16 / 27
第16話:グレイズの優しさが辛いです
しおりを挟む
「しかし…」
でもお父様は難色を示し、難しい顔をしている。どうしよう、このままでは本当にエディソン様の元に嫁がないといけなくなるわ。でも…もとはと言えばエディソン様の上辺だけの優しさと美しいお顔にノックアウトされたのは、私自身だ。だから…自業自得なのかもしれない。
「アンリ、大丈夫だ。きっと何か方法があるはずだ。悪いが俺たちは一旦失礼する。アンリの顔色があまり良くないから」
そう言うと、グレイズが私を抱きかかえて部屋から出ていく。
「グレイズ、待ちなさい」
後ろからグレイズのお父様が叫んでいるが、無視して私の部屋へと向かった。部屋に着くと、私をソファに座らせる。
「アンリ、ごめんな。家に力がないばかりに…」
そう言って私に頭を下げるグレイズ。
「どうしてあなたが謝るの?もとはと言えば、私が悪いのよ。エディソン様の美しさに惹かれ、中身を全く見ていなかった愚かな私が。1年半もの間、自分の思う様に行動して、やりたい放題だったから、きっと罰が当たったんだわ…もっと私が、冷静に行動出来ていれば…私がエディソン様を追い回さなければ、こんな事にはならなかったのよ…全部私のせいだわ」
「それは違うだろう?そもそも、マッキーノ侯爵令息は、お前が領地に行く前から恋に落ちていたんだ。もしお前が1年半もの間、マッキーノ侯爵令息を追い回さなければ、もっと早い段階でマッキーノ侯爵家から婚約の話が来ていただろう?俺はこれでよかったと思っている。結果的に、アンリと心が通じ合えたのだから。大丈夫だ、俺が必ず何とかするから」
「何とかって?」
私たちはまだ学生だ。それも、親に養ってもらいながら生活している身。そんな私達には、どうする事も出来ないはずだ。
「アンリ、もしも時は、2人で国を出よう。2人で暮らせるくらいの金なら持っているし」
「何を言っているの?あなたはダニルーディン伯爵家の嫡男なのよ。あなたが家を出たら、伯爵家はどうするつもりなの?それに、私たちが国を出たと知ったら、貴族中の噂になるわ。私は今まで散々エディソン様の事で、家族に迷惑を掛けてきたの。これ以上、迷惑はかけられないわ」
私がエディソン様を追いかけまわしていたせいで、散々私の家族は、エディソン様の家族や他の貴族から嫌味を言われ、肩身の狭い思いをして来たのだ。これ以上、家族に迷惑を掛けたくない。
「アンリ…お前の口から、俺の家や家族に迷惑を掛けたくないと言う言葉が聞けるとは思わなかったよ…」
なぜかグレイズが苦笑いしている。
「失礼ね、私だって、いつも自分の事だけ考えてくる訳ではないのよ。時には家族の為に、自分を犠牲にだって…」
…それはしたくないわ。
エディソン様の冷たい一面を知ってしまった私は、やっぱり彼の元に嫁ぎたくない。それにエディソン様のお母様、いつも私を見るたびに、嫌味を言って来たのよね…きっとエディソン様に嫁いだら、あのお母様に虐められて、泣いて暮らすのだろう…
「何だかんだ言って、アンリはマッキーノ侯爵令息に嫁ぎたくないのだろう?それなら、やはり2人で国を出るしかない。大丈夫だ、家は俺がいなくなったらきっと、従兄弟でも養子に向かえるだろうし。ただ問題は、俺たちが2人で国を出たという事で、貴族たちから俺たち家族が好奇な目に晒される事だな…その点に関しては、対策を考えるよ。とにかくお前は、何も心配する必要は無いから。大丈夫だ、俺たちはどんなことがあっても、ずっと一緒だから」
グレイズがそう言って抱きしめてくれる。グレイズはいつも私の事を考えてくれる。昔からそうだ。今回だって、自分の身分を捨ててまで、私を守ろうとしてくれている。それが嬉しくてたまらない。でも、その優しさが、今の私には辛い…
グレイズは伯爵家を継ぐため、今まで必死に勉強をして来たことも知っている。それなのに、私のせいでグレイズから次期伯爵という地位を取り上げてしまっていのだろうか…
それにグレイズのご両親だって、自分の息子に爵位を継がせたいに決まっている。もし私のせいで、グレイズが国を出たら、ご両親はきっと悲しむだろう…おじ様もおば様も、本当に優しくて素敵な人たちなのだ。そんな人たちを悲しませて、本当にいいのだろうか…
また私の我が儘のせいで、沢山の人を不幸にするの?
