【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす

文字の大きさ
23 / 115
第2章 繋がりは繋がっていく

6.隠者は御守りを仕上げる

しおりを挟む
「精霊って、珍しいんですね?」
「まあな。あ、ちなみに見えるヤツはそこまで居ないぜ。俺も頑張らないと見えないが、息するみてぇに見えるのは、王宮魔術師レベルじゃ無いか?契約すると本人には見えやすくなるらしいんだがな、俺らとパーティ組んでたフロニアとかも『うっすら光って見える』程度だった筈だ。契約も基本的には難しいらしいしな」
「ごめんなさい、大丈夫だったかしら?」
「はい、びっくりしただけですから。触れる方がいる方にびっくりでした」
「油断したの」
「赤ちゃん可愛いの」
 精霊達は、勝手にフードから出てしまう。
「大丈夫だったようですよ。触れる事が出来たことに驚いてはいるようですけど」
「私、そういう手に触れる感覚だけは鋭いのよ。目はさっぱりなんだけど…」
 改めて、と、ミリィさんは私の両手を取ってキュッと握った。
「私はミリィ。アーバンの妻よ。この間は本当に本当にありがとう!一生忘れないわ」
「いえいえ、運が良かったんですよ。私の名前は…」
「リッカさん、よね?教えてもらったわ」
 そのまま手を引いて、赤ちゃんのところに連れて行ってくれる。
「そして、この子があの時の赤ちゃんよ。名前はリッカ」
「え?」
 スヤスヤ寝ている赤ちゃんの前で、大声を出しかけて口を押さえる。
「恩人の名前だからな。良い名前だろ?」
「うふふ。ほら、リッカ。あなたと私の恩人が来てくれたわよ」
「俺にとっても恩人だ。本当にありがとうな」
 ミリィさんの肩に手を回して、アーバンさんが私に手を伸ばしてくる。私も手を差し出して握手する。
「本当に、間に合って良かったです」
 ふいに、赤ちゃんのちいさな泣き声がした。
「あ、うるさかったかな?」
「ううん、そろそろお腹が空いた筈なのよ。私、飲ませてくるわ」
 ミリィさんはアーバンさんに目配せして、奥に入っていった。
「悪いなリッカさん。お茶入れてくるから、そこ座っててくれ」
「はい」
 ここは古着屋さんで、もともとミリィさんが若い時に一人で立ち上げた店らしい。接客用なのか、年季の入ったティーテーブルのセットは、使い込まれているがしっかりしたものだ。私は、懐から出すふりをして、アイテムボックスから御守りの未完成品をいくつか出した。
「どれがいいかな?」
「あのね、これ!」
「あの子と波長が合いますの」
「きっと居るだけで人を穏やかにするよ」
 3人(匹?)が勧めたのは、紫水晶のものだ。円形の石の中には、天使の翼のような羽が一対掘り込まれている。あくまで内側なので、手触りはひんやりと滑らかしている。私も1番良い出来だと思っていたので、ちょっと嬉しい。
「じゃあ…」
 石の下に名前を刻むための、石自身の紋様を出す。その中心に、こちらの文字で赤ちゃんの名前を紋様化して刻み込んだ。
「よし」
「出来上がりですの」
「良い夢見れるよ」
「良い睡眠は健康にいいですから!」
 3人に褒められて、良い気になっていたら、不意にカチャカチャ…と物音がした。顔をあげると、茶器とコップを持ったアーバンさんと、赤ちゃんを抱いて、あんぐりと口を開けてこちらを見るミリィさんが居た。カチャカチャ言っているのは、お盆に乗せた食器類で、音がなっているのは、アーバンさんの手が震えているからだ。
「見ちゃった…」
「前も見ただろ」
「だって前はこの子産む時でしょ?見る余裕なんか…」
 私を凝視しながら口元はパクパクと動いて話をしている2人と、やっと目が合う。
「…初めて見たわ。完全無詠唱」
「……珍しいんですか?」
 2人は、大きく同時に頷いた。

「ええと。ま、お茶どうぞ。冷めるぜ?」

 結論だけ言えば、お守りは本当に喜んでもらえた。そして、ミリィさんからは噛んで含めるように、
「触ればわかるわ。すごい魔力が込められてる。こんなのを作れるのはそれこそ神殿の本部くらいにしか居ないわ。人前でホイホイ見せたら変な権力者とかに攫われちゃうから絶対にダメよ!知らない人に見せたり、何か言われてもついて行ったらダメよ。約束して。ね?」
 と何度も念を押された。
 前世の年齢を足してしまえば、ミリィさんの親でもおかしくないくらいなのに、なんだか自分が小さな子供になったような気がした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

処理中です...