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第4話代償2
しおりを挟む【欲深き人間どもよ。お前達は我らの愛し子を傷つけた。愛し子がいるからこそ過去の過ちを許し、この大地に住まわせてやっていたというのに恩を仇で返すとはこのこと!
愛し子がいるからこそ我々は大地を豊かにし、災害からも遠ざけ、魔獣の力も弱体化させてやっていたのだ!
その愛し子を排除しようとするなど由々しきことだ!
それほど自分達の力だけで生きていきたいと申すならそうせよ!
これにより古き契約はたった今をもって終了いたす!】
精霊王の声が厳かに国中に響き渡った。
ただし、それは国の終焉を意味するものであった。
この国だけでなく、世界中が精霊達の加護によって生き永らえ栄えてきたといってもいい。
それを放棄すると事は、本当に人間達の力で生きる事を意味している。
歴史の中には「精霊の加護に頼らずに人の力だけで生きるべし」と謳った者もいる。
だが、悉く挫折しているのだ。
無理ない。
種を蒔けば何もしなくとも芽が出て勝手に育っていく野菜。少し手間をかけるだけで豊作になる麦畑。
それを失うのだ。
手間暇をかけて、やっと以前の三割分しか実らない。
実っても一度の台風で全滅する。
農家はやっていけなくなった。
彼らは国を捨てざる負えない。
毎年来る台風と数年ごとの地震と津波。
人はそれだけで心が折れてしまう。
亡くした家族の後を追う者が続出して人口が激変した。
王太子自身が約束した事とは言え、それを反故にさせた者達。
欲望によって破滅するとは実に人間らしいと言える。
自業自得の結果。
彼らに巻き込まれて破滅する者も多いだろう。
今は未だ災害程度。
本当の地獄はこれからだろう。
疫病も流行るかもしれない。
今の子供は一体何人が成人できるか……。
冒険者たちの死亡が相次いでいるらしい。
彼らはどこまでも自己中心的だった。
精霊王の宣言を軽んじた結果だ。
今まで同様に魔獣と戦った。
精霊の加護を失った今、魔獣は本来の力を取り戻しているにも関わらず。
身勝手なのは神殿も同じ。
今になって精霊に許しを乞うている。
毎日、精霊に祈りを捧げていると聞く。
自分達の行いで冒険者達を増長させていたというのに。
貴族も同様だ。
反省するどころか「王家と神殿に騙された」と声高に叫んでいる。
しかも「聖女を拘束して生贄に捧げろ」とヒステリックに叫ぶ。
そんな物は精霊もいらない。
粗大ごみはゴミ置き場に捨てろと言いたい。
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