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第12話:アンリは渡さないよ~エディソン視点~
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「エディソン、さっき使いの者が来て、ダニルーディン伯爵家のグレイズ殿と、スリーフェイル伯爵家のアンリ嬢が正式に婚約したそうだ」
「まあ、そうなの。よかったわね、エディソン、あなたずっとスリーフェイル伯爵家のアンリ嬢にしつこく付きまとわれていたでしょう?伯爵もやっと重い腰を上げたのね」
両親が嬉しそうに僕に報告をして来たのだ。でも僕は…
「アンリが別の男と…婚約だって…嘘だ…」
僕はずっと彼女が好きだったんだ。6年前からずっと…それなのに、どうして…
「エディソン、どうしたの?どうして泣いているの?」
「申し訳ございません…体調がよくありませんので、自室に戻ります…」
「待って、エディソン!!」
フラフラと自室に戻ると、ソファに座り込み頭を抱えた。
「こんな事なら、最初から受け入れておけばよかった…」
~6年前~
僕が9歳の時だった。退屈な日々に飽きていた僕は、平民の格好をして密かに街に繰り出していた。あの日も平民の格好をして、屋敷を抜け出す。今日はあの丘に行ってみよう。ずっと気になっていたんだよな。
そう、王都の外れにある丘だ。さすがに歩いては向かえないので、ボロい馬車を借りて向かった。
丘に着くと、1台の馬車が停まっていた。あの紋章はスリーフェイル伯爵家のものだな。どうしてこんなところに、伯爵家の馬車が?まあいいか。
疑問に思いつつも、目的地でもある丘を目指した。そこにいたのは、美しい水色の髪の令嬢だ。確か伯爵も水色の髪をしていた。という事はあの子は、スリーフェイル伯爵令嬢か。
面倒な子に会ってしまったな。そう、僕は無駄に顔が整っている事から、令嬢にすり寄られてしまうタイプなのだ。でも…今は平民の格好をしているし、大丈夫だろう。むしろ、あしらわれるかもしれない。
そんな事を考えている間に、彼女に気づかれてしまった。
「あら珍しいわね。ここに人が来るなんて」
ピンク色の大きな瞳を見開き、僕の方にやって来たのだ。
「私はアンリよ。あなた、平民の子?」
「ああ…僕は…エディだ」
「そうなのね、エディ、よろしくね。ねえ、こっちに来て。ここから見える景色はとても綺麗なの」
僕の手を掴み、歩き出したアンリ。彼女が言った通り、丘からは王都が一望できた。
「綺麗な景色だね」
「そうでしょう、私のお気に入りの場所なの。私ね、体が弱くて、これから領地で生活する事が決まったの。だから領地に行く前に、ここからの景色を目に焼き付けておきたくて。そうだわ、あの木の上から見る景色も最高なのよ」
そう言うと、何を思ったのか木を登り始めたのだ。
「危ないよ、落ちたらどうするんだい?」
「あら、大丈夫よ。これくらい…キャー」
「危ない!」
木から落ちそうになったアンリを受け止めた。その瞬間、ラベンダーのほのかな香りがした。それに柔らかくて温かい…気が付くと、ギューッと抱きしめていた。
「ごめんなさい。私ったら本当にドジね。重たかったでしょう。本当にごめんなさい」
申し訳なさそうにアンリが頭を下げた。
「大丈夫だよ。それより、怪我はないかい?」
「ええ、大丈夫よ。あなた、優しいのね。ねえ、一緒に遊ばない?かくれんぼなんてどうかしら?」
「かくれんぼ?」
「そうよ、かくれんぼ」
「分かったよ。やろう」
その後僕たちは、日が暮れるまで遊んだ。
「見て、エディ、とても綺麗な夕焼け空よ」
アンリが指さす方向には、真っ赤に染まった空が。
「本当だ。綺麗だね。ねえ…あのさ…また会えるかい?」
「ええ、明日もここに来るから、一緒に遊びましょう」
