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第31話:ユーリなら何をしても許してくれる~アレックス視点~
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貴族学院に入学してからも、相変わらず僕の傍に居続けるユーリ。既に2度の告白を断っているが、ユーリは特に気に留めている様子はない。
ただ僕は、貴族学院に入学してからさらに令嬢たちから言い寄られるようになった。毎日毎日、美しい令嬢たちが僕に話しかけてくるのだ。
そう、僕はかなり令嬢たちから人気が高いのだ。さらに令嬢たちも僕の気を少しでも引こうと、あの手この手を使ってくる。
中には他国から取り寄せた珍しい食べ物を贈ってくれる子もいた。いつの間にか僕は、彼女たちにチヤホヤされる事に、優越感を抱くようになったのだ。
そんな中、焦り出したのはユーリだ。このままでは、他の令嬢に僕を取られてしまうと思ったのだろう。ユーリも必死に僕の気を引こうとしている。
正直この頃には、もうあまりユーリに対して、興味がなくなりかけていた。それでも半期休みに領地にさそうと、嬉しそうに付いて来たユーリ。本当にユーリは、分かりやすい性格をしているな。
その後もユーリは、僕の事が大好きだという気持ちを、前面に表していた。そんなユーリの事は可愛いとは思うが、どうしても婚約したいとは思えないのだ。
きっと僕にとってユーリは、家族の様な存在なのだろう。いわば妹の様なもの。だから僕が、ユーリを受け入れる事は出来ないのだ。
自分の気持ちに気が付いてからは、ユーリが告白してくるたびに
“ごめんね、僕はユーリの事を妹の様に思っているんだ。でも、大切な子には変わりはないから、これからも仲良くして欲しい”
そう伝える様にしている。それでもユーリは、僕から離れていく事はない。それどころか、僕が喜ぶことを何でもしようとしてくれている。
それがなんだか嬉しくて、つい僕は無理難題をユーリに押し付けてしまう。それでも嫌な顔一つせずに、僕の言う事を聞いてくれるユーリ。
それがなんだか嬉しい。
そんな日々を送っているうちに、僕たちは2年になった。2年になってからも、相変わらず僕は、令嬢たちから人気が高い。そんな時、伯爵令嬢のセレナ嬢と仲良くなった。
桃色のフワフワの髪をした彼女は、とても可愛らしい女性で、令息たちからも非常に人気が高い。見た目同様、とても穏やかな令嬢で、僕も彼女に少しずつ惹かれていった。
ただ当のセレナ嬢は
「アレックス様は、ユーリ様ととても仲がよろしいのですよね。いずれお2人は、ご婚約されるのですか?それでしたら、私とあまり関わらない方がよいと思いますが」
そう言われてしまったのだ。
「いいや、ユーリはただの幼馴染なだけだよ。ユーリは確かに僕に好意を抱いている様だけれど、僕はユーリの事をそんな風に見ていないよ」
「まあ、そうなのですね。分かりましたわ。ただ…大切な人って、失ってから気が付く事もあるのですよ。そうなってからでは遅いときもあります。どうかくれぐれも、後悔だけはしない様にしてくださいませ」
そう言うと、笑顔を向けてくれたセレナ嬢。美しい笑顔を見た瞬間、鼓動が早くなるのを感じた。なんて美しい女性なんだ。その上、僕の事を心配してくれるだなんて…セレナ嬢の様な令嬢と婚約出来たら…
この日から僕は、すっかりセレナ嬢に夢中になっていった。今思えば、セレナ嬢の言葉は明らかに僕への忠告だ。でも、彼女の言葉の意味すら理解できていない僕は、どんどんセレナ嬢にのめり込んでいく。
正直ユーリが鬱陶しく感じる様になっていったことから、わざとユーリが放課後僕たちの邪魔をしない様に、お使いを頼むようにした。
そうする事でユーリは、放課後急いで帰っていくので、セレナ嬢とゆっくりお茶を楽しむことが出来たのだ。さらにユーリが買ってきてくれたものを、セレナ嬢にプレゼントする。まさかユーリが買って来たものとは夢にも思っていないセレナ嬢は、とても喜んでくれるのだ。
ユーリには邪魔されず、セレナ嬢には喜んでもらえる、まさに一石二鳥。そう思っていたのだが
「アレックス、ユーリ嬢に対する扱い、酷くないかい?昨日家の執事がたまたまユーリ嬢を街で見かけたらしいが、使用人や平民に紛れて、自らお店に並んでいたらしいぞ。ユーリ嬢が必死に買って来たものを、セレナ嬢に横流ししているのだろう?もしセレナ嬢がその事を知ったら、間違いなく引かれるのではないのかい?」
そう友人に言われる事もあった。
「ユーリは僕の事が大好きだから、問題ないよ。それに僕はユーリに強要している訳ではないし。本人が好きでやっているのだから。セレナ嬢には、バレない様に上手くやるよ」
そう、ユーリは好きで僕に尽くしているのだ。外野にとやかく言われる筋合いはない。
今度は王都で人気のお菓子を買いに行ってもらおう。セレナ嬢が食べたがっていたものな。きっとセレナ嬢、喜ぶぞ。
そう思い、僕はいつも通り王都で有名なお菓子を買いに行くように、ユーリにお願いしたのだった。
翌日、嬉しそうにお菓子を買ってきてくれたユーリ。一緒に食べようという彼女に断りを入れ、セレナ嬢の元へと向かった。
