私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

文字の大きさ
71 / 73

第71話:そんな…~ジェイデン視点~

しおりを挟む
 ゆっくりキャリーヌの元に近づこうとした時だった。サミュエルがキャリーヌを庇う様に、立ちはだかったのだ。そして僕の事をギロリと睨んだ。

「何がそれほどキャリーヌを愛しているだ!兄上はキャリーヌを、大切にしていないじゃないか。現に僕が死んだあと、ティーヌン侯爵家の令嬢を正室に、キャリーヌを側妃に向かえるつもりだったのだろう?兄上はいつも、キャリーヌの気持ちなんてこれっぽっちも考えていないじゃないか!そんなの、本当にキャリーヌを愛していると言えるのかい?」

「うるさい!僕から全てを奪ったサミュエルに、何が分かるんだ!サミュエルさえいなければ…」

 そうだ、サミュエルさえいなければ、キャリーヌは今頃僕のものだったのだ。それなのに!

「たとえサミュエル様がいらっしゃらなくても、私はジェイデン殿下と婚約する事はありませんわ。ジェイデン殿下、あなた様が私に婚約解消を申し出たあの日に、私の愛情は綺麗さっぱり無くなりました。たとえこの命を奪われようと、私があなた様を再び愛し結婚する事はありません!私は、ジェイデン殿下を愛していません!いい加減現実を見て下さい」

 キャリーヌが真っすぐ僕を見つめている。その瞳からは、明らかに怒りを感じる。どうしてだい?どうしてそんな目で僕を見るのだい?僕たちは愛し合っていたはずなのに…

 “ジェイデン殿下、キャリーヌはもう、あなた様の事は好きではないのです。キャリーヌは今、サミュエル殿下と未来に向かって進もうとしているのです。キャリーヌにとって、ジェイデン殿下はもう、過去の人物なのですよ。過去の人物がどうあがこうが、ともに未来に進むことは出来ないのです。いい加減、お気づきになってはいかがですか?”

 モニター越しにため息をつきながら、訳の分からない事を言っている王女。

「僕は…」

「いい加減にしなさい。ジェイデンがティーヌン侯爵と共謀し、サミュエルに毒を飲ませ、亡き者にしようとした証拠は既にそろっているのだ。今すぐジェイデンとティーヌン侯爵を、地下牢へ。さらにジェイデンに協力した医師と使用人たちも、地下牢に連れて行け!」

「父上、待って下さい。地下牢だなんて僕は…」

 必死に父上に訴えるが、僕の方すら向いてくれない。

「母上…」

「ジェイデン、私はあなたの育て方を間違えた様です。王族として、しっかり罪を償いなさい」

 目に涙を浮かべた母上がそう叫ぶと、クルリと反対側を向いてしまったのだ。嫌だ、僕は悪くない。

「キャリーヌ、助けて…」

「ジェイデン殿下、どうかご自分の罪と、しっかり向き合ってください。あなた様は実の弟を亡き者にしようとしたのです。決して許される事ではありません。もちろん、私も許すつもりはありませんから」

「そんな…」

 どうしてみんな、僕にそんな酷い言葉を投げかけるのだい?どうしてみんな、僕の気持ちを分かってくれないのだい?僕はただ、キャリーヌを愛していただけなのに…

 それなのに、どうして…

 気が付くと両脇を抱えた騎士たちに、あっと言う間に部屋から連れ出されると、そのまま薄暗い地下牢へと入れられた。

「おい、僕は王族だぞ。こんな薄暗い地下牢から早く出せ」

 必死に訴える。すると、1人の使用人がクルリとこちらを向いた。あの使用人は、確かキャリーヌの専属メイドだ。どうしてあの女が、ここにいるのだ?

「ジェイデン殿下、お嬢様は何の罪もないのに、あなた様にこの地下牢に入れられたのです。薄暗くて気持ち悪いでしょう?あなた様もこの地下牢で、お嬢様がどんな思いで過ごされたのか、少しは考えてみてください!それでは、失礼いたします」

「メイドの分際で、僕に意見するとはどういう了見だ。ふざけるな!」

 クルリと反対方向を向いたメイドが、そのまま去っていく。あのメイド、絶対に許さない。

 何が“お嬢様がどんな思いで過ごされたか、考えてみてください!”だ。キャリーヌが僕の側妃になると言ったら、すぐに出してあげるつもりだったんだ。それを拒んだのは、キャリーヌ自身。

