悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中

文字の大きさ
37 / 114

36.これってバグですか?

しおりを挟む
「良かったんですか?」
「ええ。義弟がここにいると知れば義母が騒ぎますから」
「仲、悪いんですか?」
「悪くはないと思いますよ。毎月見合い写真片手に孫孫騒ぐことを除けばいい人ですし」
「それはなんとも……。私の場合は婚期過ぎても結婚出来るか怪しいところがありますけど」
「不純異性交遊禁止なんでしたっけ? ガイドラインから外れた相手を見つけ次第、相手を処理するように言われてます」
「ガイドラインって……」
「段階ごとの処理方法が書いてある表ありますけど、見ます?」
 ごそごそと胸元を探るエドルドさん。
 表があることにも驚きだが、それを携帯しているエドルドさんもエドルドさんだ。

「どうせ恋人とか出来る気がしないんでいいです」
「そうですか? 見たくなったら言ってください」
 私に恋人を作るのを阻止するためにエドルドさんに預けたんじゃないかとさえ思えてくる。
 少なくともエドルドさんの義弟さんと学園で初遭遇をしたら最後、三年間恋人が出来る気がしない。ただでさえ出来る気がしないのに輪をかけて確立が下がる。

 そして友達も。
 まぁぼっちでも勉強は出来るし、ペアを組む系の授業を避ければ何の問題もないのだが。
 食事は一人でも人が集まる所に行かなければいいだけの話だし、大学生時代も一人でご飯を食べる機会はあった。

 一人カフェもカラオケも慣れたものだ。
 なんならぼっち飯回避用の人形を作って横に置いておけば良い。
 ぼっち学生生活の計画が詰まってくる度に寂しさが募っていくが気にしたら負けだ。
 小屋生活よりはずっとマシ! と自分に言い聞かせる。

「まぁ『竜殺しのレオン』の娘で、王都のギルド長の家に下宿していると聞けば早々手を出そうという輩は出てこないと思いますけどね」
「……すみません。私、ギルド長の家に下宿する予定とかないんですけど?」
「今さら何を言い出すんですか。すでに住んでいるじゃないですか」
「私が住んでいるのはエドルドさんのお屋敷ですよね?」
「ん? ああ、知らなかったんですか。私、あなたが王都に来る数ヶ月ほど前から王都のギルド長を務めているんですよ」
「聞いてないんですけど!?」

 私は短期間でどれだけ新情報を聞けばいいんだ!
 RPGゲームのプロローグでもここまで重要情報ぶっ込んでこないけど、この世界の情報開示バランスはどうなっているんだ!

 バグか? バグなのか?
 それとも運営のシナリオ担当が悪いのか?
 通販サイトの評価欄に『詰め込みすぎて意味不明』とかきこまれた上で星一つとか食らうレベルだ。

 第一、エドルドさん一人に対して『貴族の長男』『Aランク冒険者』『王都のギルド長』ってポジションの高い設定盛り込みすぎ。
 その上、顔もいいし独身だし、義弟さんによれば女性嫌いときた。後半の三つだけでも確実に一部女性の心を射止めるキャラではあると思う。人気ランキングで毎回5本の指に入るだろう。主人公のサポート役として最初から最後まで活躍しそうだとは思う。


 だがこれはない。
 盛り込みすぎて主人公の立場が食われてしまう。
 そして私の脳内がまたしてもショート寸前まで追い込まれている。

「本当に知らなかったんですね。いやぁ、妙に肝が座っているとは思っていましたが、まさかただの世間知らずだったとは……」
「有名なんですか?」
「王都ギルドのカウンターは地位の高い順に並んでいるんですよ。低い番号は年齢によって左右されることもありますが、1番カウンターに座るのはギルド長であることは設立当初から変わっていません。知らないのはもぐりかよほどの田舎者くらいで、下心もなしにギルド長に近寄ろうなんて人はなかなかいませんよ。私も初めは警戒していたんですけどね……」

 まだまだ出てくる新情報。
 まさかカウンターの数字にすら意味があるとは……。

 だが田舎から出てきてすぐにソロを決め込んだ私が知る方法などなかったのだ。
 エドルドさんもこんな反応しているということは、レオンさんもまさか私が知らずにエドルドさんのカウンターを利用しているとは思わなかったのだろう。
 まぁ知らないからといっても特に不便はなかったから構わないのだが。

「あれ、警戒だったんですね。私はてっきり愛想がないのだとばかり……」
「それは否定しませんが」
「あ、しないんですね」
「ギルド長に必要なのは権力を上手く使うだけの頭と、必要とあれば他者を組み伏せるだけの力ですので」
「なんか脳筋っぽいですね」
「あなたに言われたくはないです」
「私脳筋じゃないですよ!?」
「自覚ないんですか……」

 はぁ……と長いため息を吐くエドルドさん。
 頭脳派タイプではないが、脳筋でもないつもりだ。
 ただ力で解決すれば早いから大抵のことはどうにかしてしまうだけで。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

処理中です...