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第45話:ミリアム様の願い
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部屋から出ると、当てもなく走り続けた。次から次へと溢れる涙を止める事が出来ずに、ただただ泣きながら走る。
「待って!キャリーヌ」
私の腕を掴んだのは、ミリアム様だ。そのままミリアム様の自室へと連れて行かれた。泣きじゃくる私の背中を、ミリアム様が撫でてくれる。
「ミリアム様、もう大丈夫ですわ。ありがとうございます」
少し落ち着いたので、そのまま部屋から出ようとしたのだが…
「何が大丈夫なのよ!あんなに号泣するくらい、サミュエル殿下の事が好きなのでしょう?それならどうして、自分の気持ちを伝えないの?いつまで意地を張っているの?」
必死にミリアム様が訴えてくる。でも私は…
「何度も申し上げている通り、私にはサミュエル殿下と婚約する資格はないのです。私は昔、サミュエル殿下を…」
「その話は何度も聞いたわ!そもそもどうしてキャリーヌが、勝手に決めるのよ。裏切られたサミュエル殿下は、あのことは気にしていないと言っているのに、どうしてキャリーヌが、サミュエル殿下の気持ちを否定するのよ。おかしいじゃない!」
「サミュエル殿下は、お優しいからそう言っているだけですわ。きっとサミュエル殿下は、私がジェイデン殿下を選んだとき、凄く悲しんだと思うのです。彼を悲しませた私が、ジェイデン殿下に裏切られたからといって、どうしてサミュエル殿下と婚約できるというのですか?私にはそんな図々し事は出来ません!」
サミュエル殿下を裏切って悲しませた私が、一体どの面下げてサミュエル殿下と婚約できるというのよ!
「キャリーヌは過去にこだわりすぎて、今を見れていないのよ!サミュエル殿下の顔、見た?とても悲しそうな顔をしていたわ。キャリーヌが過去にとらわれすぎているせいで、まさに今、サミュエル殿下を傷つけ苦しめている事に気が付かないの?いい加減に目を覚ましてよ、キャリーヌ!!」
「そんな事は分かっています。でも、今辛くても、きっと未来では私なんかよりもずっと、素敵な令嬢と結婚できますわ!」
「どうしてキャリーヌに、そんな事が分かるの?未来なんて誰にも分らないじゃない!サミュエル殿下がどんな思いでカリアン王国に留学してきたと思っているの?今度こそ、キャリーヌを自分の手で幸せにしたいという思いから来たのよ!そんなサミュエル殿下を拒むことが、どれほど残酷か!本当にサミュエル殿下に罪悪感を持っているなら、どうして自分の手で幸せにようとしないの?おかしいわ」
サミュエル殿下を拒むことが、残酷ですって…確かに私は、罪悪感からサミュエル殿下を拒んできた。でもそれは、サミュエル殿下の為を思って…
「サミュエル殿下は国に帰ったら、そのまま王太子になるそうだけれど、結婚はしないで養子を迎えるそうよ。“僕が愛しているのはキャリーヌだけだから、キャリーヌと結婚できないなら、養子をとる事にするよ。生涯誰とも結婚する気はない”そう言っていたわ。結局サミュエル殿下は、幸せにはなれない!それがキャリーヌの望んでいる未来なの?」
どういうことなの?サミュエル殿下は、私以外とは結婚しない?ずっと独身を貫くですって?そんな…それじゃあ、サミュエル殿下は…
「でも…私は…」
「キャリーヌが傷つけているのは、サミュエル殿下だけではないわ!私だって…私だって悲しくてたまらない!誰よりも大切なキャリーヌが、自ら幸せを逃そうとしているのですもの。私はキャリーヌに、幸せになってもらいたい!そんな私の思いも、キャリーヌは踏みにじっているのよ!」
私がミリアム様の思いも、踏みにじっているですって…
驚いてミリアム様の方を見ると、瞳からポロポロと涙を流していたのだ。ミリアム様が、泣いている…私のせいで?
