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第23話:やるしかありません~ミリアム視点~
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馬車が王宮の門の前で停まった。私達の為に、お兄様とお義姉様が待っていてくれている。早く降りないと。でも、本当に私がお義姉様を説得できるの?
急に不安が押し寄せて来て、馬車から降りる事が出来ない。どうしよう…
「ミリアム、大丈夫だよ。私も傍にいるし、今のミリアムならきっと、女王陛下も理解してくださるはずだ。自分の気持ちを、女王陛下に伝えたらいいんだ」
「でも…私に出来るかしら?もし女王陛下に無礼を働いたら…」
私はつい思ってもない事を言ってしまう癖が、まだ抜けていない。もし女王陛下に無礼を働いたら、お兄様にも迷惑が掛かってしまう。王宮まで来て、往生際が悪いのは分かっている。それでもなんだか怖くてたまらなくなってきたのだ。
「それじゃあ、挨拶だけしてこのまま帰ろう。私はキャリーヌ嬢よりも、ミリアムの方が大切だからね。君に負担を強いてまで、女王陛下に助けを求める必要はないよ」
このまま帰る?
その瞬間、寂し気に笑うキャリーヌの姿が脳裏に浮かんだ。
私、何をやっているのかしら?キャリーヌに少しでも恩返しがしたくて、我が儘を言ってここまで来たのに。それに、カイロ様まで巻き込んだのに…
よし!
「カイロ様、私は大丈夫ですわ。さあ、参りましょう」
ゆっくりと立ち上がり、馬車を降りた。
すると
「ミリアム、カイロ殿もよく来てくれたね。2人で我が国に尋ねてきてくれるだなんて、嬉しいよ」
お兄様が嬉しそうに私の元に駆け寄って来たのだ。後ろには無表情のお義姉様もいらっしゃる。真っすぐ私を見つめるその瞳。正直私は、彼女が苦手だ。
お兄様たちの結婚が決まり、何度か我が国に足を運んでくださった彼女だが、いつも私を無表情で見つめてくるのだ。
両親やお兄様夫婦には笑顔で話をしていたのだが、なぜか私にはにこりともしない。
“キャリーヌ嬢、あなたは王女としてふさわしくないわ。もっと周りを見られる様になりなさい”
お兄様とお義姉様が国を出るとき、お義姉様からかけられた言葉だ。その言葉を言われたとき、苦しくて辛くてどうしようもなかった。でも…
お義姉様の言う事は間違っていない。
本来王女とは、弱い人に寄り添い、誰からも好かれる人物でなければいけない。でも私は…
口下手で思った事と違う言葉を発してしまう。その結果、相手を傷つけてしまう事もある。友人は愚か、婚約者でもあるカイロ様との関係もうまく取り繕えない程なのだ。
きっと私なんかよりも、キャリーヌの方がずっと王女に向いているだろう。キャリーヌは本当に優しくて、こんな私ですら、彼女は受け入れてくれたのだ。キャリーヌのお陰で、私は変わる事が出来たのだ。
そうよ、私がお義姉様に嫌われているとか、今はどうでもいい。キャリーヌの友人として、今この場に立っているのだから。
ゆっくり深呼吸をする。そして
「お義姉様、お兄様、お久しぶりでございます。今回急に訪ねてくることになり、申し訳ございませんでした」
まずは2人に挨拶をする。私の挨拶を聞いて、なぜか目を丸くしているのは、お義姉様だ。何か変だったかしら?もしかして、女王陛下と呼ばなかった事が気に入らなかったのかしら?
