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第11話:彼女は何も変わっていない~ブラック視点~
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そんな中、俺は貴族学院に入学した。正直貴族学院なんかに興味はない。面倒な女どもに群がられる事が目に見えている。もちろん無視するつもりでいるが、煩わしい事この上ない。
ただ…
確かユリア嬢も俺と同じ歳だったな。もしかしたら学院には来ているかもしれない。貴族学院は基本的に義務だ。よほどのことがない限り、入学だけは行う。
そんな淡い期待を抱きつつ、学院へと向かった。ユリア嬢はこの国でも珍しい桃色の髪をしている。元伯爵夫人が、異国出身と聞いた。彼女は母親から桃色の髪を譲り受けたのだろう。
でも、桃色の髪の女性は見当たらない。
「ブラック様、こちらにいらしたのですね。おはようございます」
「おはようございます、ブラック様。今日から学院生活、目いっぱい楽しみましょうね」
俺が少し油断した隙に、令嬢たちに囲まれてしまったのだ。さっさと追い払ってホールに行こう。そう思っている時だった。
真っ白な髪に、真っ白な顔、目には青黒いクマが出来た老婆?の様な令嬢が俺に嬉しそうに話しかけてきたのだ。あまりにも衝撃的な姿に、正直彼女が何を言ったのか理解できなかった。ただ、俺にお礼を言っている事だけは理解できたのだ。
こんな令嬢、見た事もない。そう思い
「悪いが俺は、ばあさんみたいな令嬢と関わった記憶がないのだが…」
そう呟いた。しまった、ユリア嬢に会えない苛立ちと令嬢に囲まれた不快感で、失礼な事を言ってしまった。さすがに令嬢に“ばあさん”はマズイ。他の令嬢たちも、声を上げて笑っていた。
きっとこの令嬢は怒り狂うのだろう…そう思っていたのだが、彼女はコテンと首をかしげて考えたかと思ったら、一瞬悲しそうな顔をしたものの、すぐに笑顔に戻り
「皆様、驚かせてしまってごめんなさい。確かに私の髪、おばあ様みたいですわね」
そう呟くとにっこり笑ったのだ。
この顔は!
間違いない、この子はユリア嬢だ。そう言えばさっき、ユリア・パラスティと名乗っていたな。見た目はすっかり変わってしまったが、彼女の笑顔は全く変わっていない。それにしても、どうしてこんな姿に…病気とは聞いていたが、ここまで酷いだなんて…
俺が絶句している間に、令嬢たちはどこかに行ってしまった。そんなユリア嬢が、満面の笑みで俺と仲良くして欲しい、一緒にホールに行こうと誘ってくれたのだ。
彼女は何も変わっていない…やっぱり俺は、彼女の事が好きだ。そう思い、彼女の申し出を受けようとした時だった。
ユリア嬢の従姉妹でもある意地悪なあの女が、俺たちの前に現れ、彼女に酷い暴言を吐いていたのだ。この女、未だにユリア嬢を虐めているのか!悲しそうな顔のユリア嬢を見たら、怒りがこみ上げてきて、あの女を冷たくあしらった。
きっと家でもあの女に虐められているのだろう。なんて醜い女なんだ!病気の従姉妹にあんな酷い事を言うだなんて!
そそくさと逃げていくあの女を睨みつける。
しまった、怖い顔であの女を怒鳴りつけてしまった。ユリア嬢も俺の事を怖い男だと思っただろうか?そう思ったのだが、なぜかお礼を言われた。
ただ、自分は走る事が出来ないから、どうか先にホールに行って欲しいと伝えて来たのだ。今にも倒れそうな令嬢を残して俺だけホールになんて行けない。それに何よりも、やっと再開できたのだ。もっと彼女の傍にいたい。そんな思いから、彼女を抱き上げてホールへと向かう。
初めて令嬢を抱き上げたが、令嬢とはこんなに軽いものなのか?それに柔らかくて温かい…
このままずっと…て、俺は何を考えているのだ。ホールに着くと彼女を下ろし、急いでその場を後にする。ただ、心臓はバクバク言っているし、なんだか胸が苦しい。なんなんだ、この感情は…
入学式中も、彼女が気になって、つい彼女を見つめてしまう。クソ、どうしてこうも彼女が気になるんだ!正直新入生代表の挨拶も、自分が何を言ったのか覚えていない程、彼女の事で頭がいっぱいになった。
式後教室へと向かう。予想通りクラスは別だ。分かってはいたが、なんだかショックだ。それにしても、彼女は一体何の病気なのだろう。あんなに衰弱して。
それも相変わらず従姉妹から虐められている様だし…
ホームルームが終わると、急いで門へと向かった。もう一度彼女に会いたい、そう思ったのだ。しばらく待っていると、息を切らしながら一生懸命歩いているユリア嬢を見つけた。あの程度の運動で息が切れるのだな。何とか彼女を助けてあげたい。でも、俺に何が出来るんだ?
