私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

文字の大きさ
38 / 73

第38話:ミリアム殿下と話をしました~サミュエル視点~

しおりを挟む
「実はキャリーヌには、まだ話をしていないのです。キャリーヌには、その…」

 夫人がちらりと目線を送った先に目をやると、金色の髪をした少女が立っていた。その隣には、彼女に寄り添うように金髪の男性が立っている。きっと彼女の恋人なのだろう。男性が少女の手を強く握っているのが見て取れる。

 少女は僕やキャリーヌと同じ歳くらい。そうか、この子がミリアム殿下だな!

「あなた様が、ミリアム殿下ですね。お初に目にかかります、アラステ王国の第二王子、サミュエル・グロッサム・アラステと申します。この度は殿下のお陰で、国は落ち着き、そしてこうやってキャリーヌを迎えに来ることが出来ました。本当にありがとうございました」

 笑顔で彼女に話しかけた。ただ、なぜか固まったまま動かない。

「あの…私は…」

 何かを言いかけたかと思うと、隣にいる男性の方を向いたのだ。そんな王女を見つめ、頷く男性。この2人、きっと強い絆で結ばれているのだろう。僕とキャリーヌも、2人の様になれたら…

 仲睦まじい2人を見ていると、ついそんな事を考えてしまう。

「サミュエル殿下、この後お話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ええ、構いませんよ、あなた様には本当に感謝しておりますし」

 僕の返答を聞き、ホッとした顔のミリアム殿下。この人、人と話をするのが苦手なのだろうか?僕と話をするときも、かなり緊張している様だし。

 その後僕が使わせてもらう部屋に案内してもらい、一息ついた後、ミリアム殿下が待つ部屋へとやって来た。彼女の隣には、やはり恋人と思われる男性の姿が。

「お待たせして申し訳ございません。ミリアム殿下、改めてお礼を言わせてください。今回の件、本当にありがとうございました。あなた様のお陰で、我が国は救われました。あなた様のお陰で、キャリーヌも楽しく過ごしていると聞いております。本当に、なんとお礼を言っていいか…」

 彼女のお陰で、全てが上手くいった。今回の留学の件も、ミリアム殿下のお陰でスムーズに話しが進んだのだ。

「お礼を言うのは私の方ですわ。キャリーヌのお陰で、私の人生は180度変わったのです。私はなんと申しますか…人に気持ちを伝えるのが苦手で…そのせいで友人もおらず。その上家族は忙しく、ずっと孤独だったのです。そんな中、キャリーヌが現れて。キャリーヌは不器用で人の気持ちを逆なでしてしまう私を受け入れてくれたのです。彼女のお陰で、今の幸せがあるのです。全てキャリーヌのお陰なのです」

 俯き加減で言葉を選ぶ様に呟くミリアム殿下。確かに彼女は、人と話すのが苦手な様に見受けられるが…

「サミュエル殿下、ご挨拶が遅くなり、申し訳ございません。ミリアムの婚約者の、カイロ・ファスレンと申します。今回、ミリアムと一緒に同席させていただきますことを、どうかご理解ください」

 ミリアム殿下の隣に座っていた男性が、自己紹介をしてくれた。やはりミリアム殿下の婚約者だったのだな。

「カイロ殿とおっしゃられるのですね。サミュエルです、どうかよろしくお願いいたします。それにしてもお2人は、本当に仲睦まじいのですね」

 きっとミリアム殿下が心配で、彼も同席したのだろう。さっきからずっと、ミリアム殿下の手を握っているし…もしかして、僕を警戒しているのかな?なんだかそんな気がするのは、気のせいだろうか…

「実は私たちは、つい3ヶ月ほど前までは、一緒に過ごすことはおろか、話しすらろくにしたことがなかったのです。私もミリアムも、お互い嫌われていると勘違いしていて…そんな私たちの誤解を解き、お互いの気持ちを伝えあえるきっかけを作ってくれたのが、キャリーヌ嬢なのです。彼女のお陰で、今の私たちがあるのです。本当にキャリーヌ嬢には、何とお礼を言っていいか…」

「カイロ様もおっしゃった通り、キャリーヌには、返しても返しきれない程の恩があるのです。私にとってキャリーヌはかけがえのない親友であり、女神様の様な存在。私がキャリーヌにしたことなど、大したことはありませんわ。ですから、どうかお礼は言わないで下さい。キャリーヌが私の幸せを願い動いてくれたように、私もキャリーヌには誰よりも幸せになって欲しいのです。その為に、あなた様の留学を手助けいたしました。ただ、キャリーヌは、あなた様に罪悪感を抱いている様で…」

 言いにくそうに、ミリアム殿下が呟いたのだ。まさかキャリーヌは、7年半前のあの件を気にしているのだろうか?

