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第10話:友達が出来ました
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「ちょっと、馴れ馴れしく私に触れるのは止めて頂戴」
途中で手をふりはらわれてしまったのだ。いけない、私ったらつい嬉しくて…
「申し訳ございません。嬉しくてつい…」
「ちょっと、そんな悲しそうな顔をしないでよ。ただ少し、驚いただけよ。テラスで食事だったわね。さあ、行くわよ」
ミリアム殿下が、スタスタと歩き出したのだ。よくわからないが、食事は一緒にしてくれる様だ。彼女の後を付いていく。テラスに着くと、既に席がほとんど埋まっていた。さて、どうしよう。
あっ、あそこ、空いているわ。
「ミリアム殿下、ここ空いていますよ。ここで食事にしましょう」
急いで席に座り、殿下に手を振った。
「そんなに騒がなくても、席は逃げないわよ」
そう言いつつも、急ぎ足でミリアム殿下も来てくれた。早速2人でお弁当を広げていただく。料理長ったら、私の好物をたくさん入れてくれたのね。どれも美味しいわ。つい美味しくて、頬が緩む。ふとミリアム殿下のお弁当に目をやると、見た事のないお料理が入っていた。
「その黄色いものはなんですか?見た事のないお料理ですが」
「これはお魚のフライよ。お魚を油で揚げてあるの」
「フライですか?初めて見ましたわ」
「アラステ王国は、揚げ物がないと聞いたことがあるわ。そんなに欲しいなら、差し上げてもよろしくてよ」
「まあ、本当ですか?これが噂に聞く、お弁当交換ですね。それでは私は、このお肉と野菜のムニエルを差し上げますわ。アラステ王国で人気のお料理ですの。まさか初日から、こんな素敵なお友達が出来たうえ、お弁当交換が出来るだなんて、思いませんでしたわ。それにこのフライ、とても美味しいですし」
サクサクしていて、このソースとよく合っていて美味しいわ。
「ちょっと、誰があなたと友達になるだなんて言ったの?」
「でも、一緒にお弁当を食べて下さったら、私と友達になって下さったのかと…」
もしかして、1人でいた私を気の毒に思って、一緒に食事をして下さったのかしら。よく考えてみたら、王女様でもあるミリアム殿下が、1人でいる訳ないものね…それなのに私ったら…
「だから、そんな悲しそうな顔をしないでよ。あなたがどうしても私と友達になりたいというのなら…その…お友達になってあげてもよろしくてよ」
「まあ、本当ですか?ありがとうございます。では、今日からミリアム殿下と私は、お友達です。そうですわ、お友達になったのですから、私の事はキャリーヌと呼んでください。私も、ミリアム様とお呼びしてもいいですか?殿下呼びだと、なんだか距離がある様で…」
「べ…別に構わないわ。あなた、そんなに私とお友達になりたいの?」
「はい、私は自国ではお友達を作る機会がありませんでした。それに私を送り出してくれた大切な家族や、この国で支えてくれるお姉様家族の為にも、私はこの地でお友達をたくさん作って、皆を安心させたいのです。私は今、幸せですので、心配しないで下さいと…」
私のせいで今、アラステ王国の家族たちが大変な目にあっているかもしれない。私が母国を旅立つとき、悲しそうな両親や兄夫婦の目が、今でも忘れられないのだ。それに他国に嫁いでいるお姉様にまで迷惑をかけて…
思い出しただけで、涙が溢れそうになる。
「ちょっと、泣かないでよ。ほら、このフライ、気に入ったのでしょう。たくさん食べていいから」
ミリアム様がアタフタしている。この人、少し変わった人だけれど、きっと根はお優しい方なのだろう。私が令嬢たちから避けられていた時も、心配そうにこちらを見ていて下さっていたし。
「ありがとうございます。私のお弁当も食べて下さい。はい、どうぞ」
「ちょっとあなた、勝手に…いいえ、何でもないわ。その…ありがとう…」
「どういたしまして、そうですわ。放課後、一緒にお茶をしませんか?私、お友達とお茶をするのが夢だったのです」
「そうなの?キャリーヌがそこまで言うのなら、お茶をしてあげてもよくってよ」
「嬉しいですわ。ありがとうございます。ミリアム様が同じクラスで、本当によかったですわ」
「私が同じクラスでよかったか…」
何やらポツリと呟いたミリアム様。そのお顔は、心なしか嬉しそうだ。
「ミリアム様?」
「べ…別に何でもないわ。さあ、早く食べてしまいましょう。万が一午後の授業に遅刻しては大変ですわ」
「そうですわね。急いで食べましょう」
なぜか顔が赤いミリアム様と一緒に、急いでお弁当を食べた。なぜだろう、お友達と一緒だと、食事もいつもの何倍、いいえ、何十倍も美味しく感じる。私、貴族学院に来て本当によかったわ。
貴族学院を勧めてくれたお義兄様に、感謝しないと。
食事を終えた私とミリアム様は、2人仲良く手を繋いで教室に戻った。行きとは違い、私が手を繋いでも文句を言われることはなかったのだ。きっと私を受け入れてくれたのだろう。それが嬉しくてたまらない。
