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第15話:困った事になりました
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「もしかしてあなた様は…エディ?」
6年前、領地に療養する前に会った男の子。とても綺麗な顔をしていたが、確か彼は平民だったが…
「そうだよ、アンリ。やっと思い出してくれたんだね。僕がエディだよ。僕はあの日から、君の事を忘れた事なんて一度もなかった。貴族学院に入学してきたアンリは、あの時とちっとも変っていなくて、本当に嬉しかったんだ。少し遠回りをしてしまったけれど、これからはずっと一緒だよ!」
そう言うと、私の方に真っすぐ歩いて来たと思ったら、そのまま私を抱きしめようとした。ただ、グレイズに直前で引っ張られたので、抱きしめられる事はなかったが…
「グレイズ、アンリはもう、君の婚約者ではなくなるんだよ。だから、気安く触るのは止めてくれるかい?僕、こう見えて意外と嫉妬深いんだよ」
「マッキーノ侯爵令息様こそ、アンリは私の婚約者です。正式な書類も提出しております。それに、婚約してすぐに解消、さらに別の貴族と婚約を結び直せば、アンリの評判は地の果てまで落ちてしまいます。ただでさえアンリは、あなた様に一方的に付きまとった事で、評判があまり良くないのです。どうかアンリの事は、諦めて下さい。お願いします」
グレイズがエディソン様に頭を下げた。
「エディソン様、私はあなた様に嫌われ、ハイエナ令嬢といわれておりました。両親や兄にまで迷惑を掛けてしまい、落ち込んでいた時に私を助けてくれたのが、グレイズです。私ははっきり言って、考えずに行動するし、周りの事も考えられないし、家族にも迷惑を掛けるし、どうしようもない令嬢です。そんなどうしようもない私を、少しだけまともな人間にしてくれたグレイズを、私は心の底から愛しております。それにエディソン様に対しても、もう好意を抱いておりません。どうか私の事は、諦めて下さい。お願いします」
グレイズの隣で、私も頭を下げた。
「アンリ…ごめんね、僕がちょっと冷たくしすぎたせいで、君の心が病んでしまっていたのだね。病んでいた時、優しくされたら嬉しいし、そっちになびくのもわかるよ。でも、僕は諦めるつもりはないよ。大丈夫、君が嫁いで来たら、僕がたっぷり甘やかしてあげるから安心して欲しい。もう二度と、寂しい思いはさせないからね」
そう言ってほほ笑んでいるエディソン様。その微笑を見た瞬間、背筋が凍り付くような感覚に襲われる。怖い…この人、何を言っているの?
「エディソン、今日のところはもう帰ろう。アンリ嬢、君にはエディソンが酷い事をしてしまって申し訳なかった。でもエディソンは、君をあしらい続けた事を、とても後悔していてね。どうかやり直すチャンスを与えてやって欲しいと、私は考えているのだよ。まあ、親バカと言われたらそれまでなのだが。それからグレイズ殿、近いうちにお宅にも伺うつもりだから、ご両親によろしく伝えてくれ。それでは失礼する」
「アンリ、必ず君を迎えに来るからね。グレイズ、君たちの婚約は白紙に戻る予定なんだ。アンリにこれ以上触れないでくれよ。それじゃあ、アンリ。出来るだけ早く迎えに来るから、いい子で待っていてね」
スッと私の顔に触れると、そのまま侯爵様と一緒に、エディソン様も部屋から出ていく。お父様とお母様も、慌てて後を追って部屋から出て行った。きっと2人の見送りに行ったのだろう。
本来なら私も行くべきなのだろうが、その場から動けない。
「アンリ、大丈夫か?顔色が悪いぞ」
グレイズが心配そうに、私の顔を覗き込んできた。そして、さっきエディソン様が触れた顔に、そっと手を当てる。グレイズの温かい手、さっきとは打って変わって、安心する。
「グレイズ、私、この後どうなるのかしら?このままエディソン様と結婚させられるのかしら?あんなにも私の事を無下にしていたのに…それも私の悲しむ顔を見て楽しんでいたなんて…そんな人の元に、嫁ぎたくはないわ…」
