もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi

文字の大きさ
11 / 48

第11話:彼女は何も変わっていない~ブラック視点~

しおりを挟む
そんな中、俺は貴族学院に入学した。正直貴族学院なんかに興味はない。面倒な女どもに群がられる事が目に見えている。もちろん無視するつもりでいるが、煩わしい事この上ない。

ただ…

確かユリア嬢も俺と同じ歳だったな。もしかしたら学院には来ているかもしれない。貴族学院は基本的に義務だ。よほどのことがない限り、入学だけは行う。

そんな淡い期待を抱きつつ、学院へと向かった。ユリア嬢はこの国でも珍しい桃色の髪をしている。元伯爵夫人が、異国出身と聞いた。彼女は母親から桃色の髪を譲り受けたのだろう。

でも、桃色の髪の女性は見当たらない。

「ブラック様、こちらにいらしたのですね。おはようございます」

「おはようございます、ブラック様。今日から学院生活、目いっぱい楽しみましょうね」

俺が少し油断した隙に、令嬢たちに囲まれてしまったのだ。さっさと追い払ってホールに行こう。そう思っている時だった。

真っ白な髪に、真っ白な顔、目には青黒いクマが出来た老婆?の様な令嬢が俺に嬉しそうに話しかけてきたのだ。あまりにも衝撃的な姿に、正直彼女が何を言ったのか理解できなかった。ただ、俺にお礼を言っている事だけは理解できたのだ。

こんな令嬢、見た事もない。そう思い

「悪いが俺は、ばあさんみたいな令嬢と関わった記憶がないのだが…」

そう呟いた。しまった、ユリア嬢に会えない苛立ちと令嬢に囲まれた不快感で、失礼な事を言ってしまった。さすがに令嬢に“ばあさん”はマズイ。他の令嬢たちも、声を上げて笑っていた。

きっとこの令嬢は怒り狂うのだろう…そう思っていたのだが、彼女はコテンと首をかしげて考えたかと思ったら、一瞬悲しそうな顔をしたものの、すぐに笑顔に戻り

「皆様、驚かせてしまってごめんなさい。確かに私の髪、おばあ様みたいですわね」

そう呟くとにっこり笑ったのだ。

この顔は!

間違いない、この子はユリア嬢だ。そう言えばさっき、ユリア・パラスティと名乗っていたな。見た目はすっかり変わってしまったが、彼女の笑顔は全く変わっていない。それにしても、どうしてこんな姿に…病気とは聞いていたが、ここまで酷いだなんて…

俺が絶句している間に、令嬢たちはどこかに行ってしまった。そんなユリア嬢が、満面の笑みで俺と仲良くして欲しい、一緒にホールに行こうと誘ってくれたのだ。

彼女は何も変わっていない…やっぱり俺は、彼女の事が好きだ。そう思い、彼女の申し出を受けようとした時だった。

ユリア嬢の従姉妹でもある意地悪なあの女が、俺たちの前に現れ、彼女に酷い暴言を吐いていたのだ。この女、未だにユリア嬢を虐めているのか!悲しそうな顔のユリア嬢を見たら、怒りがこみ上げてきて、あの女を冷たくあしらった。

きっと家でもあの女に虐められているのだろう。なんて醜い女なんだ!病気の従姉妹にあんな酷い事を言うだなんて!

そそくさと逃げていくあの女を睨みつける。

しまった、怖い顔であの女を怒鳴りつけてしまった。ユリア嬢も俺の事を怖い男だと思っただろうか?そう思ったのだが、なぜかお礼を言われた。

ただ、自分は走る事が出来ないから、どうか先にホールに行って欲しいと伝えて来たのだ。今にも倒れそうな令嬢を残して俺だけホールになんて行けない。それに何よりも、やっと再開できたのだ。もっと彼女の傍にいたい。そんな思いから、彼女を抱き上げてホールへと向かう。

初めて令嬢を抱き上げたが、令嬢とはこんなに軽いものなのか?それに柔らかくて温かい…

このままずっと…て、俺は何を考えているのだ。ホールに着くと彼女を下ろし、急いでその場を後にする。ただ、心臓はバクバク言っているし、なんだか胸が苦しい。なんなんだ、この感情は…

入学式中も、彼女が気になって、つい彼女を見つめてしまう。クソ、どうしてこうも彼女が気になるんだ!正直新入生代表の挨拶も、自分が何を言ったのか覚えていない程、彼女の事で頭がいっぱいになった。

式後教室へと向かう。予想通りクラスは別だ。分かってはいたが、なんだかショックだ。それにしても、彼女は一体何の病気なのだろう。あんなに衰弱して。

それも相変わらず従姉妹から虐められている様だし…

ホームルームが終わると、急いで門へと向かった。もう一度彼女に会いたい、そう思ったのだ。しばらく待っていると、息を切らしながら一生懸命歩いているユリア嬢を見つけた。あの程度の運動で息が切れるのだな。何とか彼女を助けてあげたい。でも、俺に何が出来るんだ?

そう思い見つめていると、俺に気が付いたユリア嬢が、嬉しそうに近づいてきたのだ。そして可愛らしい笑顔で挨拶をすると、そのまま馬車に乗り込んでいった。そんな彼女の後姿を、ただ見つめる。

て、俺は何を見つめているのだ。急いで自分の馬車に乗り込んだ。ただ、彼女の弱り果てた姿が、頭から離れない。一体彼女は、何の病気なのだろう。

そもそも、治療は受けているのか?彼女の両親は既に他界している。あの意地悪な従姉妹の事を考えると、もしかしたらユリア嬢は、家で虐げられているのかも…

ついそんな事を考えてしまう。いいや、さすがにそんな事はないだろう。とにかくしばらくは、彼女の様子を見守ろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea
恋愛
──私は、何故か触れた人の心の声が聞こえる。 見た目だけは可愛い姉と比べられて来た伯爵家の次女、セシリナは、 幼い頃に自分が素手で触れた人の心の声が聞こえる事に気付く。 心の声を聞きたくなくて、常に手袋を装着し、最小限の人としか付き合ってこなかったセシリナは、 いつしか“薄気味悪い令嬢”と世間では呼ばれるようになっていた。 そんなある日、セシリナは渋々参加していたお茶会で、 この国の王子様……悪い噂が絶えない第二王子エリオスと偶然出会い、 つい彼の心の声を聞いてしまう。 偶然聞いてしまったエリオスの噂とは違う心の声に戸惑いつつも、 その場はどうにかやり過ごしたはずだったのに…… 「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」 なぜか後日、セシリナを訪ねて来たエリオスは、そんなとんでもないお願い事をして来た! 何やら色々と目的があるらしい王子様とそうして始まった仮の恋人関係だったけれど、 あれ? 何かがおかしい……

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?

ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。 イケメン達を翻弄するも無自覚。 ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。 そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ… 剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。 御脱字、申し訳ございません。 1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。 楽しんでいただけたら嬉しいです。 よろしくお願いいたします。

処理中です...