悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

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34.今日もご飯が美味しい

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 エドルドさんのお屋敷に下宿を初めて早1週間。

 初めは他人のお家で住まわせてもらうことに緊張していたのだが、アットホームな使用人さん達のおかげでわずか3日で慣れた。

 決して私が図々しいとかではない。

 今日も出された食事をペロッと完食して、すぐ側で食事を取っているヤコブさんに感想を告げる。

「ヤコブさん、今日も凄く美味しかったです。特にジャガイモのオムレツの、とろとろたまごの中のじゃがいもの食感が最高でした!」
「ありがとうございます。ロザリアさんよく食べてくれるので、俺も作りがいあります」
「食べ過ぎですかね……」

 目を伏せてちょっぴり膨らんだお腹を撫でる。
 エドルドさんの家に下宿を始めてからも仕事は相変わらず続けているので、そこまで太ってはいない。

 数日後に迫った入学式でお腹周りがキツい……と嘆くこともないだろう。

 それでも遠慮なく朝晩と頂いてしまっているのは事実だ。
 月末にはホテルの金額に上乗せした金額を渡す予定ではあるものの、もう少し遠慮した方がいいかもしれない。


 仕事先で大量に食べてくるか、王都で買い食いするか。
 だがいくらメリンダの姿をしていたとしても、そこまで目立つのも良くはないだろう。
 折角メリンダなんて架空の女の子を作り出したというのに、食事量が多すぎるからという理由で例のお貴族様に目を付けられるのはごめんだ。


 ポイント交換で食事を頼むのが無難なのかもしれない。
 与えられた部屋で交換して、アイテム倉庫に入れておけばどこでも食べられる。


 けれど私はヤコブさんの料理が食べたいのだ。
 グルメマスター付きの料理人と切磋琢磨し合う仲らしいヤコブさんの腕は一流だ。しかも彼は地球グルメのレシピを取得している。再現率の高さは言うまでもないだろう。


 正直、ポイント交換グルメの何倍も美味しい。ホテルでの食事も美味しかった。連続して美味しいご飯付きの住居を確保出来た私は相当運がいいらしい。
 けれど三年間ホテルには戻れず、ヤコブさんの食事の量が減るとなれば、私の仕事に対するやる気も激減してしまうだろう。


 だが下宿させてもらっている身としては迷惑をかけたくないし……。
 葛藤の渦で揉まれながら空になった皿に視線を落とす。
 すると隣で食事をしていたエドルドさんがぼそりと声を漏らした。


「何を今さら」
「え?」
「あなたが下宿すると分かってから屋敷に新しい冷蔵庫を買ったので、そんな心配は無用です。好きなだけ食べなさい」
「ベッドに続き、冷蔵庫まで……。なんかすみません」
 まさか冷蔵庫まで新しいものを導入されているとは……。

「お気になさらず。私も沢山の料理を一気に食べられて満足しているので遠慮なく食べてください」
「ありがとうございます」

 エドルドさんは気にするなというが、優遇されすぎじゃない?
 レオンさんが南方行きを決めた際に何か契約でもしたのだろうか。

 レオンさん、相当嫌がっていたし。

 無理難題をふっかけることはしないだろうが、屋敷に住まわせる約束までしているくらいだ。そこに食の条件まで追加されていてもおかしくはない。残る『衣』はギルドで支給されるし、衣食住は完璧だ。


 学生の本分である勉強は本人のやる気次第だが……。

「ロザリアさん、お茶のおかわりどうですか?」

 だが遠慮するなと言われたら真に受けて遠慮をしないのが私だ。ポットを持ち上げるマリアさんに元気よく返事をする。

「いります!」
 食後のお茶三杯目だ。
 デザートまで食べて、食後のお茶まで楽しんで。

 これで今日も夕方までお仕事頑張れる。
 すでに今日の分の仕事はエドルドさんから受け取っている。
 メリンダとして受注されたクエストは主に3つ。

 王都から数時間ほど馬車を走らせた先の村はずれにある森での採取依頼が1件、魔物討伐が2件。それと合わせて、村の特産品の塩を買ってきて欲しいというエドルドさんからのお使いがある。

 ごくわずかしか採れない上、グルメマスターが認めた一品ということで王都にもなかなか入荷しないらしい。現地に行けば入手は可能だが、月に一回 お一人様一点までと制限がかかっているらしい。


 涼しい顔をして食後の紅茶をすすっているエドルドさんだが、この塩目当てで周辺依頼を渡してきたのは確実だ。

 意外とこういう面で私を下宿させるマイナス面を回収しているのかもしれない。

 まぁお金は渡すけど!

 とにかく塩を買い逃す訳にはいかない私はお茶を流し込む。
 これで一日分の元気チャージは完了!
「ごちそうさまでした」と手を合わせて、クエストとお使いを達成するために立ち上がるのだった。


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