それでいいの?
こんなにも素敵な人たちを、悲しませていいの?
グレイズが私の為に動いてくれようとすればするほど、胸がチクリと痛む。
「アンリ、どうしたんだよ。そんな浮かない顔をして。大丈夫だ、他国に行ってもある程度暮らせるくらいの貯えはあるから。それに、俺も働くつもりだし。ただ…今までみたいな生活は出来ないから、着替えや湯あみくらいは出来る様にしておいて欲しい」
「ありがとう…グレイズ…ごめんね、私のせいで…」
「だからビービー泣くなって。大丈夫だ、お前は何も心配するな」
グレイズが私涙をぬぐって、ほほ笑んでいる。その笑顔がどこか寂し気で、さらに胸に突き刺さった。
その後グレイズは私の涙が落ち着くまで、ずっと抱きしめ続けてくれたのだった。
でもお父様は難色を示し、難しい顔をしている。どうしよう、このままでは本当にエディソン様の元に嫁がないといけなくなるわ。でも…もとはと言えばエディソン様の上辺だけの優しさと美しいお顔にノックアウトされたのは、私自身だ。だから…自業自得なのかもしれない。
「アンリ、大丈夫だ。きっと何か方法があるはずだ。悪いが俺たちは一旦失礼する。アンリの顔色があまり良くないから」
そう言うと、グレイズが私を抱きかかえて部屋から出ていく。
「グレイズ、待ちなさい」
後ろからグレイズのお父様が叫んでいるが、無視して私の部屋へと向かった。部屋に着くと、私をソファに座らせる。
「アンリ、ごめんな。家に力がないばかりに…」
そう言って私に頭を下げるグレイズ。
「どうしてあなたが謝るの?もとはと言えば、私が悪いのよ。エディソン様の美しさに惹かれ、中身を全く見ていなかった愚かな私が。1年半もの間、自分の思う様に行動して、やりたい放題だったから、きっと罰が当たったんだわ…もっと私が、冷静に行動出来ていれば…私がエディソン様を追い回さなければ、こんな事にはならなかったのよ…全部私のせいだわ」
「それは違うだろう?そもそも、マッキーノ侯爵令息は、お前が領地に行く前から恋に落ちていたんだ。もしお前が1年半もの間、マッキーノ侯爵令息を追い回さなければ、もっと早い段階でマッキーノ侯爵家から婚約の話が来ていただろう?俺はこれでよかったと思っている。結果的に、アンリと心が通じ合えたのだから。大丈夫だ、俺が必ず何とかするから」
「何とかって?」
私たちはまだ学生だ。それも、親に養ってもらいながら生活している身。そんな私達には、どうする事も出来ないはずだ。
「アンリ、もしも時は、2人で国を出よう。2人で暮らせるくらいの金なら持っているし」
「何を言っているの?あなたはダニルーディン伯爵家の嫡男なのよ。あなたが家を出たら、伯爵家はどうするつもりなの?それに、私たちが国を出たと知ったら、貴族中の噂になるわ。私は今まで散々エディソン様の事で、家族に迷惑を掛けてきたの。これ以上、迷惑はかけられないわ」
私がエディソン様を追いかけまわしていたせいで、散々私の家族は、エディソン様の家族や他の貴族から嫌味を言われ、肩身の狭い思いをして来たのだ。これ以上、家族に迷惑を掛けたくない。
「アンリ…お前の口から、俺の家や家族に迷惑を掛けたくないと言う言葉が聞けるとは思わなかったよ…」
なぜかグレイズが苦笑いしている。
「失礼ね、私だって、いつも自分の事だけ考えてくる訳ではないのよ。時には家族の為に、自分を犠牲にだって…」
…それはしたくないわ。
エディソン様の冷たい一面を知ってしまった私は、やっぱり彼の元に嫁ぎたくない。それにエディソン様のお母様、いつも私を見るたびに、嫌味を言って来たのよね…きっとエディソン様に嫁いだら、あのお母様に虐められて、泣いて暮らすのだろう…