「長旅で疲れただろう。とにかく王宮の中に入って、ゆっくり話をしよう」
お兄様に促されて、客間へと案内された。部屋に向かう間も、ずっと私の手を握ってくれているのは、カイロ様だ。彼の存在が、これほどまで心強いだなんて。
部屋につくと、それぞれ向かい合わせに座った。
相変わらず無表情のお義姉様。そんな彼女を見ていると、増々不安が襲う。
「カイロ殿とミリアムは、とても仲睦まじいのだね。母上の話だと、あまり仲が良くないと聞いていたので…すまない、母上の情報は、本当に当てにならないな」
あまり仲が良くなかったか…
「お兄様、その話は本当ですわ。つい最近まで、私とカイロ様の仲は、お世辞にも良いものとは言えませんでした。私の意地っ張りで素直ではない性格のせいで、私たちは長年すれ違っていたのです。でも、そんな私たちの仲を取り持ってくれたのが、キャリーヌなのです」
「キャリーヌ嬢?どこかで聞いたことがある様な…」
「キャリーヌはアラステ王国の公爵令嬢で、王太子殿下の元婚約者ですわ。お義姉様、どうかキャリーヌをお助け下さい。お願いします」
お義姉様の元に駆け寄り、必死に頭を下げた。
「キャリーヌ嬢を助けて欲しいとは、一体どういうことですか?私に分かる様に説明してください」
ゆっくり頭を上げると、相変わらず無表情で私を見つめるお義姉様と目が合った。
私はキャリーヌの置かれている状況を、必死に説明した。キャリーヌは自国の愚かな王太子とラミア王女のせいで、何の罪もないのに我がカリアン王国に避難している事。
今キャリーヌの国は、大混乱を起こしている事。それもこれも、ラミア王女がアラステ王国に留まり、愚かな王太子のバックについているためだという事。
キャリーヌは自国で酷い扱いを受け、傷ついているにも関わらず、今我が国で必死に生きている事。そんなキャリーヌによって、私がどれほど救われたか…
そして
「キャリーヌは私の人生を180度変えてくれた、かけがえのない大切な友人です。いいえ、友人だなんて軽い言葉で表せられない程、私にとって大切な存在なのです。私が今、真っ暗で孤独な世界から抜け出し、色鮮やかで温もり溢れる世界で生きられているのは、キャリーヌのお陰。だからこそ、今度は私がキャリーヌを助けたいのです。どうかお義姉様、力を貸してください。お願いします」
急に不安が押し寄せて来て、馬車から降りる事が出来ない。どうしよう…
「ミリアム、大丈夫だよ。私も傍にいるし、今のミリアムならきっと、女王陛下も理解してくださるはずだ。自分の気持ちを、女王陛下に伝えたらいいんだ」
「でも…私に出来るかしら?もし女王陛下に無礼を働いたら…」
私はつい思ってもない事を言ってしまう癖が、まだ抜けていない。もし女王陛下に無礼を働いたら、お兄様にも迷惑が掛かってしまう。王宮まで来て、往生際が悪いのは分かっている。それでもなんだか怖くてたまらなくなってきたのだ。
「それじゃあ、挨拶だけしてこのまま帰ろう。私はキャリーヌ嬢よりも、ミリアムの方が大切だからね。君に負担を強いてまで、女王陛下に助けを求める必要はないよ」
このまま帰る?
その瞬間、寂し気に笑うキャリーヌの姿が脳裏に浮かんだ。
私、何をやっているのかしら?キャリーヌに少しでも恩返しがしたくて、我が儘を言ってここまで来たのに。それに、カイロ様まで巻き込んだのに…
よし!