 ただ…

 ここは本当に薄暗くて気味が悪い。キャリーヌは暗いところが苦手だったな…きっと怖い思いをしていたのだろう。

 キャリーヌ…

 僕は一体、どこで何を間違えたのだろう。つい1年前は、間違いなく幸せだったのに…いつの間にか王太子の座から引きずりおろされ、その上最愛の人、キャリーヌをも失ってしまった。

 僕がラミア王女なんかにうつつを抜かさなければ、こんな事にはならなかったのかな…

 薄暗い地下牢にいると、ついそんな事を考えてしまう。

 僕はただ、キャリーヌさえいてくれたら幸せだったはずなのに…

 愛するキャリーヌを失い、こんな地下牢に入れられるだなんて…

 悲しくて辛くて、どうしてこんな事になってしまったのかわらなくて、ただただ僕は、絶望の涙を流し続けたのだった。



 ※次回、キャリーヌ視点に戻ります。
 よろしくお願いしますm(__)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

ワガママを繰り返してきた次女は

柚木ゆず
恋愛
 姉のヌイグルミの方が可愛いから欲しい、姉の誕生日プレゼントの方がいいから交換して、姉の婚約者を好きになったから代わりに婚約させて欲しい。ロートスアール子爵家の次女アネッサは、幼い頃からワガママを口にしてきました。  そんなアネッサを両親は毎回注意してきましたが聞く耳を持つことはなく、ついにアネッサは自分勝手に我慢の限界を迎えてしまいます。 『わたくしは酷く傷つきました! しばらく何もしたくないから療養をさせてもらいますわ! 認められないならこのお屋敷を出ていきますわよ!!』  その結果そんなことを言い出してしまい、この発言によってアネッサの日常は大きく変化してゆくこととなるのでした。 ※現在体調不良による影響で(すべてにしっかりとお返事をさせていただく余裕がないため)、最新のお話以外の感想欄を閉じさせていただいております。 ※11月23日、本編完結。後日、本編では描き切れなかったエピソードを番外編として投稿させていただく予定でございます。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?

柚木ゆず
恋愛
「アン! お前の礼儀がなっていないから夜会で恥をかいたじゃないか! そんな女となんて一緒に居られない! この婚約は破棄する!!」 「アン君、婚約の際にわが家が借りた金は全て返す。速やかにこの屋敷から出ていってくれ」  新興貴族である我がフェリルーザ男爵家は『地位』を求め、多額の借金を抱えるハーニエル伯爵家は『財』を目当てとして、各当主の命により長女であるわたしアンと嫡男であるイブライム様は婚約を交わす。そうしてわたしは両家当主の打算により、婚約後すぐハーニエル邸で暮らすようになりました。  わたしの待遇を良くしていれば、フェリルーザ家は喜んでより好条件で支援をしてくれるかもしれない。  こんな理由でわたしは手厚く迎えられましたが、そんな日常はハーニエル家が投資の成功により大金を手にしたことで一変してしまいます。  イブライム様は男爵令嬢如きと婚約したくはなく、当主様は格下貴族と深い関係を築きたくはなかった。それらの理由で様々な暴言や冷遇を受けることとなり、最終的には根も葉もない非を理由として婚約を破棄されることになってしまったのでした。  ですが――。  やがて不意に、とても不思議なことが起きるのでした。 「アンっ、今まで酷いことをしてごめんっ。心から反省しています! これからは仲良く一緒に暮らしていこうねっ!」  わたしをゴミのように扱っていたイブライム様が、涙ながらに謝罪をしてきたのです。  …………あのような真似を平然する人が、突然反省をするはずはありません。  なにか、裏がありますね。

お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?

柚木ゆず
恋愛
「すでに気付いているんですのよ。わたくしやお父様やお母様に隠れて、交際を行っていることに」 「ダーファルズ伯爵家のエドモン様は、雄々しく素敵な御方。お顔も財力も最上級な方で、興味を持ちましたの。好きに、なってしまいましたの」  私のものを何でも欲しがる、妹のニネット。今度は物ではなく人を欲しがり始め、エドモン様をもらうと言い出しました。  確かに私は、家族に隠れて交際を行っているのですが――。その方は、私にしつこく言い寄ってきていた人。恋人はエドモン様ではなく、エズラル侯爵家のフレデリク様なのです。  どうやらニネットは大きな勘違いをしているらしく、自身を溺愛するお父様とお母様の力を借りて、そんなエドモン様にアプローチをしてゆくみたいです。

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?

水空 葵
恋愛
 伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。  けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。  悪夢はそれで終わらなかった。  ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。  嵌められてしまった。  その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。  裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。 ※他サイト様でも公開中です。 2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。 本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

処理中です...