それから1週間、僕たちはこの場所で遊んだ。僕の事を平民だと思い込んでいるアンリ。そんなアンリといると、楽しくてたまらない。このままずっと一緒にいられたらいいのに…そんな気持ちが支配していった。でも…
「エディ、明日領地に向かう事になったの。私の事、忘れないでね」
そう言うと、ピンク色の瞳から、ポロポロと涙を流すアンリ。そんなアンリを、優しく抱きしめた。やっぱりアンリは、温かくて柔らかい…
「もちろんだよ、僕は絶対にアンリの事を忘れない」
本当は離したくない、この温もりをずっと抱きしめていたい。でも…
「それじゃあ、エディ。元気でね」
僕の腕からスルリと抜け出たアンリ。そのまま近くに停まっていた馬車に乗り込んでいった。僕はずっとその馬車を見つめ続けたのだった。
*****
あの日僕は彼女に恋をした。そして4年後、12歳になったアンリは貴族学院に入学した。初めて彼女を見た時、すぐにわかった。彼女が僕がずっと恋焦がれていた女性なのだと。
すぐにアンリを僕のものにしようと思っていた。
でも…
アンリは僕に夢中になった。毎日嬉しそうに僕の元に通うアンリを見ていたら、このまま僕のものにするのではなく、しばらく様子を見ようと思ったのだ。
アンリは僕の期待通り、毎日僕の元に通い、他の令嬢に文句を言われてもめげず、僕の傍に居続けた。その姿がまたたまらない。
せっかくだから僕が卒業するまで、僕を追わせ続けよう。そして卒業と同時に、婚約を申し込もう。
アンリ、きっとものすごく喜ぶだろうな。想像しただけで、胸が高鳴る。それなのに…卒業まで半年を切ったある日、アンリは僕の元に来なくなった。
どうしてだ?なんで急に僕の元に来なくなったんだ?少し彼女に冷たくしすぎたか?でも、アンリは僕が大好きなんだ。きっと大丈夫だ。そう思っていたのに…
「大丈夫だ…まだ間に合う。アンリは僕が好きなんだ。きっと僕の事を諦めるため、仕方なくあの幼馴染と婚約しただけ…」
そうだ、アンリは僕のものだ。幸い僕は、アンリやアンリの婚約者より爵位が上。父上に頼んで、説得してもらおう。
アンリは絶対に渡さないよ…
必ず取り返すから…
「まあ、そうなの。よかったわね、エディソン、あなたずっとスリーフェイル伯爵家のアンリ嬢にしつこく付きまとわれていたでしょう?伯爵もやっと重い腰を上げたのね」
両親が嬉しそうに僕に報告をして来たのだ。でも僕は…
「アンリが別の男と…婚約だって…嘘だ…」
僕はずっと彼女が好きだったんだ。6年前からずっと…それなのに、どうして…
「エディソン、どうしたの?どうして泣いているの?」
「申し訳ございません…体調がよくありませんので、自室に戻ります…」
「待って、エディソン!!」
フラフラと自室に戻ると、ソファに座り込み頭を抱えた。
「こんな事なら、最初から受け入れておけばよかった…」
~6年前~
僕が9歳の時だった。退屈な日々に飽きていた僕は、平民の格好をして密かに街に繰り出していた。あの日も平民の格好をして、屋敷を抜け出す。今日はあの丘に行ってみよう。ずっと気になっていたんだよな。
そう、王都の外れにある丘だ。さすがに歩いては向かえないので、ボロい馬車を借りて向かった。
丘に着くと、1台の馬車が停まっていた。あの紋章はスリーフェイル伯爵家のものだな。どうしてこんなところに、伯爵家の馬車が?まあいいか。
疑問に思いつつも、目的地でもある丘を目指した。そこにいたのは、美しい水色の髪の令嬢だ。確か伯爵も水色の髪をしていた。という事はあの子は、スリーフェイル伯爵令嬢か。
面倒な子に会ってしまったな。そう、僕は無駄に顔が整っている事から、令嬢にすり寄られてしまうタイプなのだ。でも…今は平民の格好をしているし、大丈夫だろう。むしろ、あしらわれるかもしれない。
そんな事を考えている間に、彼女に気づかれてしまった。
「あら珍しいわね。ここに人が来るなんて」
