【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子

文字の大きさ
31 / 37
番外編

30.公妃殿下1

しおりを挟む

「初めまして、マリア。私はフリッツだ。君の伯父だよ。
すっかり、大きくなったね。といっても、会うのは初めてだけど、マリアは弟のエルンストに似ているから直ぐに分かったよ。
マリアは弟と同じだからね。君がだと聴いたけど成長過程で色が変化したのかな?褐色と聴いた時はてっきりキャサリン嬢最後の王妃に似るものだとばかり思っていたよ」

一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
とある修道会の視察。
その場所に私と因縁のある男がいることは分かっていた。
会いたくない相手だった。
それでも公務と割り切って来たのだ。

「ああ、でも目元はキャサリン嬢に似ている」

母娘ですから、似ていてもおかしくありません。

「懐かしいな……」

私の顔を見ながら、昔を懐かしむかのように呟くと、再び話しかけてくる男。

「私とエルンスト最後の国王は母親違いの上に歳も離れていたから、あまり交流をもっていなかったんだよ。それでも、行事の折々には親しくしていたんだ。エルンストは随分と大人しい性質でね、外遊びよりも中で静かに本を読んでいることが多かったな。マリアもそうなのかい?エルンストはとりわけ歴史書を好んで読んでいた記憶があるよ」

「……父上は、ずっと読書が趣味でした」

「ああ、変わっていなかったんだな。キャサリン嬢もエルンストと同じ位の読書家でね、二人で仲良く図書室で本を読んでいたことがあったよ。幼いながら婚約者を勝手に決められていたけど、エルンストとキャサリン嬢は気が合っていたからね。結婚した後も仲睦まじかったと聴いているよ。ただ、男の子に恵まれなかったのが本当に残念だ。まさか妃になった者達が揃いも揃って、んだから。エルンストも気の毒なことだ。キャサリン嬢も王子さえ生めていれば安泰であったものを。エルンストも「色狂い」などという不名誉なことは言われなかっただろうに、可哀そうなことだ」

この修道院の院長である男の言葉が耳を通り抜ける。

ぐちゃぐちゃな心情である私の気持ちを一切理解することなく、男は色々と話す。

この男は一体何を言っているのだろう……。
昔語りを始めた男を呆然と見つめるしかなかった。

「マリア・、君が新しい公妃で良かった。王国の血は守られる」

決定的な一言だった。
頭が真っ白になるというのはこの事なのかと、我ながら他人事のように感じたものだ。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

【完結】高嶺の花がいなくなった日。

恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。 清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。 婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。 ※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

なぜ、虐げてはいけないのですか?

碧井 汐桜香
恋愛
男爵令嬢を虐げた罪で、婚約者である第一王子に投獄された公爵令嬢。 処刑前日の彼女の獄中記。 そして、それぞれ関係者目線のお話

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

元婚約者が愛おしい

碧井 汐桜香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。 留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。 フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。 リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。 フラン王子目線の物語です。

花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果

藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」 結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。 アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

処理中です...