【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす

文字の大きさ
45 / 115
第3章 心が繋がる時

8.紅花の妖精

しおりを挟む

(ええと…貴方達、探してたの?)
(はい!あれだけの妖精眼があるなら、妖精に好かれる筈ですから!)
(精霊眼じゃないの?)
(意味はほぼ同じですの)
(可愛い子だよー)
(でもちょっと弱ってるの)
(治癒しとくね)
 自由に念和を飛ばしてくる精霊達の所業に、半ばくらくらするような心地だったが、表情には出ないように努める。とりあえず弱っているということだったが、それは精霊たちが世話をしてくれるようだからいいだろう。問題は、その子がメリーベルさんに付いてきたであろうことと、メリーベルさんがどうやら精霊達の言う『妖精眼』の持ち主であるということだ。
(さてと…ギルマスとエリーナさんにどう話をするか……この後のお茶会で話した方がいいよね)
 平民である私が、またこの屋敷に来ることはまず無いと思う。メリーベルさんがどの程度見えるのか、見える事がどういう意味を持つのか調べてからとも考えたが、引き伸ばすよりは今の方がいいだろう。

 先生の話は地方ごとの精霊や妖精に関する伝説や昔話に移っていた。メリーベルさんは楽しそうにノートをとっている。ギルマスとエリーナさんは、それを愛おしげに見つめている。
(この家族にメリーベルさんに妖精眼がある事を伝える…か…)
 正直、何も無いところに問題を掘り起こすような気がしてしまうが、メリーベルさんの気持ちを確かめる時間がないのでどうしようもない。先生の話を半分聞きながら、妖精が多いと言われている地名をいくつかメモしていく。
(主様)
(連れて来たよー)
 ふいに膝の上に重さを感じてそちらを見た。
(どうやって連れて来たの?)
(ドアのところだけ転移しましたの)
 …うん、もう何があっても驚かない気がする。
(この子ですのよ)
 紅花の妖精だという子は、たしかに薄汚れた感じだった。大きさは7、8センチくらいで、乾燥した紅花を集めて団子にしたような体から頭が生えたような、2頭身の人形のような感じだった。小さく治癒紋様を飛ばすと汚れた顔が綺麗になる。鮮やかな赤い虹彩が私を見た。そして、そのままその目はメリーベルさんへ向けられる。
(メリーベルさんと一緒にいたい?)
 妖精は、ぶんっと音がしそうなほど勢いよく私に目を向けると何度もコクコクと頷いた。
(あのね、主様。妖精って自分の場所からあんまり離れると弱って消えるんだよ)
 カルビンが妖精を撫で撫でしながら言う。
(はい、この子はこの屋敷にある乾燥紅花の瓶の中で眠ってたみたいですのよ)
(どうしてもあの子について来たかったみたい)
 ライとファーナの話を聞きながら、ここは腹を括るしかないと決める。
(どうしようも無くなったら、生まれた場所に戻るか、私が面倒みよう)
 そう決めると、少しだけ気が楽になる。
(妖精のままだと、ずっと一緒にいるのは厳しいの?)
(主様のように、日常的にその土地に住んでるなら大丈夫ですけど…この娘さんは今後どうなるか…)
(紅花の子は、花畑から離れて2ヶ月だって)
(…2ヶ月ですごく弱っちゃうか…このまま着いていくのは危険ね。子爵領で暮らしているなら問題なさそうだけど、多分メリーベルさんは早ければ4年後には王都の学園に行くんじゃないかな…)
 紅花の妖精が口をへの字に曲げてへにゃーっと座り込んだ。わかりやすい。
(妖精のまま捕獲契約はできるのかしら?)
(捕獲は出来るはずです)
(それよりは名前をつけてあげたほうが安定するよ)
(名付けには魔力を使うんでしょ?魔力ってどれくらい必要?)
(名付けには、名付ける方の思いと名付けられる方の思いが作用するので…思いが強ければそれなりに…)
(メリーベルさんにやらせても大丈夫かしら?)
 とりあえずは、サブマスとエリーナさんに話してからになるけれど…紅花の妖精は、またメリーベルさんを見つめていた。
(メリーベルさんの意思も大事だしね)
 できれば相思相愛であって欲しい。私もそんな思いでメリーベルさんの背中を見つめた。

 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

処理中です...