「お願いよ、キャリーヌ。あなたには幸せになる権利があるの。その権利を、どうか自らの手で逃さないで…あなたには誰よりも幸せになって欲しいの。そうじゃないと、私だって幸せになんてなれないわ…」
ポロポロと涙を流し、ミリアム様が座り込んでしまったのだ。こんなミリアム様、初めて見た。
私はいつの間にか、親友までも苦しめていただなんて…
その上、サミュエル殿下は、国に戻っても誰とも結婚する気がないだなんて…
“キャリーヌ、大好きだよ。ずっと一緒だ”
幸せそうな顔で呟くサミュエル殿下の言葉が、脳裏に浮かんだ。私、またサミュエル殿下を傷つけてしまったの?その上、大切なミリアム様まで…
「ごめんなさい…私、大切な人たちを傷つけ苦しめていたのですね。私が間違っていた様ですわ。でも…今更どの面下げて、サミュエル殿下に会えばいいのでしょうか?」
散々サミュエル殿下を避け続けて、国に帰るとまで言わせた私が、今更どうしろというのだろう。
「キャリーヌ、間違いは誰にでもあるわ。間違った時は、しっかり謝ればいいのよ。少なくとも私は、キャリーヌが自分の間違いに気が付いてくれたことが嬉しいわ。きっとサミュエル殿下も、許してくれると思う。だからお願い、一度きちんとサミュエル殿下と話し合ってみて」
ミリアム様が、ギュッと抱きしめてくれた。温かくて柔らかい…この国で…いいえ、初めて出来た私の親友、ミリアム様。
「ありがとうございます。私、サミュエル殿下ときちんと話をしてみますわ。それから…私の間違いを指摘してくださり、ありがとうございました。あなたは最高の親友ですわ」
「な…何を言っているのよ!当たり前でしょう。もう、キャリーヌったら」
さっきまで泣いていたミリアム様が、急にプイっとあちらの方を向いたのだ。きっと照れているのだろう。感情を出すのが苦手なミリアム様が、私の為にあんなに感情をぶつけてくれるだなんて…
それが嬉しくてたまらない。彼女の気持ちに応えるためにも、サミュエル殿下ときちんと話をしないと。
「待って!キャリーヌ」
私の腕を掴んだのは、ミリアム様だ。そのままミリアム様の自室へと連れて行かれた。泣きじゃくる私の背中を、ミリアム様が撫でてくれる。
「ミリアム様、もう大丈夫ですわ。ありがとうございます」
少し落ち着いたので、そのまま部屋から出ようとしたのだが…
「何が大丈夫なのよ!あんなに号泣するくらい、サミュエル殿下の事が好きなのでしょう?それならどうして、自分の気持ちを伝えないの?いつまで意地を張っているの?」
必死にミリアム様が訴えてくる。でも私は…
「何度も申し上げている通り、私にはサミュエル殿下と婚約する資格はないのです。私は昔、サミュエル殿下を…」
「その話は何度も聞いたわ!そもそもどうしてキャリーヌが、勝手に決めるのよ。裏切られたサミュエル殿下は、あのことは気にしていないと言っているのに、どうしてキャリーヌが、サミュエル殿下の気持ちを否定するのよ。おかしいじゃない!」
「サミュエル殿下は、お優しいからそう言っているだけですわ。きっとサミュエル殿下は、私がジェイデン殿下を選んだとき、凄く悲しんだと思うのです。彼を悲しませた私が、ジェイデン殿下に裏切られたからといって、どうしてサミュエル殿下と婚約できるというのですか?私にはそんな図々し事は出来ません!」
サミュエル殿下を裏切って悲しませた私が、一体どの面下げてサミュエル殿下と婚約できるというのよ!