ピンク色の大きな瞳を見開き、僕の方にやって来たのだ。
「私はアンリよ。あなた、平民の子?」
「ああ…僕は…エディだ」
「そうなのね、エディ、よろしくね。ねえ、こっちに来て。ここから見える景色はとても綺麗なの」
僕の手を掴み、歩き出したアンリ。彼女が言った通り、丘からは王都が一望できた。
「綺麗な景色だね」
「そうでしょう、私のお気に入りの場所なの。私ね、体が弱くて、これから領地で生活する事が決まったの。だから領地に行く前に、ここからの景色を目に焼き付けておきたくて。そうだわ、あの木の上から見る景色も最高なのよ」
そう言うと、何を思ったのか木を登り始めたのだ。
「危ないよ、落ちたらどうするんだい?」
「あら、大丈夫よ。これくらい…キャー」
「危ない!」
木から落ちそうになったアンリを受け止めた。その瞬間、ラベンダーのほのかな香りがした。それに柔らかくて温かい…気が付くと、ギューッと抱きしめていた。
「ごめんなさい。私ったら本当にドジね。重たかったでしょう。本当にごめんなさい」
申し訳なさそうにアンリが頭を下げた。
「大丈夫だよ。それより、怪我はないかい?」
「ええ、大丈夫よ。あなた、優しいのね。ねえ、一緒に遊ばない?かくれんぼなんてどうかしら?」
「かくれんぼ?」
「そうよ、かくれんぼ」
「分かったよ。やろう」
その後僕たちは、日が暮れるまで遊んだ。
「見て、エディ、とても綺麗な夕焼け空よ」
アンリが指さす方向には、真っ赤に染まった空が。
「本当だ。綺麗だね。ねえ…あのさ…また会えるかい?」
「ええ、明日もここに来るから、一緒に遊びましょう」
それから1週間、僕たちはこの場所で遊んだ。僕の事を平民だと思い込んでいるアンリ。そんなアンリといると、楽しくてたまらない。このままずっと一緒にいられたらいいのに…そんな気持ちが支配していった。でも…
「エディ、明日領地に向かう事になったの。私の事、忘れないでね」
そう言うと、ピンク色の瞳から、ポロポロと涙を流すアンリ。そんなアンリを、優しく抱きしめた。やっぱりアンリは、温かくて柔らかい…
「もちろんだよ、僕は絶対にアンリの事を忘れない」
本当は離したくない、この温もりをずっと抱きしめていたい。でも…
「それじゃあ、エディ。元気でね」
僕の腕からスルリと抜け出たアンリ。そのまま近くに停まっていた馬車に乗り込んでいった。僕はずっとその馬車を見つめ続けたのだった。
*****
あの日僕は彼女に恋をした。そして4年後、12歳になったアンリは貴族学院に入学した。初めて彼女を見た時、すぐにわかった。彼女が僕がずっと恋焦がれていた女性なのだと。
すぐにアンリを僕のものにしようと思っていた。
でも…
アンリは僕に夢中になった。毎日嬉しそうに僕の元に通うアンリを見ていたら、このまま僕のものにするのではなく、しばらく様子を見ようと思ったのだ。
アンリは僕の期待通り、毎日僕の元に通い、他の令嬢に文句を言われてもめげず、僕の傍に居続けた。その姿がまたたまらない。
せっかくだから僕が卒業するまで、僕を追わせ続けよう。そして卒業と同時に、婚約を申し込もう。
アンリ、きっとものすごく喜ぶだろうな。想像しただけで、胸が高鳴る。それなのに…卒業まで半年を切ったある日、アンリは僕の元に来なくなった。
どうしてだ?なんで急に僕の元に来なくなったんだ?少し彼女に冷たくしすぎたか?でも、アンリは僕が大好きなんだ。きっと大丈夫だ。そう思っていたのに…
「大丈夫だ…まだ間に合う。アンリは僕が好きなんだ。きっと僕の事を諦めるため、仕方なくあの幼馴染と婚約しただけ…」
そうだ、アンリは僕のものだ。幸い僕は、アンリやアンリの婚約者より爵位が上。父上に頼んで、説得してもらおう。
アンリは絶対に渡さないよ…
必ず取り返すから…
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