「大丈夫だ!俺たちは既に婚約しているし…きっと大丈夫だから、泣くなよ」
涙が次から次へと溢れ出る私を、グレイズが抱きしめてくれた。グレイズの腕の中は、やっぱり落ち着く。数時間前まで、確かに私は幸せの絶頂にいた。でも今は…
しばらくすると、お父様とお母様が、今度はグレイズの両親を連れて戻ってきた。グレイズの両親も、浮かない顔をしている。とりあえず、皆で席に着いた。
「…アンリ、グレイズ、悪いが2人の婚約は、解消しようと思っている…」
「お父様、何をおっしゃっているのですか?」
「どうだよ、おじさん、俺たちは正式に婚約を結んだんだぞ!第一、マッキーノ侯爵令息はずっとアンリに冷たかったじゃないか!それなのに、今更あんな事を言うなんて」
「2人の気持ちは十分わかる。でも…マッキーノ侯爵夫人は、現国王陛下の従兄妹だ。マッキーノ侯爵自体も、陛下と仲が良いし…侯爵家に歯向かう訳にはいかないんだ…」
辛そうに呟くお父様。
「そんな…イヤですわ。だってエディソン様は、ずっと私をあしらっていたではないですか!確かに私は1年半もの間、エディソン様に恋をしておりました。でも、その恋はもう諦め、今は前を向いて進んでいるのです。それなのに…」
「アンリ、大丈夫だ…おじさん、アンリはもう、マッキーノ侯爵令息を好きではない。それどころか、アンリが悲しむ姿を見たかったという不純な理由から、ずっとアンリをあしらっていたマッキーノ侯爵令息に、嫌悪感すら抱いているんだ。大体、あんな歪んだ感情の持ち主の元に嫁いだら、きっとアンリは苦労する。自分の娘が苦労してもいいのかよ!」
グレイズが必死にお父様に訴えてくれている。私もすがる様な気持ちで、お父様を見つめた。
6年前、領地に療養する前に会った男の子。とても綺麗な顔をしていたが、確か彼は平民だったが…
「そうだよ、アンリ。やっと思い出してくれたんだね。僕がエディだよ。僕はあの日から、君の事を忘れた事なんて一度もなかった。貴族学院に入学してきたアンリは、あの時とちっとも変っていなくて、本当に嬉しかったんだ。少し遠回りをしてしまったけれど、これからはずっと一緒だよ!」
そう言うと、私の方に真っすぐ歩いて来たと思ったら、そのまま私を抱きしめようとした。ただ、グレイズに直前で引っ張られたので、抱きしめられる事はなかったが…
「グレイズ、アンリはもう、君の婚約者ではなくなるんだよ。だから、気安く触るのは止めてくれるかい?僕、こう見えて意外と嫉妬深いんだよ」
「マッキーノ侯爵令息様こそ、アンリは私の婚約者です。正式な書類も提出しております。それに、婚約してすぐに解消、さらに別の貴族と婚約を結び直せば、アンリの評判は地の果てまで落ちてしまいます。ただでさえアンリは、あなた様に一方的に付きまとった事で、評判があまり良くないのです。どうかアンリの事は、諦めて下さい。お願いします」
グレイズがエディソン様に頭を下げた。
「エディソン様、私はあなた様に嫌われ、ハイエナ令嬢といわれておりました。両親や兄にまで迷惑を掛けてしまい、落ち込んでいた時に私を助けてくれたのが、グレイズです。私ははっきり言って、考えずに行動するし、周りの事も考えられないし、家族にも迷惑を掛けるし、どうしようもない令嬢です。そんなどうしようもない私を、少しだけまともな人間にしてくれたグレイズを、私は心の底から愛しております。それにエディソン様に対しても、もう好意を抱いておりません。どうか私の事は、諦めて下さい。お願いします」
グレイズの隣で、私も頭を下げた。
「アンリ…ごめんね、僕がちょっと冷たくしすぎたせいで、君の心が病んでしまっていたのだね。病んでいた時、優しくされたら嬉しいし、そっちになびくのもわかるよ。でも、僕は諦めるつもりはないよ。大丈夫、君が嫁いで来たら、僕がたっぷり甘やかしてあげるから安心して欲しい。もう二度と、寂しい思いはさせないからね」
そう言ってほほ笑んでいるエディソン様。その微笑を見た瞬間、背筋が凍り付くような感覚に襲われる。怖い…この人、何を言っているの?