そう思い見つめていると、俺に気が付いたユリア嬢が、嬉しそうに近づいてきたのだ。そして可愛らしい笑顔で挨拶をすると、そのまま馬車に乗り込んでいった。そんな彼女の後姿を、ただ見つめる。
て、俺は何を見つめているのだ。急いで自分の馬車に乗り込んだ。ただ、彼女の弱り果てた姿が、頭から離れない。一体彼女は、何の病気なのだろう。
そもそも、治療は受けているのか?彼女の両親は既に他界している。あの意地悪な従姉妹の事を考えると、もしかしたらユリア嬢は、家で虐げられているのかも…
ついそんな事を考えてしまう。いいや、さすがにそんな事はないだろう。とにかくしばらくは、彼女の様子を見守ろう。
ただ…
確かユリア嬢も俺と同じ歳だったな。もしかしたら学院には来ているかもしれない。貴族学院は基本的に義務だ。よほどのことがない限り、入学だけは行う。
そんな淡い期待を抱きつつ、学院へと向かった。ユリア嬢はこの国でも珍しい桃色の髪をしている。元伯爵夫人が、異国出身と聞いた。彼女は母親から桃色の髪を譲り受けたのだろう。
でも、桃色の髪の女性は見当たらない。
「ブラック様、こちらにいらしたのですね。おはようございます」
「おはようございます、ブラック様。今日から学院生活、目いっぱい楽しみましょうね」
俺が少し油断した隙に、令嬢たちに囲まれてしまったのだ。さっさと追い払ってホールに行こう。そう思っている時だった。
真っ白な髪に、真っ白な顔、目には青黒いクマが出来た老婆?の様な令嬢が俺に嬉しそうに話しかけてきたのだ。あまりにも衝撃的な姿に、正直彼女が何を言ったのか理解できなかった。ただ、俺にお礼を言っている事だけは理解できたのだ。
こんな令嬢、見た事もない。そう思い
「悪いが俺は、ばあさんみたいな令嬢と関わった記憶がないのだが…」
そう呟いた。しまった、ユリア嬢に会えない苛立ちと令嬢に囲まれた不快感で、失礼な事を言ってしまった。さすがに令嬢に“ばあさん”はマズイ。他の令嬢たちも、声を上げて笑っていた。
きっとこの令嬢は怒り狂うのだろう…そう思っていたのだが、彼女はコテンと首をかしげて考えたかと思ったら、一瞬悲しそうな顔をしたものの、すぐに笑顔に戻り
「皆様、驚かせてしまってごめんなさい。確かに私の髪、おばあ様みたいですわね」
そう呟くとにっこり笑ったのだ。
この顔は!
間違いない、この子はユリア嬢だ。そう言えばさっき、ユリア・パラスティと名乗っていたな。見た目はすっかり変わってしまったが、彼女の笑顔は全く変わっていない。それにしても、どうしてこんな姿に…病気とは聞いていたが、ここまで酷いだなんて…
俺が絶句している間に、令嬢たちはどこかに行ってしまった。そんなユリア嬢が、満面の笑みで俺と仲良くして欲しい、一緒にホールに行こうと誘ってくれたのだ。
彼女は何も変わっていない…やっぱり俺は、彼女の事が好きだ。そう思い、彼女の申し出を受けようとした時だった。
ユリア嬢の従姉妹でもある意地悪なあの女が、俺たちの前に現れ、彼女に酷い暴言を吐いていたのだ。この女、未だにユリア嬢を虐めているのか!悲しそうな顔のユリア嬢を見たら、怒りがこみ上げてきて、あの女を冷たくあしらった。
きっと家でもあの女に虐められているのだろう。なんて醜い女なんだ!病気の従姉妹にあんな酷い事を言うだなんて!
そそくさと逃げていくあの女を睨みつける。
しまった、怖い顔であの女を怒鳴りつけてしまった。ユリア嬢も俺の事を怖い男だと思っただろうか?そう思ったのだが、なぜかお礼を言われた。
ただ、自分は走る事が出来ないから、どうか先にホールに行って欲しいと伝えて来たのだ。今にも倒れそうな令嬢を残して俺だけホールになんて行けない。それに何よりも、やっと再開できたのだ。もっと彼女の傍にいたい。そんな思いから、彼女を抱き上げてホールへと向かう。
初めて令嬢を抱き上げたが、令嬢とはこんなに軽いものなのか?それに柔らかくて温かい…
このままずっと…て、俺は何を考えているのだ。ホールに着くと彼女を下ろし、急いでその場を後にする。ただ、心臓はバクバク言っているし、なんだか胸が苦しい。なんなんだ、この感情は…
入学式中も、彼女が気になって、つい彼女を見つめてしまう。クソ、どうしてこうも彼女が気になるんだ!正直新入生代表の挨拶も、自分が何を言ったのか覚えていない程、彼女の事で頭がいっぱいになった。
式後教室へと向かう。予想通りクラスは別だ。分かってはいたが、なんだかショックだ。それにしても、彼女は一体何の病気なのだろう。あんなに衰弱して。
それも相変わらず従姉妹から虐められている様だし…
ホームルームが終わると、急いで門へと向かった。もう一度彼女に会いたい、そう思ったのだ。しばらく待っていると、息を切らしながら一生懸命歩いているユリア嬢を見つけた。あの程度の運動で息が切れるのだな。何とか彼女を助けてあげたい。でも、俺に何が出来るんだ?
そう思い見つめていると、俺に気が付いたユリア嬢が、嬉しそうに近づいてきたのだ。そして可愛らしい笑顔で挨拶をすると、そのまま馬車に乗り込んでいった。そんな彼女の後姿を、ただ見つめる。
て、俺は何を見つめているのだ。急いで自分の馬車に乗り込んだ。ただ、彼女の弱り果てた姿が、頭から離れない。一体彼女は、何の病気なのだろう。
そもそも、治療は受けているのか?彼女の両親は既に他界している。あの意地悪な従姉妹の事を考えると、もしかしたらユリア嬢は、家で虐げられているのかも…
ついそんな事を考えてしまう。いいや、さすがにそんな事はないだろう。とにかくしばらくは、彼女の様子を見守ろう。
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