嬉しそうにお菓子を頬張るセレナ嬢を見たら、僕も嬉しい気持ちになった。ただ…ユーリには可哀そうな事をしたな。もしかしたらユーリ、僕と一緒にお菓子を食べるのを、楽しみにしていたのかもしれない。
でも、まあいいか。ユーリは僕の事が大好きなのだから。
ただ僕は、貴族学院に入学してからさらに令嬢たちから言い寄られるようになった。毎日毎日、美しい令嬢たちが僕に話しかけてくるのだ。
そう、僕はかなり令嬢たちから人気が高いのだ。さらに令嬢たちも僕の気を少しでも引こうと、あの手この手を使ってくる。
中には他国から取り寄せた珍しい食べ物を贈ってくれる子もいた。いつの間にか僕は、彼女たちにチヤホヤされる事に、優越感を抱くようになったのだ。
そんな中、焦り出したのはユーリだ。このままでは、他の令嬢に僕を取られてしまうと思ったのだろう。ユーリも必死に僕の気を引こうとしている。
正直この頃には、もうあまりユーリに対して、興味がなくなりかけていた。それでも半期休みに領地にさそうと、嬉しそうに付いて来たユーリ。本当にユーリは、分かりやすい性格をしているな。
その後もユーリは、僕の事が大好きだという気持ちを、前面に表していた。そんなユーリの事は可愛いとは思うが、どうしても婚約したいとは思えないのだ。
きっと僕にとってユーリは、家族の様な存在なのだろう。いわば妹の様なもの。だから僕が、ユーリを受け入れる事は出来ないのだ。
自分の気持ちに気が付いてからは、ユーリが告白してくるたびに
“ごめんね、僕はユーリの事を妹の様に思っているんだ。でも、大切な子には変わりはないから、これからも仲良くして欲しい”
そう伝える様にしている。それでもユーリは、僕から離れていく事はない。それどころか、僕が喜ぶことを何でもしようとしてくれている。
それがなんだか嬉しくて、つい僕は無理難題をユーリに押し付けてしまう。それでも嫌な顔一つせずに、僕の言う事を聞いてくれるユーリ。
それがなんだか嬉しい。
そんな日々を送っているうちに、僕たちは2年になった。2年になってからも、相変わらず僕は、令嬢たちから人気が高い。そんな時、伯爵令嬢のセレナ嬢と仲良くなった。
桃色のフワフワの髪をした彼女は、とても可愛らしい女性で、令息たちからも非常に人気が高い。見た目同様、とても穏やかな令嬢で、僕も彼女に少しずつ惹かれていった。
ただ当のセレナ嬢は
「アレックス様は、ユーリ様ととても仲がよろしいのですよね。いずれお2人は、ご婚約されるのですか?それでしたら、私とあまり関わらない方がよいと思いますが」
そう言われてしまったのだ。
「いいや、ユーリはただの幼馴染なだけだよ。ユーリは確かに僕に好意を抱いている様だけれど、僕はユーリの事をそんな風に見ていないよ」
「まあ、そうなのですね。分かりましたわ。ただ…大切な人って、失ってから気が付く事もあるのですよ。そうなってからでは遅いときもあります。どうかくれぐれも、後悔だけはしない様にしてくださいませ」
そう言うと、笑顔を向けてくれたセレナ嬢。美しい笑顔を見た瞬間、鼓動が早くなるのを感じた。なんて美しい女性なんだ。その上、僕の事を心配してくれるだなんて…セレナ嬢の様な令嬢と婚約出来たら…
この日から僕は、すっかりセレナ嬢に夢中になっていった。今思えば、セレナ嬢の言葉は明らかに僕への忠告だ。でも、彼女の言葉の意味すら理解できていない僕は、どんどんセレナ嬢にのめり込んでいく。
正直ユーリが鬱陶しく感じる様になっていったことから、わざとユーリが放課後僕たちの邪魔をしない様に、お使いを頼むようにした。
そうする事でユーリは、放課後急いで帰っていくので、セレナ嬢とゆっくりお茶を楽しむことが出来たのだ。さらにユーリが買ってきてくれたものを、セレナ嬢にプレゼントする。まさかユーリが買って来たものとは夢にも思っていないセレナ嬢は、とても喜んでくれるのだ。
ユーリには邪魔されず、セレナ嬢には喜んでもらえる、まさに一石二鳥。そう思っていたのだが
「アレックス、ユーリ嬢に対する扱い、酷くないかい?昨日家の執事がたまたまユーリ嬢を街で見かけたらしいが、使用人や平民に紛れて、自らお店に並んでいたらしいぞ。ユーリ嬢が必死に買って来たものを、セレナ嬢に横流ししているのだろう?もしセレナ嬢がその事を知ったら、間違いなく引かれるのではないのかい?」
そう友人に言われる事もあった。
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そう、ユーリは好きで僕に尽くしているのだ。外野にとやかく言われる筋合いはない。
今度は王都で人気のお菓子を買いに行ってもらおう。セレナ嬢が食べたがっていたものな。きっとセレナ嬢、喜ぶぞ。
そう思い、僕はいつも通り王都で有名なお菓子を買いに行くように、ユーリにお願いしたのだった。
翌日、嬉しそうにお菓子を買ってきてくれたユーリ。一緒に食べようという彼女に断りを入れ、セレナ嬢の元へと向かった。
嬉しそうにお菓子を頬張るセレナ嬢を見たら、僕も嬉しい気持ちになった。ただ…ユーリには可哀そうな事をしたな。もしかしたらユーリ、僕と一緒にお菓子を食べるのを、楽しみにしていたのかもしれない。
でも、まあいいか。ユーリは僕の事が大好きなのだから。
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