婚約破棄を希望しておりますが、なぜかうまく行きません

Karamimi

文字の大きさ
28 / 51

第28話:いい加減諦めてくれ~ブライン視点~

しおりを挟む
「どうしてオニキスは、そこまでして僕と婚約破棄がしたいのだろう…僕はこんなにもオニキスを愛しているのに…」

モニターを見つめ、オニキスの枕カバーを抱きしめながら呟く。昨日は扇子であの女を叩く作戦が失敗に終わり、オニキスは落ち込んでいた。そして今日の放課後、あの女を呼び出して謝っているオニキス。

相変わらずあの女は、オニキスに酷い暴言を吐いている。それが腹ただしいのはもちろんだが、何よりもオニキスが、この期に及んでまだ僕との婚約破棄にこだっているという事だ。

僕は何度も、婚約破棄はしないと伝えているのに…
それに、オニキスを思って最高級のドレスや宝石だってプレゼントした。本来、男性が女性に自分の瞳や髪の色の物を贈るという事は、愛情表現の一つでもある。それなのに、全くその事に気が付いていないオニキス。

「殿下、またその様な物を抱きしめて…」

あきれ顔のヴァン、いい加減慣れて欲しいものだ。

「ヴァン、どうしてオニキスは僕の愛情表現に気が付かないのだろう。こんなにも愛しているのに…」

「殿下の愛情は非常に歪んでいるうえ、本人には全く伝わらない方法ですので…きっとオニキス様は、もっとわかりやすい愛情表現を求めていらっしゃるのでしょう。第一、目も合わさない、言葉もほとんどかわさない、触れもされないとなれば、自分が愛されていないと感じるのも無理はないです」

「僕だってモニター越しではなく、本物のオニキスの顔をもっと見たい!触れたいしもっと話をしたい。でも…それが出来ないから困っているんだ…どうしても僕は、オニキスの事を考えると鼻血が噴き出てしまうんだよ…」

自分でもわかっている。僕がオニキスに寂しい思いをさせている事を。

「オニキス様に触れられない、目も合わせられないでは、結婚後世継ぎを作る事は出来ません。そうなると、オニキス様以外の令嬢と結婚した方がよろしいのではありませんか?国王とは、自分の気持ちだけではどうしようもならない事があるのです。あなた様の体がオニキス様を拒むのでしたら、そうするほかありません。きっと陛下や王妃様も、口には出さないにしろ、そのお考えはあると思いますよ。あるいは側室についても、考えられているかもしれません」

「ヴァン、あまりふざけた事を言うと、ただじゃおかないぞ。誰がオニキス以外の女と結婚するものか!」

「とはいっても、あなた様は王太子殿下、次期国王になるお方なのですよ!いい加減自分の置かれている状況を、考えて下さい。いくら公務をそつなくこなしても、周囲の評判が良くても、結婚後何年も子が出来なければ、貴族の間でも側室の声が上がります。それにそうなれば、オニキス様をも傷つける事になるのです。それならいっその事、早めに婚約破棄なされた方が、オニキス様の為です!オニキス様はきっと、陰で気持ち悪く愛される事よりも、分かりやすく愛情表現をしてくれる殿方を求めていらっしゃるのです!要するに、殿下では役不足という事です!」

「ヴァン…お前、そんなはっきりと…」

「オニキス様を思うのでしたら、婚約破棄されてはいかがですが?それが嫌なら、鼻血を克服するしかないでしょう」

「僕だって鼻血を克服したい。でも、無理なんだ!オニキスの可愛らしい顔を見たり肌に触れると、興奮してしまって…あぁ、オニキスの手、柔らかかったな…」

「殿下、また鼻血が出ております。では婚約破棄の方向でよろしいですね」

「いい訳がないだろう!」

「それならオニキス様に正直に体質の事を話して、協力してもらってください!男として、こんな恥ずかしい姿を見せたくないと言うのはわかります。でも、あなた様は自力で克服できないなら、オニキス様に正直に話して協力してもらう以外ないのです。とにかく、今の危機的状況を理解してください。それでは私はこれで!」

そう言うと、ヴァンは部屋から出て行った。

あいつ、言いたい放題言って!僕だってこのままじゃいけない事なんてわかっている。オニキスに辛い思いをさせている事も。

でも、万が一僕の情けない姿を見たら、オニキスは僕を軽蔑し、離れていくかもしれない…そう思うと、どうしてもオニキスに自分の体質を話すことが出来ない。

ただ、さすがにこのままと言う訳にはいかない。確かにオニキスと結婚後、僕がオニキスに触れられないとなると、きっとオニキスは傷つくだろう。それに、オニキスも他の貴族からも責められるかもしれない。

可愛いオニキスが傷つき、僕と結婚したことを後悔したら…
そう考えただけで、胸が張り裂けそうになる。
結婚までもう時間がない。僕はどうすればいいのだろう…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら

柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。 「か・わ・い・い~っ!!」 これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。 出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。

【完結】どうやら時戻りをしました。

まるねこ
恋愛
ウルダード伯爵家は借金地獄に陥り、借金返済のため泣く泣く嫁いだ先は王家の闇を担う家。 辛い日々に耐えきれずモアは自らの命を断つ。 時戻りをした彼女は同じ轍を踏まないと心に誓う。 ※前半激重です。ご注意下さい Copyright©︎2023-まるねこ

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜

清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。 クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。 (過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…) そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。 移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。 また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。 「俺は君を愛する資格を得たい」 (皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?) これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。 私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。 彼の姉でなく、私の姉なのにだ。 両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。 そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。 寄り添うデイリ様とお姉様。 幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。 その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。 そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。 ※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。 ※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。 ※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

処理中です...