「カイロ様、私は大丈夫ですわ。さあ、参りましょう」
ゆっくりと立ち上がり、馬車を降りた。
すると
「ミリアム、カイロ殿もよく来てくれたね。2人で我が国に尋ねてきてくれるだなんて、嬉しいよ」
お兄様が嬉しそうに私の元に駆け寄って来たのだ。後ろには無表情のお義姉様もいらっしゃる。真っすぐ私を見つめるその瞳。正直私は、彼女が苦手だ。
お兄様たちの結婚が決まり、何度か我が国に足を運んでくださった彼女だが、いつも私を無表情で見つめてくるのだ。
両親やお兄様夫婦には笑顔で話をしていたのだが、なぜか私にはにこりともしない。
“キャリーヌ嬢、あなたは王女としてふさわしくないわ。もっと周りを見られる様になりなさい”
お兄様とお義姉様が国を出るとき、お義姉様からかけられた言葉だ。その言葉を言われたとき、苦しくて辛くてどうしようもなかった。でも…
お義姉様の言う事は間違っていない。
本来王女とは、弱い人に寄り添い、誰からも好かれる人物でなければいけない。でも私は…
口下手で思った事と違う言葉を発してしまう。その結果、相手を傷つけてしまう事もある。友人は愚か、婚約者でもあるカイロ様との関係もうまく取り繕えない程なのだ。
きっと私なんかよりも、キャリーヌの方がずっと王女に向いているだろう。キャリーヌは本当に優しくて、こんな私ですら、彼女は受け入れてくれたのだ。キャリーヌのお陰で、私は変わる事が出来たのだ。
そうよ、私がお義姉様に嫌われているとか、今はどうでもいい。キャリーヌの友人として、今この場に立っているのだから。
ゆっくり深呼吸をする。そして
「お義姉様、お兄様、お久しぶりでございます。今回急に訪ねてくることになり、申し訳ございませんでした」
まずは2人に挨拶をする。私の挨拶を聞いて、なぜか目を丸くしているのは、お義姉様だ。何か変だったかしら?もしかして、女王陛下と呼ばなかった事が気に入らなかったのかしら?
「長旅で疲れただろう。とにかく王宮の中に入って、ゆっくり話をしよう」
お兄様に促されて、客間へと案内された。部屋に向かう間も、ずっと私の手を握ってくれているのは、カイロ様だ。彼の存在が、これほどまで心強いだなんて。
部屋につくと、それぞれ向かい合わせに座った。
相変わらず無表情のお義姉様。そんな彼女を見ていると、増々不安が襲う。
「カイロ殿とミリアムは、とても仲睦まじいのだね。母上の話だと、あまり仲が良くないと聞いていたので…すまない、母上の情報は、本当に当てにならないな」
あまり仲が良くなかったか…
「お兄様、その話は本当ですわ。つい最近まで、私とカイロ様の仲は、お世辞にも良いものとは言えませんでした。私の意地っ張りで素直ではない性格のせいで、私たちは長年すれ違っていたのです。でも、そんな私たちの仲を取り持ってくれたのが、キャリーヌなのです」
「キャリーヌ嬢?どこかで聞いたことがある様な…」
「キャリーヌはアラステ王国の公爵令嬢で、王太子殿下の元婚約者ですわ。お義姉様、どうかキャリーヌをお助け下さい。お願いします」
お義姉様の元に駆け寄り、必死に頭を下げた。
「キャリーヌ嬢を助けて欲しいとは、一体どういうことですか?私に分かる様に説明してください」
ゆっくり頭を上げると、相変わらず無表情で私を見つめるお義姉様と目が合った。
私はキャリーヌの置かれている状況を、必死に説明した。キャリーヌは自国の愚かな王太子とラミア王女のせいで、何の罪もないのに我がカリアン王国に避難している事。
今キャリーヌの国は、大混乱を起こしている事。それもこれも、ラミア王女がアラステ王国に留まり、愚かな王太子のバックについているためだという事。
キャリーヌは自国で酷い扱いを受け、傷ついているにも関わらず、今我が国で必死に生きている事。そんなキャリーヌによって、私がどれほど救われたか…
そして
「キャリーヌは私の人生を180度変えてくれた、かけがえのない大切な友人です。いいえ、友人だなんて軽い言葉で表せられない程、私にとって大切な存在なのです。私が今、真っ暗で孤独な世界から抜け出し、色鮮やかで温もり溢れる世界で生きられているのは、キャリーヌのお陰。だからこそ、今度は私がキャリーヌを助けたいのです。どうかお義姉様、力を貸してください。お願いします」
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