きっとミリアム様とは、素敵な友人関係を築いていける。なんだかそんな気がしたのだった。
途中で手をふりはらわれてしまったのだ。いけない、私ったらつい嬉しくて…
「申し訳ございません。嬉しくてつい…」
「ちょっと、そんな悲しそうな顔をしないでよ。ただ少し、驚いただけよ。テラスで食事だったわね。さあ、行くわよ」
ミリアム殿下が、スタスタと歩き出したのだ。よくわからないが、食事は一緒にしてくれる様だ。彼女の後を付いていく。テラスに着くと、既に席がほとんど埋まっていた。さて、どうしよう。
あっ、あそこ、空いているわ。
「ミリアム殿下、ここ空いていますよ。ここで食事にしましょう」
急いで席に座り、殿下に手を振った。
「そんなに騒がなくても、席は逃げないわよ」
そう言いつつも、急ぎ足でミリアム殿下も来てくれた。早速2人でお弁当を広げていただく。料理長ったら、私の好物をたくさん入れてくれたのね。どれも美味しいわ。つい美味しくて、頬が緩む。ふとミリアム殿下のお弁当に目をやると、見た事のないお料理が入っていた。
「その黄色いものはなんですか?見た事のないお料理ですが」
「これはお魚のフライよ。お魚を油で揚げてあるの」
「フライですか?初めて見ましたわ」
「アラステ王国は、揚げ物がないと聞いたことがあるわ。そんなに欲しいなら、差し上げてもよろしくてよ」
「まあ、本当ですか?これが噂に聞く、お弁当交換ですね。それでは私は、このお肉と野菜のムニエルを差し上げますわ。アラステ王国で人気のお料理ですの。まさか初日から、こんな素敵なお友達が出来たうえ、お弁当交換が出来るだなんて、思いませんでしたわ。それにこのフライ、とても美味しいですし」
サクサクしていて、このソースとよく合っていて美味しいわ。
「ちょっと、誰があなたと友達になるだなんて言ったの?」
「でも、一緒にお弁当を食べて下さったら、私と友達になって下さったのかと…」
もしかして、1人でいた私を気の毒に思って、一緒に食事をして下さったのかしら。よく考えてみたら、王女様でもあるミリアム殿下が、1人でいる訳ないものね…それなのに私ったら…
「だから、そんな悲しそうな顔をしないでよ。あなたがどうしても私と友達になりたいというのなら…その…お友達になってあげてもよろしくてよ」
「まあ、本当ですか?ありがとうございます。では、今日からミリアム殿下と私は、お友達です。そうですわ、お友達になったのですから、私の事はキャリーヌと呼んでください。私も、ミリアム様とお呼びしてもいいですか?殿下呼びだと、なんだか距離がある様で…」
「べ…別に構わないわ。あなた、そんなに私とお友達になりたいの?」
「はい、私は自国ではお友達を作る機会がありませんでした。それに私を送り出してくれた大切な家族や、この国で支えてくれるお姉様家族の為にも、私はこの地でお友達をたくさん作って、皆を安心させたいのです。私は今、幸せですので、心配しないで下さいと…」
私のせいで今、アラステ王国の家族たちが大変な目にあっているかもしれない。私が母国を旅立つとき、悲しそうな両親や兄夫婦の目が、今でも忘れられないのだ。それに他国に嫁いでいるお姉様にまで迷惑をかけて…
思い出しただけで、涙が溢れそうになる。
「ちょっと、泣かないでよ。ほら、このフライ、気に入ったのでしょう。たくさん食べていいから」
ミリアム様がアタフタしている。この人、少し変わった人だけれど、きっと根はお優しい方なのだろう。私が令嬢たちから避けられていた時も、心配そうにこちらを見ていて下さっていたし。
「ありがとうございます。私のお弁当も食べて下さい。はい、どうぞ」
「ちょっとあなた、勝手に…いいえ、何でもないわ。その…ありがとう…」
「どういたしまして、そうですわ。放課後、一緒にお茶をしませんか?私、お友達とお茶をするのが夢だったのです」
「そうなの?キャリーヌがそこまで言うのなら、お茶をしてあげてもよくってよ」
「嬉しいですわ。ありがとうございます。ミリアム様が同じクラスで、本当によかったですわ」
「私が同じクラスでよかったか…」
何やらポツリと呟いたミリアム様。そのお顔は、心なしか嬉しそうだ。
「ミリアム様?」
「べ…別に何でもないわ。さあ、早く食べてしまいましょう。万が一午後の授業に遅刻しては大変ですわ」
「そうですわね。急いで食べましょう」
なぜか顔が赤いミリアム様と一緒に、急いでお弁当を食べた。なぜだろう、お友達と一緒だと、食事もいつもの何倍、いいえ、何十倍も美味しく感じる。私、貴族学院に来て本当によかったわ。
貴族学院を勧めてくれたお義兄様に、感謝しないと。
食事を終えた私とミリアム様は、2人仲良く手を繋いで教室に戻った。行きとは違い、私が手を繋いでも文句を言われることはなかったのだ。きっと私を受け入れてくれたのだろう。それが嬉しくてたまらない。
きっとミリアム様とは、素敵な友人関係を築いていける。なんだかそんな気がしたのだった。
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