』
新人の侍従は冷笑交じりの言葉を吐いて、王宮を去った。
言われた側は正論すぎて反発も覚えなかったとか。
大型新人、とまで言われていた侍従は、当然だが仕事ができた。
王太子付きになったのもその優秀さゆえである。
そんな侍従を失えば、王太子殿下の仕事の効率が落ちるのは当然だった。
書類の誤字が増えた。
計算間違いが増えた。
王太子の印が、微妙にずれていた。
などなど。
ひとつひとつは小さなミスでも、積み重なれば膨大な量になるものだ。
新しい侍従は、何かに付けて「大型新人と呼ばれた元侍従」と比べられた。
誰に?
もちろん、王太子殿下にだ。
『前の侍従なら、私が言う前に資料を机に置いてくれていたのだが』
『前の侍従なら、事前の打ち合わせに色々と準備をしてくれたものだ』
『前の侍従なら――』
こんなことを言われ続ければ誰だって嫌になる。
そのせいか、王太子付きの侍従は長続きしなかった。
中にはノイローゼ気味になって辞めた者までいたくらいだ。
最終的には、持ち回り制になった。
「ああ、持ち回り制になったのは何も侍従だけではないな」
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