「エディソン、今日のところはもう帰ろう。アンリ嬢、君にはエディソンが酷い事をしてしまって申し訳なかった。でもエディソンは、君をあしらい続けた事を、とても後悔していてね。どうかやり直すチャンスを与えてやって欲しいと、私は考えているのだよ。まあ、親バカと言われたらそれまでなのだが。それからグレイズ殿、近いうちにお宅にも伺うつもりだから、ご両親によろしく伝えてくれ。それでは失礼する」
「アンリ、必ず君を迎えに来るからね。グレイズ、君たちの婚約は白紙に戻る予定なんだ。アンリにこれ以上触れないでくれよ。それじゃあ、アンリ。出来るだけ早く迎えに来るから、いい子で待っていてね」
スッと私の顔に触れると、そのまま侯爵様と一緒に、エディソン様も部屋から出ていく。お父様とお母様も、慌てて後を追って部屋から出て行った。きっと2人の見送りに行ったのだろう。
本来なら私も行くべきなのだろうが、その場から動けない。
「アンリ、大丈夫か?顔色が悪いぞ」
グレイズが心配そうに、私の顔を覗き込んできた。そして、さっきエディソン様が触れた顔に、そっと手を当てる。グレイズの温かい手、さっきとは打って変わって、安心する。
「グレイズ、私、この後どうなるのかしら?このままエディソン様と結婚させられるのかしら?あんなにも私の事を無下にしていたのに…それも私の悲しむ顔を見て楽しんでいたなんて…そんな人の元に、嫁ぎたくはないわ…」
「大丈夫だ!俺たちは既に婚約しているし…きっと大丈夫だから、泣くなよ」
涙が次から次へと溢れ出る私を、グレイズが抱きしめてくれた。グレイズの腕の中は、やっぱり落ち着く。数時間前まで、確かに私は幸せの絶頂にいた。でも今は…
しばらくすると、お父様とお母様が、今度はグレイズの両親を連れて戻ってきた。グレイズの両親も、浮かない顔をしている。とりあえず、皆で席に着いた。
「…アンリ、グレイズ、悪いが2人の婚約は、解消しようと思っている…」
「お父様、何をおっしゃっているのですか?」
「どうだよ、おじさん、俺たちは正式に婚約を結んだんだぞ!第一、マッキーノ侯爵令息はずっとアンリに冷たかったじゃないか!それなのに、今更あんな事を言うなんて」
「2人の気持ちは十分わかる。でも…マッキーノ侯爵夫人は、現国王陛下の従兄妹だ。マッキーノ侯爵自体も、陛下と仲が良いし…侯爵家に歯向かう訳にはいかないんだ…」
辛そうに呟くお父様。
「そんな…イヤですわ。だってエディソン様は、ずっと私をあしらっていたではないですか!確かに私は1年半もの間、エディソン様に恋をしておりました。でも、その恋はもう諦め、今は前を向いて進んでいるのです。それなのに…」
「アンリ、大丈夫だ…おじさん、アンリはもう、マッキーノ侯爵令息を好きではない。それどころか、アンリが悲しむ姿を見たかったという不純な理由から、ずっとアンリをあしらっていたマッキーノ侯爵令息に、嫌悪感すら抱いているんだ。大体、あんな歪んだ感情の持ち主の元に嫁いだら、きっとアンリは苦労する。自分の娘が苦労してもいいのかよ!」
グレイズが必死にお父様に訴えてくれている。私もすがる様な気持ちで、お父様を見つめた。
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