「ミリアム殿下、もしかしてキャリーヌは、僕ではなく兄上を選んだことを、未だに気にしているのですか?あれは仕方がなかった事なのです」

 僕はあの日起きた事を、ミリアム殿下に話した。キャリーヌがどんな思いで、兄上を選んだのか。あの後、キャリーヌは泣きながら謝罪していたことを。

「8歳の少女にそんな酷い事を!みんな勝手ですわ!でも、一番勝手なのは、第一王子ですわ!キャリーヌを何だと思っているのかしら?第一王子も、貴族たちも皆許せないわ!」

 一気に怒りをあらわにしたミリアム殿下、この人、こんなに感情をむき出しにする人だったのだな…

「ミリアム殿下、落ち着いて下さい。ですので、キャリーヌが罪悪感を抱く事はないのです。それから僕は、今でもキャリーヌを愛しています。今度こそ、僕の手でキャリーヌを幸せにしたいと考えております。もちろん、キャリーヌの気持ちが最優先ですが」

 真っすぐミリアム殿下を見つめ、そう告げた。その為に僕は、この地にやって来たのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

ワガママを繰り返してきた次女は

柚木ゆず
恋愛
 姉のヌイグルミの方が可愛いから欲しい、姉の誕生日プレゼントの方がいいから交換して、姉の婚約者を好きになったから代わりに婚約させて欲しい。ロートスアール子爵家の次女アネッサは、幼い頃からワガママを口にしてきました。  そんなアネッサを両親は毎回注意してきましたが聞く耳を持つことはなく、ついにアネッサは自分勝手に我慢の限界を迎えてしまいます。 『わたくしは酷く傷つきました! しばらく何もしたくないから療養をさせてもらいますわ! 認められないならこのお屋敷を出ていきますわよ!!』  その結果そんなことを言い出してしまい、この発言によってアネッサの日常は大きく変化してゆくこととなるのでした。 ※現在体調不良による影響で(すべてにしっかりとお返事をさせていただく余裕がないため)、最新のお話以外の感想欄を閉じさせていただいております。 ※11月23日、本編完結。後日、本編では描き切れなかったエピソードを番外編として投稿させていただく予定でございます。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?

柚木ゆず
恋愛
「アン! お前の礼儀がなっていないから夜会で恥をかいたじゃないか! そんな女となんて一緒に居られない! この婚約は破棄する!!」 「アン君、婚約の際にわが家が借りた金は全て返す。速やかにこの屋敷から出ていってくれ」  新興貴族である我がフェリルーザ男爵家は『地位』を求め、多額の借金を抱えるハーニエル伯爵家は『財』を目当てとして、各当主の命により長女であるわたしアンと嫡男であるイブライム様は婚約を交わす。そうしてわたしは両家当主の打算により、婚約後すぐハーニエル邸で暮らすようになりました。  わたしの待遇を良くしていれば、フェリルーザ家は喜んでより好条件で支援をしてくれるかもしれない。  こんな理由でわたしは手厚く迎えられましたが、そんな日常はハーニエル家が投資の成功により大金を手にしたことで一変してしまいます。  イブライム様は男爵令嬢如きと婚約したくはなく、当主様は格下貴族と深い関係を築きたくはなかった。それらの理由で様々な暴言や冷遇を受けることとなり、最終的には根も葉もない非を理由として婚約を破棄されることになってしまったのでした。  ですが――。  やがて不意に、とても不思議なことが起きるのでした。 「アンっ、今まで酷いことをしてごめんっ。心から反省しています! これからは仲良く一緒に暮らしていこうねっ!」  わたしをゴミのように扱っていたイブライム様が、涙ながらに謝罪をしてきたのです。  …………あのような真似を平然する人が、突然反省をするはずはありません。  なにか、裏がありますね。

お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?

柚木ゆず
恋愛
「すでに気付いているんですのよ。わたくしやお父様やお母様に隠れて、交際を行っていることに」 「ダーファルズ伯爵家のエドモン様は、雄々しく素敵な御方。お顔も財力も最上級な方で、興味を持ちましたの。好きに、なってしまいましたの」  私のものを何でも欲しがる、妹のニネット。今度は物ではなく人を欲しがり始め、エドモン様をもらうと言い出しました。  確かに私は、家族に隠れて交際を行っているのですが――。その方は、私にしつこく言い寄ってきていた人。恋人はエドモン様ではなく、エズラル侯爵家のフレデリク様なのです。  どうやらニネットは大きな勘違いをしているらしく、自身を溺愛するお父様とお母様の力を借りて、そんなエドモン様にアプローチをしてゆくみたいです。

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?

水空 葵
恋愛
 伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。  けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。  悪夢はそれで終わらなかった。  ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。  嵌められてしまった。  その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。  裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。 ※他サイト様でも公開中です。 2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。 本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

処理中です...