「キャリーヌは過去にこだわりすぎて、今を見れていないのよ!サミュエル殿下の顔、見た?とても悲しそうな顔をしていたわ。キャリーヌが過去にとらわれすぎているせいで、まさに今、サミュエル殿下を傷つけ苦しめている事に気が付かないの?いい加減に目を覚ましてよ、キャリーヌ!!」
「そんな事は分かっています。でも、今辛くても、きっと未来では私なんかよりもずっと、素敵な令嬢と結婚できますわ!」
「どうしてキャリーヌに、そんな事が分かるの?未来なんて誰にも分らないじゃない!サミュエル殿下がどんな思いでカリアン王国に留学してきたと思っているの?今度こそ、キャリーヌを自分の手で幸せにしたいという思いから来たのよ!そんなサミュエル殿下を拒むことが、どれほど残酷か!本当にサミュエル殿下に罪悪感を持っているなら、どうして自分の手で幸せにようとしないの?おかしいわ」
サミュエル殿下を拒むことが、残酷ですって…確かに私は、罪悪感からサミュエル殿下を拒んできた。でもそれは、サミュエル殿下の為を思って…
「サミュエル殿下は国に帰ったら、そのまま王太子になるそうだけれど、結婚はしないで養子を迎えるそうよ。“僕が愛しているのはキャリーヌだけだから、キャリーヌと結婚できないなら、養子をとる事にするよ。生涯誰とも結婚する気はない”そう言っていたわ。結局サミュエル殿下は、幸せにはなれない!それがキャリーヌの望んでいる未来なの?」
どういうことなの?サミュエル殿下は、私以外とは結婚しない?ずっと独身を貫くですって?そんな…それじゃあ、サミュエル殿下は…
「でも…私は…」
「キャリーヌが傷つけているのは、サミュエル殿下だけではないわ!私だって…私だって悲しくてたまらない!誰よりも大切なキャリーヌが、自ら幸せを逃そうとしているのですもの。私はキャリーヌに、幸せになってもらいたい!そんな私の思いも、キャリーヌは踏みにじっているのよ!」
私がミリアム様の思いも、踏みにじっているですって…
驚いてミリアム様の方を見ると、瞳からポロポロと涙を流していたのだ。ミリアム様が、泣いている…私のせいで?
「お願いよ、キャリーヌ。あなたには幸せになる権利があるの。その権利を、どうか自らの手で逃さないで…あなたには誰よりも幸せになって欲しいの。そうじゃないと、私だって幸せになんてなれないわ…」
ポロポロと涙を流し、ミリアム様が座り込んでしまったのだ。こんなミリアム様、初めて見た。
私はいつの間にか、親友までも苦しめていただなんて…
その上、サミュエル殿下は、国に戻っても誰とも結婚する気がないだなんて…
“キャリーヌ、大好きだよ。ずっと一緒だ”
幸せそうな顔で呟くサミュエル殿下の言葉が、脳裏に浮かんだ。私、またサミュエル殿下を傷つけてしまったの?その上、大切なミリアム様まで…
「ごめんなさい…私、大切な人たちを傷つけ苦しめていたのですね。私が間違っていた様ですわ。でも…今更どの面下げて、サミュエル殿下に会えばいいのでしょうか?」
散々サミュエル殿下を避け続けて、国に帰るとまで言わせた私が、今更どうしろというのだろう。
「キャリーヌ、間違いは誰にでもあるわ。間違った時は、しっかり謝ればいいのよ。少なくとも私は、キャリーヌが自分の間違いに気が付いてくれたことが嬉しいわ。きっとサミュエル殿下も、許してくれると思う。だからお願い、一度きちんとサミュエル殿下と話し合ってみて」
ミリアム様が、ギュッと抱きしめてくれた。温かくて柔らかい…この国で…いいえ、初めて出来た私の親友、ミリアム様。
「ありがとうございます。私、サミュエル殿下ときちんと話をしてみますわ。それから…私の間違いを指摘してくださり、ありがとうございました。あなたは最高の親友ですわ」
「な…何を言っているのよ!当たり前でしょう。もう、キャリーヌったら」
さっきまで泣いていたミリアム様が、急にプイっとあちらの方を向いたのだ。きっと照れているのだろう。感情を出すのが苦手なミリアム様が、私の為にあんなに感情をぶつけてくれるだなんて…
それが嬉しくてたまらない。彼女の気持ちに応えるためにも、サミュエル殿下ときちんと話をしないと。
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