「何だかんだ言って、アンリはマッキーノ侯爵令息に嫁ぎたくないのだろう?それなら、やはり2人で国を出るしかない。大丈夫だ、家は俺がいなくなったらきっと、従兄弟でも養子に向かえるだろうし。ただ問題は、俺たちが2人で国を出たという事で、貴族たちから俺たち家族が好奇な目に晒される事だな…その点に関しては、対策を考えるよ。とにかくお前は、何も心配する必要は無いから。大丈夫だ、俺たちはどんなことがあっても、ずっと一緒だから」
グレイズがそう言って抱きしめてくれる。グレイズはいつも私の事を考えてくれる。昔からそうだ。今回だって、自分の身分を捨ててまで、私を守ろうとしてくれている。それが嬉しくてたまらない。でも、その優しさが、今の私には辛い…
グレイズは伯爵家を継ぐため、今まで必死に勉強をして来たことも知っている。それなのに、私のせいでグレイズから次期伯爵という地位を取り上げてしまっていのだろうか…
それにグレイズのご両親だって、自分の息子に爵位を継がせたいに決まっている。もし私のせいで、グレイズが国を出たら、ご両親はきっと悲しむだろう…おじ様もおば様も、本当に優しくて素敵な人たちなのだ。そんな人たちを悲しませて、本当にいいのだろうか…
また私の我が儘のせいで、沢山の人を不幸にするの?
それでいいの?
こんなにも素敵な人たちを、悲しませていいの?
グレイズが私の為に動いてくれようとすればするほど、胸がチクリと痛む。
「アンリ、どうしたんだよ。そんな浮かない顔をして。大丈夫だ、他国に行ってもある程度暮らせるくらいの貯えはあるから。それに、俺も働くつもりだし。ただ…今までみたいな生活は出来ないから、着替えや湯あみくらいは出来る様にしておいて欲しい」
「ありがとう…グレイズ…ごめんね、私のせいで…」
「だからビービー泣くなって。大丈夫だ、お前は何も心配するな」
グレイズが私涙をぬぐって、ほほ笑んでいる。その笑顔がどこか寂し気で、さらに胸に突き刺さった。
その後グレイズは私の涙が落ち着くまで、ずっと抱きしめ続けてくれたのだった。
792
あなたにおすすめの小説
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
【書籍化決定】憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新
7月31日完結予定
【本編完結】笑顔で離縁してください 〜貴方に恋をしてました〜
桜夜
恋愛
「旦那様、私と離縁してください!」
私は今までに見せたことがないような笑顔で旦那様に離縁を申し出た……。
私はアルメニア王国の第三王女でした。私には二人のお姉様がいます。一番目のエリーお姉様は頭脳明晰でお優しく、何をするにも完璧なお姉様でした。二番目のウルルお姉様はとても美しく皆の憧れの的で、ご結婚をされた今では社交界の女性達をまとめております。では三番目の私は……。
王族では国が豊かになると噂される瞳の色を持った平凡な女でした…
そんな私の旦那様は騎士団長をしており女性からも人気のある公爵家の三男の方でした……。
平凡な私が彼の方の隣にいてもいいのでしょうか?
なので離縁させていただけませんか?
旦那様も離縁した方が嬉しいですよね?だって……。
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる