【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす

文字の大きさ
110 / 115
第6章 転生隠者の望む暮らし

19.流れる時の中で

しおりを挟む
※すみません、一度これを削除して完結させましたが……やっぱり追加しますm(_ _)m※


 久しぶりにバルガの神殿にやって来た。
 朝の祈りの時間は思っていたよりも賑やかだった。
(今日は暖かいから……かもしれないわね)
 人の流れに乗って中に入ると、空いた席に座った。椅子の座面は、なんとなく湾曲している。おそらく、たくさんの人が座ってきたからだろう。

 壇上の神官が祈りの一説を終え、こちらを向いた。
「命の旅路を続ける我等と魂と……」
 決まり文句から始まり、季節の話などを交えてしばらく話が続く。
(旅路……そうね、ずっと旅をしているようなものなのかもね)
 ふと、目の前の机を眺める。机は磨き込まれて薄っすらと光り、自分の顔がぼんやりわかる程度には写っている。
(魔力の量が、寿命と関係している……と言うのは、間違いないみたい)
 相変わらずほぼ外見の変わらない、すっかり見慣れた自分の顔が、そこにある。
(もしかしたら、身体の年齢を重ねるのが遅くなるのかもしれないけど……)
 そうだ、データが私1人では証明できない。

「火は太陽のかけら、火の神、太陽の神カルコンは……」

 神官の話を聞きながら、ふと、いつも傍にいたカルラの事を思う。
(カルラ……元気かな。ううん、元気よね。わかるもの……感じるもの、ね……)

 新しい火の精霊王となった、カルラと名も知らない幾人かの精霊達のことを思うと、寂しさと共に胸の中に熱が灯る。

「主様、私は私です!いつでも魂は一緒ですから。でも、聖地にも沢山会いに来てくださいね!もちろん、私も行きますから」

 新しい火の精霊王は、女性寄りの姿だった。どことなくカルラに似ている。

「……主人様」

 祈りの姿勢をとりつつも考え込んでいた私に、ブラドが声をかけてくる。
(……どうしたの?)
「カルラのことを考えていたのですか?」
(……うん)
 念話で答えた私に、気遣うような視線が向けられているのがわかる。
(大丈夫。後で聖地に行こうかな)
「はーい!」
 他の精霊達の元気な声を聞きながら、私はそっと天井を見上げた。
 採光を考えた天井からは、ガラス越しにキラキラと朝陽が差し込んでくる。

 ———セカイさん

 話しかけるごとに、今までの時間が、思い出が溢れるように心の中を駆け巡る。

 前世の自分。
 ボンヤリと薄れてはいるけれど、多分自分なりに頑張って……多分言葉足らずのまま終わっただろう人生。

 転生する前の、どこかふわふわした実感のない場所。
 嘆きも涙も、欲望も諦観も、ゆるゆると包んでくれていた場所。
(結局長く過ごし過ぎてたみたいだけど……)
 多分その一見無駄に思える時間こそが、私が自分で気づくために大切な時間だったのだろうと、今は思える。

 それじゃあ、どうします?
 そんな言葉で始まった、転生を決めた場所。
 あなたの苦労の8割くらいが、本来は負わなくていいもので……なんて言われて、私はあの時怒っていた。
(それを、八つ当たりしたのよね)

 しばらくはアイテムボックスの中身だけでダラダラ生きて……バルガのギルドに行って。

 そこからだ。
(誰かに心配されたり、心配したり)
 ———人間によって疲弊した貴女の魂の傷は、誰か他人によってしか、癒されないと思うのです。
 かつてこの神殿にいた神官に、そう言われたのを思い出す。

(1人でいいと思っていたのだけど……)
 ギルドでアーバンさんと話すようになって、光虫を捕獲して、精霊に進化して……1人ではなくなっていた。
(精霊達との暮らしは、心地よくて……)
 精霊草をもぐもぐ食べる姿が可愛くて。
 心地よい距離をとってくれる彼らとの暮らしが楽しくて。

 たくさんの本を読み漁り、レイヴァーンという世界のことを、心ゆくまで読み込む日々。
 そして、気遣ってくれる人との日々。
(少しは……恩返しができたかしら)
 いや、ちがう。
(少しは、私と出会って良かったと思ってもらえたかしら……感謝は、伝わっていたかしら?)

 出会い、別れて来た人々のことを思った。

 
 ———セカイさん

 
 長い時間がかかったけれど、
 その分沢山の物を見て、経験して、わかった。
 私は、生きて来て良かった。


(だから……この謎を解くよ)
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

処理中です...